国土交通省の大脇崇(おおわき・たかし)港湾局長は12日、建設専門紙記者会の就任インタビューで「ソフト、ハード両面で優れた、世界的にもお手本になれるような港づくりを目指す」と抱負を述べた。政府の最重要課題となっている地方創生については「テーマを二つ考えている」という。
一つは地域を支える基幹産業の競争力強化で、「大都市の港湾だけでなく、地方の港湾も含め、港があることによる経済波及効果、雇用の創出効果は大きい」ことを踏まえ、「それぞれの港が各地域の立地産業や港湾の特徴、個性を生かした取り組みをしていくことが必要」と強調した。
具体例として「日本の雇用の約一割を担っており、しかも裾野が広い」自動車産業を示し、「自動車を運ぶ船が大型化している。そうすると岸壁の水深も少し足りないとか、積み出しをするモータープールが不足するといった課題がある。港湾がボトルネックにならないよう、こうした課題を解消することが必要」と述べた。
もう一つがクルーズ船の受け入れによる地域活性化となる。大脇局長は「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2014の中で、2020年にクルーズ100万人時代の実現を目指すことが記載されている。地方公共団体の首長で構成されている全国クルーズ活性化会議の活動を引き続き支援していきたい。例えば国内外のクルーズ船会社を招いた商談会を開催したり、寄港していただく港の施設の諸元、あるいは港からアクセスできる観光スポットの情報を発信できるWEBサイトの充実など。ハード面では、既存施設を活用しながら大型のクルーズ船に対応できる工夫や、多言語表記、通信環境の改善を通じ、受け入れ環境の改善に取り組んでいく」と話している。
クルーズ船が着岸できる専用の岸壁を持っている港はあまりなく、「ほとんどの港は、通常は貨物を扱っている岸壁を活用してもらっている」ことをとらえ、「どういう受け入れ環境が良いのか、工夫が必要」とみている。
港湾施設の老朽化対策については「水深4・5mよりも深い岸壁が約5000施設あるが、整備されてから50年を経過する割合が現状では約10%。これが20年後には約60%に増加する。5月に維持管理の課題に対する対応方針をとりまとめた。それと共に、点検方法を示すガイドラインを7月に策定した。国と港湾管理者とで連携し、個々の施設の維持管理計画を策定する。また港の単位で、集約、利用転換といった工夫をできるような予防保全計画を作る。それらを通じて維持管理や更新のコスト縮減、平準化を図りながら、戦略的なストックマネジメントに取り組んでいく」とした。
写真=「世界的にもお手本になれるような港づくりを目指す」と述べた大脇崇港湾局長