協同組合千葉電設協会(田中宏幸理事長、組合員48社)が今年で創立50周年を迎えたことを記念して、日刊建設タイムズ社では、熊谷俊人・千葉市長と田中理事長との「特別対談」を企画した。対談の内容は、①50周年を迎えての心境②「千葉市社会福祉基金」に対する寄附と率直な気持ち③学校屋根貸しなどによる千葉市の太陽光発電事業の今後の展開④市役所新庁舎建設計画と地元企業の参入⑤防災協定をはじめとする双方の連携⑥これからの10年に向けて――など。熊谷市長が掲げる「災害対応力の強化」には、太陽光発電をはじめとする再生エネルギー等の導入が不可欠。田中理事長は、同協会が千葉市に新たな技術を提案する「良きパートナー」になるとともに、電気工事分野におけるエキスパートとして、千葉市の躍進を支える原動力となることを今後の10年ビジョンの一つに掲げた。
災害時にも機能する避難所
協同組合千葉電設協会は、1965年に前身となる「千葉市電友会」を11社で設立。85年には、法に沿った協同組合として「協同組合千葉電友会」に移行。97年7月に名称を「協同組合千葉電設協会」と改め、現在の組合員は48社。
50周年を迎える協同組合千葉電設協会に向けて熊谷市長は「電設協会という業界団体との密接な連携によって、災害対応を含めたまちづくりに貢献していることを、今まで以上に市民のみなさんに実感して頂けるような取り組みはどのようなものがあるのか。50周年を機に、我々もさらに意識を傾けたい」と弁。
また、対談の中で熊谷市長は、千葉市が国の補助制度である「2014年度再生エネルギー等導入推進基金事業」に採択されたことを説明。「17年度までの3年間で7億円の補助金が来る。この7億円分を発注できることは大変大きいことだ」とし、「事業費としても大きいが、避難所となる約22の市有施設に、蓄電池を備えた太陽光発電設備が整備出来る。『災害対応力の強化』という意味でも、その影響は極めて大きい」と期待を寄せた。今後は、地域に避難所の運営委員会を立ち上げ「災害時にも機能する避難所を追い求めていく」との方針を示した。
「学校屋根貸し」などによる千葉市の太陽光発電事業の今後の展開については、昨年12月を募集期間として、本年度分の5校を受け付け。昨年度分の12校については現在、工事を実施していることを説明。国の固定価格の買い取り制度の見直しの動向を注視しながら、今後も学校の屋根貸しを基本とし、「それ以外にも良い施設があればどんどん導入していきたい」との考えを述べた。
同じく「市役所新庁舎の建設」については、「時間をかけて市議会や市民のみなさんの理解と合意を得ながら、ステップを踏んで進めていく」とのスタンスを示したうえで「中でも重要な柱は『災害対応力』であり、災害時に市民のみなさんを守ることが出来る災害の拠点として機能しなければいけない」と強調。災害時にもエネルギー関係を供給出来る体制を構築していくため「電気設備関係に関して言えば、コージェネレーションシステムを含めた様々なかたちでしっかりと議論しなければならない」とした。
工事の平準化と地元企業JⅤを
「市役所新庁舎の建設をはじめ、今後の主要施設のリニューアル計画に組合員が参画していくためには何が必要か」との問いに対して田中理事長は、「発注にあたっての不調・不落入札をなくすという意味からも、可能な限り工事発注を平準化し、『地元業者の育成』という観点から、これまで以上に地元業者への発注に向けた意識と工夫をお願いしたい」と要望。「組合員の技術水準をこれまで以上に引き上げることで、千葉市からの要望以上の工事成果や実績を上げ、満足して頂ける仕事をしなければいけない」とした氏は「組合員同士がお互いに切磋琢磨し、組合としても技術研修会などを実施しながら『信頼される電設協会』を目指して頑張りたい」との決意を述べた。
さらに「地元業者が適正な価格で仕事が出来るような工夫」を提案した田中理事長は「例えば『地元企業のJⅤ』も一つの手だと思う。これからも色々な部分でクリーンな太陽光発電をはじめ、再生可能エネルギー関係の機材の性能がアップし、それらの普及が見込まれる。そのことから、補助金など活用出来るものはどんどん活用し、千葉市におけるオリジナリティーとして『クリーンで再生エネルギーのまちづくり』に向けた工事を増やして頂きたい」と要望した。
一方、協会における喫緊の課題として「若い人材の確保と育成」を掲げた田中理事長は「協会のこれからを考えるうえで、若手の育成は必要不可欠となる。みんなで知恵を絞って、みんなで汗をかきながら、未来を背負う若者の確保と育成に最大限の努力を注ぎたい」との決意を示し、協会におけるもう一つの10年ビジョンとした。
熊谷俊人・千葉市長×田中宏幸・理事長特別対談 「クリーンで再生エネのまちづくり」
――協同組合千葉電設協会が創立50周年を迎えるにあたっての現在の理事長の心境と、これまでの思い出深い事柄は。
田中理事長
50周年を迎えるにあたっては、非常に感慨深く思っている。それと同時に、協会をここまで作り上げ、あるいは育てて守ってきて頂いた歴代の理事長をはじめ、理事と組合員のみなさんに感謝と敬意を表したい。事業を推進出来るのは、ひとえに市長をはじめ千葉市当局のみなさん、組合の諸先輩や多くの理事、組合員、賛助会員のおかげである。この場を借りて感謝申し上げたい。
組合員総動員で間引消灯2800本
思い出深い事柄は、やはり4年前の東日本大震災だろう。この時、本県の電気は地震の揺れに強かったことから電気的な損害はほとんどなく、我々の緊急出動はなかった。ただ、福島第一原子力発電所の事故を受けた節電として、市土木部から約2800本の依頼があった間引き消灯をはじめ、それ以降の約1500本の再点灯の際には、全組合員が出動した大掛かりな作業になったことが、50年の歴史の中でのほんの一部ではあるが、大きな記憶に残る事柄となった。
ちなみに、協同組合千葉電設協会の沿革としては、1965年(昭和40年)に11社で千葉市電友会を設立。85年には法に沿った協同組合として「協同組合千葉電友会」に移行。97年7月に組合名を「協同組合千葉電設協会」と改め現在に至る。現在の組合員数は48社。
熊谷市長
本当にあの時は特別な瞬間だったと思う。
――50周年を迎える協同組合千葉電設協会に向けて、市長から一言。
熊谷市長
電設協会のみなさんと私ども千葉市とは、本当に良い関係を持たせて頂いている。様々な業界団体と千葉市はお付き合いしているが、電設協会とは「とても協調的」な印象がある。もちろん業界ごとや個社の利益もあるが、それ以上に、理事長をはじめとする色々な方々から、千葉市の環境対策や節電など、電気にとどまらずご協力やご提言を頂いていることに対して、私どもは大変感謝している。
密接な連携で貢献、市民が実感へ意識
50周年という節目を迎えられ、電設協会という業界団体との密接な連携によってまちづくりに貢献していることを、今まで以上に市民のみなさんに実感して頂けるような取り組みはどのようなものがあるのかについて、我々も意識を傾けたいと改めて思う。
――組合として、長年にわたり「千葉市社会福祉基金」への寄附活動を毎年続けているが。
田中理事長
1990年から25年間にわたり、毎年10万円ずつ寄附させて頂いている。これからも千葉市において役立てて頂きたいと思う限りである。
千葉市社会福祉に25年間の寄附活動
――この寄附活動に対する市長からの思いと、これまでの寄付金の使い道、または今後の活用方針など。
熊谷市長
特に継続して寄附を頂戴することは、継続的な事業に活用出来るので、我々としては大変ありがたい。社会福祉基金は、例えば障害者や高齢者への支援はもとより、社会的に恵まれない立場の子どもたちに対する育成支援にも使われているので、千葉市の様々な方々がそれにより支援を受けていることは間違いないと思う。そういった方々により支援の手が差し伸べられるように、頂戴している基金を大事に使っていきたいと改めて思う。
――学校屋根貸しなどによる千葉市の太陽光発電事業の今後の展開についての考えは。
熊谷市長
今でも千葉市は、県内では率先して取り組んでいると自負している。学校屋根貸し事業に関しては、多くの学校で実施しているが、我々からすれば、国の固定価格の買い取り制度の見直しの動向を注視しなければならない。昨年12月を募集期間として本年度分の5校を受け付けた。昨年度分の12校については現在、工事を実施している。今後も学校の屋根貸しを基本とし、それ以外にも良い施設があればどんどん導入していきたい。
――千葉市の太陽光発電事業の今後に対する意見や要望は。
田中理事長
工事は、地元業者に発注して頂きたいということをお願いしたい。
熊谷市長
それが一番大事なことだと認識している。
避難所市有施設に蓄電池付き太陽光発電設備
――再生可能エネルギー事業や地域グリーンニューディール基金に対する市長の認識は。また、これらの導入も視野に入れた考えは。
熊谷市長
私も所管に「国の補助金を積極的に活用すべきだ」として指示している。国の補助制度である2014年度の再生エネルギー等導入推進基金事業に千葉市が採択されているので、17年度までの3年間で7億円の補助金が来る。この7億円分を発注できることは大変大きいことだと思う。事業量としても大きいが、何といっても避難所となる市有施設に蓄電池を備えた太陽光発電設備の整備に向けて、今後は地域の方々に避難所の運営委員会を立ち上げて頂き、災害時にも機能する避難所を追い求めていく。市有施設の22か所程度で導入できると見込んでおり、「災害対応力の強化」という意味でも、その影響は極めて大きい。
3年間で補助7億
田中理事長
これはまさに「熊谷市長の力」で獲得したものだと思う。
熊谷市長
1回目の採択では洩れてしまったが、諦めずに食い下がり、2回目でめでたく採択された際には、関係者一同で大喜びした。
田中理事長
まさに千葉市当局が一丸となったチームプレーの結晶としての結果であり、大変有り難い限りである。
柱は「災害対応力」
――市役所新庁舎建設をはじめ、今後の主要施設のリニューアル計画について。
熊谷市長
本庁舎の建て替えの計画が進んでおり、本年度で基本構想に引き続き、現在は基本計画案の作成に入っている。時間をかけて市議会や市民のみなさんの理解と合意を得ながら、ステップを踏んで進めていく。いずれにしても本庁舎の建て替えは大きな事業である。中でも重要な柱は「災害対応力」であり、災害時に市民のみなさんを守ることが出来る災害の拠点として機能しなければいけない。その中には、災害時にもエネルギー関係を供給出来る体制を構築していくということで、高ジェネレーションを含めた様々なかたちで、電気設備関係に関して言えば、しっかりと議論した機能を果たしていかねばならない。
これからは、高度成長期に一気に造った公共施設が老朽化し、大量の大規模修繕に向けた相当量の予算が必要となる。その部分は電設協会のみなさんと十分に連携を図りながら、効率よくかつ計画的に修繕リニューアルを進めていきたいと思う。
平準化発注に対し、組合技術水準向上
――市役所新庁舎の建設をはじめ、今後の主要施設のリニューアル計画に組合員が参画していくためには何が必要か。
田中理事長
一つは発注にあたっての不調・不落入札をなくすという意味からも、可能な限り工事発注を平準化して頂きたい。我々としては、組合員の技術水準をこれまで以上に引き上げ、千葉市からの要望以上の工事成果や実績を上げ、満足して頂ける仕事をしなければいけないと思う。その部分においては組合員同士がお互いに切磋琢磨し、組合としても技術研修会などを実施しながら「信頼される電設協会」を目指して頑張っていきたい。一方で「地元業者の育成」という観点から、これまで以上に地元業者への発注に向けた意識と工夫をお願いしたい。
「地元企業JⅤ」を
新庁舎の話だが、かなり大規模な工事となることは、我々も予想している。同じように、地元業者が適正な価格で仕事が出来るように工夫して頂きたい。例えば「地元企業のJⅤ」も一つの手だと思う。これからも色々な部分でクリーンな太陽光発電をはじめ、再生可能エネルギー関係の機材の性能がアップし、それらの普及が見込まれる。そのことから、補助金など活用出来るものはどんどん活用し、千葉市におけるオリジナリティーとして「クリーンで再生エネルギーのまちづくり」に向けた工事を増やして頂くことを要望したい。
――地元企業の育成の見地から、これらの諸事業における地元企業への発注方策などの考えは。
熊谷市長
我々は可能な限り、入札参加資格においては市内業者を要件に基本的に進めていく。また、落札業者に対しては、可能な限り下請を市内業者にしてもらうよう、しつこいくらいに依頼していきたいと思う。入札制度の部分においては、これまでも市内建設4団体からの意見や要望を参考にしながら、見直しをさせて頂いているとの認識がある。
メッセージ込めた補助制度方針継続
我々からすれば、入札のみではなく、あらゆる補助制度を設計する時に、基本的な哲学として「基本的に市内業者が望ましい」ということを作っていくことが大きいのかなと思う。我々は太陽光発電の屋根において「市内業者が施工すると何割増しになる」という補助制度を持っているが、メッセージを制度の中に込められるように進めており、今後もこの方針で臨んでいきたいと考えている。
田中理事長
基本的には入札等を含めて「市内業者」という条件を付けて頂いているので、我々としては感謝の限りである。
――防災協定を含めた千葉電設協会をはじめとする地元企業(団体)と行政との連携についての考えは。
熊谷市長
我々にとって防災協定は本当にありがたいことである。東日本大震災の際の活動により、市民に対して十分に理解が得られたと思っている。今でも毎年の防災訓練をはじめ、あらゆる災害時に協力を頂いているので、双方の経験値は蓄積されていると思う。将来、そういったことがあった場合には、これらを受けて、より有効な連携が出来るものと期待している。
――協会側からみた防災協定をはじめとする千葉市との連携については。
田中理事長
協会としては毎年、九都県市合同防災訓練に参加し、緊急指令の伝達訓練や緊急出動訓練のほか、自転車型の発電機を使った人力発電の体験、電気の大切さや防災意識の高揚を図っている。地域に根差す我々地元業者は、地域経済や雇用を支え、インフラの維持管理や災害対応を行うなど、地域社会における不可欠な役割を多少なりとも担っているという自覚を持っている。我々としては、今後も地元に貢献しながら、市民や行政に信頼される協会を目指していきたい。
「強み」を生かした「輝く都市」めざす
――市長が描く千葉市の今後の10年ビジョンは。
熊谷市長
大事なことは、我々千葉市自身がこれからの10年を考えた時に、まち全体が急速に発展をしてきた過程の更新時期を迎えてくる。「あの時」は急激に拡大する人口増に対して「継ぎ接ぎ的」にでも公益的施設を造らなければいけない時代だった。現在は成長の速度が緩やかになっていることから、まち全体の更新時期に合わせて、本来であれば一体であった方が良いという個々の施設の機能を見極め、公共施設の再構築・再編成を通じて、最終的にはまち全体がより便利で、活性化するように造らなければいけない。それぞれの地域ごとに良さを活かせるような役割づけをし、その中において「核」となる公共施設の計画的なリニューアルや建て替えを行う、また、それに向けたとても重要な10年だと考えている。
何より我々千葉市は「強み」を活かし、「首都圏・日本全体・アジア」という立ち位置の中で、しっかりと輝くような都市にならなければいけない。海もあり空港にも近く「幕張」という拠点もある。また、千葉県の交通の結節点であることから、これらを最大限に活かした都市としての特徴づけを進めていく。これから毎年のようにそれらの姿が見えてくるので、是非、期待して頂きたい。
「新技術」提案する「良きパートナー」
――理事長が描く組合の今後の10年ビジョンは。
田中理事長 熊谷市長の強いリーダーシップのもとに、海辺のウォーターフロントをはじめ、周辺等の色々な開発が構想・構築され、これから千葉市は大きく変わっていくと思う。今後、技術は日進月歩進化するとともに、LED照明をはじめ太陽電池モジュールなどエネルギー効率が大きく向上し、様々な再生可能エネルギーが注目されて来ると思う。それとともに、新しい技術を電設協会が中心となって考え、提案しながら、我々が「良きパートナー」となって協力し、市長のもとで躍進する千葉市とともに発展していきたいと思う。
未来を背負う若者の確保と育成
一方で協会の課題としては「若い人材の確保と育成」がある。当協会をはじめ建設業界では今、色々な部分での人手・技術者不足が叫ばれており、技術者の育成の遅れが指摘されている。当協会の青年部では、優秀な若手が大勢頑張っているが、その青年部の人材も減少傾向にあることも大きな課題である。協会のこれからを考えるうえで、若手の育成は必要不可欠となる。みんなで知恵を絞って、みんなで汗をかきながら、未来を背負う若者の確保と育成に最大限の努力を注ぎたい。