独立行政法人水資源機構千葉用水総合管理所が実施する「房総導水路施設緊急改築事業」の実施計画が、先月17日付で認可となった。老朽化等により低下した房総導水路施設の機能を回復するとともに、大規模地震に対する耐震性能を確保するため、ポンプ設備等の改築など施設の緊急的な改築を行う。事業期間は2014~20年度の7か年で、総事業費は約150億円を見込む。事業初年度の本年度事業費は約4億9600万円。
主な工事内容は、老朽化対策として揚水機場3か所(横芝揚水機場、大網揚水機場、長柄揚水機場)のポンプ設備及び受変電設備改築、トンネル改築20・7㎞、付帯構造物改築等を実施し、大規模地震対策としてトンネル耐震補強0・6㎞、サイホン耐震補強10か所、水管橋補強4か所、非常用電源設備、付帯構造物補強などを実施する。
揚水機場の改築では、ポンプ設備、駆動設備、受変電設備、通信設備を更新する。横芝揚水機場は受変電設備、監視制御設備、ポンプ設備、駆動設備を、大網揚水機場は受変電設備、監視制御装置、駆動設備を、長柄揚水機場は駆動設備をそれぞれ更新。
トンネルの改築は、トンネル背面空洞の充填や、構造的に問題となるひび割れの補修を行い、付属構造物改築等は非泥圧バルブ、チェッキを交換。大規模地震対策のトンネル耐震補強は、炭素繊維で補強し、従来の機能を維持しつつ、耐震性能を確保する。またサイホンの耐震補強は、既設の伸縮可とう管を、大規模地震により想定される変位置に対応可能な伸縮可とう管に取り換える。水管橋は伸縮管、基礎補強、落橋防止を行う。
千葉用水総合管理所は認可を受けて、今月1日付の発注見通しで長柄バルブ室耐震補強工事と横芝・大網揚水機場特別高圧受変電設備工事の工事2件と千葉地区他トンネル耐震照査・設計等業務、大網地区サイホン耐震照査・設計等業務などを公表した。長柄バルブ室の耐震補強工事は地盤改良を実施するもので、工期約12か月。横芝・大網機場の特高受変電設備は工期約34か月。発注予定時期はいずれも第4四半期。
房総導水路は、利根川の上流ダム群等や東金ダム及び長柄ダムを水源に、千葉県、千葉市、九十九里地域、南房総地域へ水道用水を、千葉臨海工業地帯及びその周辺地域へ工業用水を供給している。施設は設置後35年以上が経過し、これまで定期的な保守点検、分解整備等を行ってきたが、経年化に伴う不具合が多発し、電気設備も交換部品が製造中止になるなど、延命化も限界にある。土木施設もトンネル天頂部の空洞化やクラックの発生、コンクリートの中性化等により、崩壊の危険性がある。
一方、南関東地域での大規模地震の発生が危惧されているなか、同水路施設は震度6強の範囲にある。このような中で実施した耐震性の照査で、レベル2地震動に対する耐震性能が十分でないことが判明。こうした状況から緊急改築を実施することになった。