㈱架設工事佐々木組の佐々木和幸代表取締役社長は、このほど共同インタビューを開き、労務単価が引き上げになるなど公共事業での制度改善が進む中、会社の将来像を示す一方で、人材確保・育成の難しさや、社会保険加入の在り方について、業界はいまだに苦しい課題が残っていることを語った。
―社会保険強制加入について
佐々木 2、3、4次下請けでは対応できない企業も数多くある。未加入が多い理由は、過去、低入札工事を下請けとして受注を余儀なくされた背景もあり、賃金ベースと社会保険費用の抑制を行わなければ経営困難となる時代があったため。「未加入排除」という言葉を使うのは、いかがなものか。これまで建設産業を支えてきた下請企業の行く末を危惧している。労働人口が減る中、重層下請けだと元請けの管理が大変。事故も多発傾向にある実態も理解できるが、強制加入で今後、新規企業の立ち上げが厳しくなり、労働者不足は加速する。労務単価を上げてもらってありがたいが、民間契約での法定福利費の確保と、企業として安定した受注量の維持が必要不可欠となる。どのように生き残っていくべきか難しい課題もある。
―労務単価など地域間格差は
佐々木 北陸地域では石川県、富山県と比べると新潟県は低い。しかも、北陸や東北は冬期間苦労する。さまざまな面で費用が多い割りに冬期間の補正値が低い。
―県内の今後の見通しは
佐々木 今回も補正予算は期待していたが、発注量が少ない気がする。施工時期平準化の話はあるが、どこまでやってもらえるか不安。インフラの補修については、水害や震災などの復興である程度進んでいる。今後10年間の高速道路、直轄国道橋梁の耐震補強に期待を寄せている。
また、市町村単位では更に橋梁などの補修工事が残っている。
―担い手確保について
佐々木 70歳ぐらいになる職人には、まだ勤めて頂いている。若年層の確保が難しい時代であり、特に新卒が集まらず入社しても継続しない。会社の年齢別構成は20歳代や30歳代が少なく、当面は中途採用で40歳代や50歳代が中心となる。3K、5Kの労働環境の影響は若年層において、いまだに大きい。
―人材育成で力を入れている点は
佐々木 資格は100%会社経費で取得してもらっている。人を成長させるために社内での特別教育も行っており、力強くバックアップしている。また、協力会社を交え月1回の会議も開き、毎月5日に全体朝礼で安全について情報共有などを図っている。これも全ては「人が基本」となる考えから。
―レベルアップ教育について
佐々木 JR関連工事は5月と8月、年末年始において、輸送繁忙期で現場が休工となるので、職長教育などのレベルアップを行っている。
―処遇の改善に向けて
佐々木 国や自治体で4週8休の動きもある。休日は大切だが土曜日も稼ぎたい人もいる。売り上げや個人の収入にも影響する。技能者は日給月給であり、漸進的に給与体系を変えて良いのか読めない。今後、人口減少などによる税収が減る見通しが高く、公共投資が増えることは見込めない。民間工事に期待し、処遇の安定に努めたい。
―中長期的な展望は
佐々木 インフラ補修、マンション耐震改修など建築系の保守や解体にも力を入れたい。また、JR関連工事や水処理工事の維持・修繕も視野に入れている。バランス的には、民間工事の比率を上げたい。価格競争となるため、足場材はリースではなく自前で確保する。人材面では、ガスや溶接もできる多能工を育て、なるべく人員を抑え作業を効率化させたい。災害時の緊急対応などに向けては、機動力も生かしたい。必要とされる会社を目指したい。
―安全への考え方
佐々木 安全は全ての基本。これに尽きる。トラブルが起こったとしても、いかに解決するか、または再発防止するかが大事。些細なことかもしれないが一番大事。
【略歴】
(ささき・かずゆき)
1965年生まれ。中央工学校卒業後、㈱タカノス工業(栃木県)に入社。1988年に、㈱架設工事佐々木組に入社。2010年に同社代表取締役社長に就任。