記事

事業者
建設業労働災害防止協会千葉県支部

現場にレッドカードなし/安全優先で各自が審判/建災防柏分会が安全大会

2018/07/06 日刊建設タイムズ

 建設業労働災害防止協会千葉県支部柏分会(戸邉昌之分会長)の主催による「2018年度安全大会」が先月28日、柏市内のザ・クレストホテル柏で開かれ、総勢80人余が参加。全国安全週間に向けた安全教育の徹底や、安全管理体制の確立等、安全意識の高揚を図るため、労働災害の防止に全力で取り組むことを決意する「安全大会宣言」を採択。柏労働基準監督署の市倉健人署長、県東葛飾土木事務所の根本嘉生所長らによる来賓祝辞のほか、柏労基署安全衛生課の高橋幸喜課長が『建設業の安全について』の安全講話。また、この日は健康運動指導士及び産業カウンセラーで、第1回全日本女子柔道選手権大会66㎏以下級を皮切りに、第2回から第4回同大会61㎏以下級で優勝、1981年の太平洋女子柔道選手権同級及びアジア女子柔道選手権同級でも優勝し、日本女子柔道界初の国際試合で金メダルを獲得するなど、パイオニアとして活躍した笹原フィットネスプランニング代表の笹原美智子氏を講師に迎え、『中高年からの健康維持増進』~体づくりの運動と栄養~をテーマに特別講演も行った。


 ◆「安全標語」入選者表彰も


 主催者を代表して戸邉分会長は、本年1月27日に松戸市において、墜落死亡事故が発生したことに言及。それにより「市倉署長から当分会に対して、墜落防止措置などに関する6つの緊急要請があったことは周知の通りである」と説明。「墜落・転落等の労働災害を引き起こすのは『人』である」とした戸邉分会長は、今回の死亡災害について「足場を設置しているのにも関わらず、短絡行動を取ったが故に発生した。正しい行動を取れば発生しなかったと思う」と厳しく指摘。


 ◆災害ゼロ目指して多角的に危険予知


 一方、1972年に施行された「労働安全衛生法」について「第3条には、事業者等の責務として『単にこの法律で定める労働災害防止のために、最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通して、職場における労働者の安全と健康を確保しなければならない』とある。同じく第4条には、労働者の責務として『労働災害の防止のため、必要な事項を守るほか、事業者その他の関係者が実施する労働災害の防止に関する措置に協力するよう努めなければならない』とある」と説明。

 「災害を起こさないような措置をしていても、利用する作業者がルールを守らなければ、災害をなくすことは出来ない」と指摘した戸邉分会長は、「スポーツ界ではルールに反すると、注意やレッドカードでそれ以上の反則は防げるが、作業所内でレッドカードはあり得ない」と強調。「各自がレフリーとなり、色々な角度から危険を予知し、災害ゼロを目指して推進して頂きたい」と呼びかけた。

 本年から第13次労働災害防止計画がスタートしたことについては「5年間で建設業における死亡災害を2割以上減少させる『8人以下』が目標となる」と説明。本年における県内建設業の死亡災害、現時点で4件発生していることに対しては「そのうちの1件は前述の通り、柏労基署管内で起きたものである」と改めて指摘。「本日の安全大会から来年の安全大会の日まで、一人たりとも増やさないことを願う」と要請し、あいさつとした。


 ◆周囲が指摘する企業組織文化を


 引き続き、労働行政を代表して柏労基署の市倉署長は、管内における昨年の建設業労働死亡災害について「残念ながら一人の尊い命が失われた」と沈痛な面持ちで報告。一方で、休業4日以上の死傷災害については「5年連続減少の101件で、過去15年間で最も少ない」とし「ひとえにみなさんのご尽力の賜物」と評価した。

 前述の1件の死亡災害については「背景に短絡行動があった」と指摘。「効率を上げるために行ってしまうケースもあると思うが」と前置きしたうえで「それが危険な行動であるのならば、周りの人が『駄目だ』とはっきり言ってあげることが大事だ」と強調。加えて「そういった『企業文化』や『組織文化』を是非とも作って頂きたい」と要請し、祝辞とした。


 ◆安全意識の高揚/安全対策の徹底


 同じく、発注機関を代表して県東葛飾土木事務所の根本所長は、東葛飾地域における県発注工事において、2016年度に9件、17年度に5件、本年度も既に1件の事故が発生したことに「予断を許さない状況」と厳しく指摘。県としては「一定の要件の工事について、設計段階での安全審査とともに、安全で円滑な施工のための条件の明示や適正な仮設、安全対策などを検証し、工事着手後には安全パトロールを行い、課題があれば協議するなど、事故防止に取り組んでいる」と説明。

 「これからの季節は、集中豪雨や台風の影響による突風、暑さなどにより、事故のリスクが高くなる」との警鐘を鳴らしたうえで、「さらなる安全意識の高揚と安全対策の徹底に努めて頂きたい」と要請し、祝辞を結んだ。

               ◇

 この日の安全大会では、『安全意識の啓蒙活動』と称される「安全標語」において、最優秀賞1件、優秀賞3件、佳作10件の入選者を表彰した。開始から約30年が経過した現在もなお、283人(48社)から320点の作品が寄せられた。


 安全大会宣言


 我々は、人命尊重という崇高な基本理念の下、産業界での自主的な労働災害防止活動を推進し、広く一般の安全意識の高揚と安全活動の定着を図ることを目的に、労働災害の防止に懸命な努力をしてきた。

 この努力により、労働災害は長期的には減少している。しかし、建設業は、多くの危険作業を伴う仕事であり、他の産業に比べ、まだまだ高い水準で推移している現状である。

 このような状況を踏まえ、本日、本大会において、会員全員が本年度の全国安全週間スローガン『新たな視点でみつめる職場 創意と工夫で安全管理 惜しまぬ努力で築くゼロ災』の下、労働災害のさらなる減少を決意。

 働く方一人ひとりがかけがえのない存在であり、各事業所で一人の被災者も出さないという基本理念の下、日々の仕事が安全なものとなるよう、不断の努力を誓い、全員がルールを順守し、ゼロ災の明るい職場づくりになお一層、邁進することをここに宣言する。


           2018年6月28日

           建設業労働災害防止協会 千葉県支部柏分会

             安全大会実行委員長 助川 昌弘




 2018年度建災防柏分会/安全標語入選作


 最優秀賞

 ○いつもの仕事に要注意「慣れてる」「できる」は事故のもと 初心忘れず安全作業/佐藤秀明(㈱イズミ)


 優秀賞

 ○難しいことはシンプルに 易しいことは丁寧に 確認作業で ゼロ災害/高柳由彦(小畑建設㈱)

 ○「うっかり」「ぼんやり」「思い込み」おごる作業に危険の芽 仲間と摘みとれ現場の安全/小野新一(丸山建設㈱)

 ○基本を守って事故防止 経験生かして事故防止 みんなで目指そう災害ゼロ/齋藤明美(㈱コスモ工業)


 佳作

 ○声掛け合って みんなで守るみんなの現場 気持ちを一つに災害防止/稲井泰子(㈱成島組)

 ○取り除こう現場の危険 取り戻そう安全意識 皆が無災害 現場の主人公/藤田智久(㈱藤田土木)

 ○こころと体に安全帯 今日も一日安全作業で 笑顔輝く快適職場/田戸岡 晃(大栄総建㈱)

 ○やったはず 見たはず したはず 言ったはず はずをなくせば 事故もなくなる/戸邉克己(戸邊建設㈱)

 ○災害は小さなヒヤリの積み重ね 何かあるはずできること 常に持とう安全意識/渡辺 淳(上国興業㈱)

 ○「だろう」の作業は事故のもと「かも」の予測でゼロ災害/安藤俊和(山本建設工業㈱)

 ○身だしなみから始まる自己管理、朝礼から始まる現場管理 意識高めて安全施工/渋谷一雄(㈱中村組)

 ○ヒヤリ箇所 直ちに報告 直ちに是正 指差呼称で再チェック/伊東久史(近代住機㈱)

 ○計画し、行動したら評価する、分析行いさらに向上 安全作業の基本です/古橋 茂(㈱古橋鉄工所)

 ○何気ない作業の中にも安全意識 危険を予知してゼロ災害/岡安正美(㈱佐久谷)

記事資料 記事資料 記事資料 記事資料 記事資料 記事資料 記事資料

紙媒体での情報収集をご希望の方は
建設新聞を御覧ください。

建設新聞はこちら