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洋上風力、波力の可能性検討/海洋再生可能エネ研が初会合/地域振興など方向性の認識共有

2014/06/12 日刊建設タイムズ


 海洋再生可能エネルギーの可能性について検討する「海洋再生可能エネルギー導入可能性研究会」の初会合が10日、千葉市内の京葉銀行文化プラザで開催された。研究会では、海洋再生可能エネルギーのうち、千葉県でのポテンシャルが高いとされる洋上風力と波力の2つについて導入の可能性を検討していく。委員は有識者や漁業関係者など8人で構成し、座長には日本大学理工学部教授の木下健氏が就任した。

 当日の初会合では、海洋再生可能エネルギーの導入に向けたメリット、デメリットなど総論について話し合いが進められた。今後、実測調査に向けた検討や漁業協調などテーマを設けて意見を求め、事業を進めるに当たっての認識を共有し、来年度以降に実測調査など具体的な調査検討を進めていく。

 研究会では、高橋俊之県産業振興課長があいさつし、「洋上風力は、房総半島はポテンシャルが高いとされる中で、千葉としての視点を見据えながら、可能性と課題を整理しておく作業が必要」と述べ、委員の協力を求めた。

 座長に就任した木下会長は、「海洋エネルギーありきではなく、海洋エネルギーを千葉県が本当に利用すべきなのか、地域の振興にどんなプラスがあるのか、金銭だけでなく文化面も含めて考えたい」と述べた。

 海洋再生可能エネルギーには洋上風力、波力のほか、潮流、潮汐、海流、海洋温度差を利用したものなどがある。このうち銚子沖や勝浦沖では、7・5m以上の風況の良い地域があり、外房の太平洋側沿岸では15~25kw/mの強い波があり、洋上風力と波力は本県に適していると見られている。また本県は都心からのアクセスが容易で、洋上風力や波力発電に取り組む企業等も集積し、銚子沖では着床式の洋上風力実証試験が行われるなど、三方を海に囲まれていることも併せて海洋エネルギーのポテンシャルは非常に高いとされる。

 これらの状況から、県内での海洋エネルギーの可能性や課題を漁業協調や産業創出など様々な角度から整理し、海洋エネルギーによる産業振興・地域振興の方向性に関する認識を共有し、来年度以降に関係者の共通理解をベースに、実測調査等の具体的な調査検討を進めることとした。

 事務局がまとめたメリットとしては、地域資源の活用や、分散型エネルギーの構築につながる、1か所に多くの魚が集まる蝟集効果による魚礁としての利用が期待できることなどが挙げられたが、委員会からは、蝟集効果についてはデメリットの方が多いという評価があるなどの意見があり、メリット、デメリットとも漁業調整を課題に挙げる意見が多く、漁業者の思いに立って丁寧に事業を進めることが必要などとされた。また、観光と合わせた経済の相乗効果を期待する意見もあった。

 研究会の委員は次の通り。

 【千葉県海洋再生可能エネルギー導入可能性研究会委員】

 ▽木下健・日本大学理工学部教授(座長)▽長井浩・日本大学生産工学部環境安全工学科准教授▽高梨義宏・千葉県漁業協同組合連合会参事▽黒崎明・海洋エネルギー資源利用推進機構理事▽藤井誠二・公益財団法人海洋生物環境研究所中央研究所所長▽明田定満・独立行政法人水産総合研究センター水産工学研究所特任部長▽中原裕幸・一般社団法人海洋産業研究会常任理事▽角田智彦・㈱三菱総合研究所科学・安全政策研究本部主任研究員

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