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建設業労働災害防止協会千葉県支部

積極的に安全を楽しむ/富津火力LNG地下式貯槽タンク/木更津労基署・建災防かずさ分会が現場パト

2018/07/10 日刊建設タイムズ

 木更津労働基準監督署(阿部裕之署長)と建災防千葉県支部かずさ分会(松本信夫分会長)は先月27日、富津市新富の東京電力「富津火力発電所9・12号LNG地下式貯槽及び関連設備工事」を対象とする大規模建設工事合同パトロールを行い、木更津労基署から阿部署長をはじめ3人、かずさ分会から松本分会長をはじめ9人が参加。同工事は、富津LNG受入基地として、富津火力発電所構内に容量12・5万キロリットル規模の地下式メンブレン貯槽タンク(深さ35m、内径69m)を2基建設。来年3月22日の竣工を目指し、年内に工事を完了させ、年明けから試運転に着手する方針。施工は㈱IHI・日鉄住金パイプライン&エンジニアリング㈱(NSPE)・大成建設㈱の3社による乙型JⅤ。


 ◆エンジョイセーフティー現場


 この日は現場パトロールに先立ち、富津火力発電所構内の㈱IHI工事事務所において、㈱IHIの富津火力発電所9・12号地下式貯槽及び関連設備所長で現場代理人の生駒尚己・技術士(建設部門・総合技術監理部門)が、工事概要と同社の安全対策等を説明。IHIグループは既存の10個の地下タンクのうち、これまで5つのタンクの建設に携わってきたことから「私どもにとっても、先輩方が築いてきた歴史ある現場」と紹介。敷地の関係から、今回の2個のタンク(9号及び12号)の建設が最後になるという。

 JⅤ分担としては、土木設備担当の大成建設㈱が、タンクの深さの約2倍ほどの深さの地面に地中連続壁を筒状に構築。大きなシリンダーのような円筒を造り、その後にRC造の1・5mの壁として水圧・土圧(外圧・側圧)に耐える構造物としての外郭を造った。

 その後、IHIグループが機械設備チームとして内装に着手。RCの内側に保冷材を貼り、その上にメンブレンという0・2㎜のステンレス鋼板(薄膜)を貼った2層構造とする。LNG貯槽タンクは一言で言うと「大きな魔法ビン」であり、常温でマイナス162度。「如何に温めずに、気化させずに低温のまま保つかというのがタンクの宿命」だという。

 もう一つのJⅤパートナーである日鉄住金パイプライン&エンジニアリング㈱は、タンク付き付属配管やサブラック、メインラック、その他付帯設備などを担当。「3社JⅤでスクラムを組んで実施した」(生駒所長)という。


 ◆現場のポリシー/「プロアクティブ」


 安全対策について生駒所長は、「当り前のことを一つひとつまじめに行っていくというのがモットー」と言明。安全に関しては「私の現場での私のポリシーでもある」として、まずは「プロアクティブ」という積極的な取り組みを紹介。指摘を受ける前に、まず一歩先に、すべて自ら積極的に取り組むもので、「安全も『やらされている感』があると中々面白くない」として生駒所長は「自分たちはプロなのだから、人に言われる前にやってしまうという『先駆け』の意味がある。みんなに口を酸っぱくして言うことで、好循環が生まれている」と報告。それにより外部、特に客先からの指摘も激減したという。

 加えて「一流の安全管理を行えば、プライドを伴い楽しくなる。『その気持ちをエンジョイしようよ』ということで、『エンジョイセーフティーの現場』を実践している」と紹介。生駒所長によると、エンジョイセーフティーとは「現場の中で安全を楽しむ精神であり、今では現場の全員が口癖のように、安全を楽しむしくみとして『プロアクティブ』『エンジョイセーフティー』と言ってくれている。これが私の安全対策における信念であり、所長方針として謳っている」と力を込めた。


 ◆建災防加入の徹底/大手が呼びかけを


 現場パトロール後の質疑応答及び反省会の席で、松本分会長は「かずさ分会では、本年この時点で死亡災害はゼロ。しかし、統計的にみると、圧倒的に(建災防の)非会員が重篤な災害を起こす割合が高いのが事実である」と説明。「会員企業に対しては『安全について何が大事か』ということで、日々啓蒙活動を徹底している」と述べたうえで「それ故に、こういった(IHIの)東京本社を含めて、職人が集めてこられるこれらの現場については、あと一つ付け加えさせて頂ければ『建災防に加入しているか否か』というチェックをお願い出来ればと思う」と要請。一方で「現場とは違った面として、通勤途中で事故を起こすという場合もある。既に徹底されているとは思うが、重ねてお願いしたい」と注意を喚起した。


 ◆「厳然たる事実」の非会員の災害過多


 同じく阿部署長は、木更津署管内において本年これまでに、建設業をはじめ全産業で死亡災害が発生していないことに言及。建設業における休業4日以上災害は5月末現在で11件。昨年の同時期は23件だったことから「半減したことは大変良い状況だと考えている。今後もこのペースを続けて頂きたい」と要請した。

 また「事故防止には、地元建設業者の健全な発展が重要という観点から、ゼネコンに対して我々の方からも、地場の建設業者を活用して頂くようお話している」と述べた阿部署長は、「松本分会長の話にもあったように、建災防非会員の事業場での災害が多いというのは『8割以上』という数字が示しているように、厳然たる事実である」と強調。災害防止に関しては、「建災防に加入してもらうということが重要だと考えていることから、(木更津労基署の)職員に対しても、建災防千葉県支部の入会案内等を必要に応じて配布し、会員を増やすことにも努力している」と説明。「今後もかずさ分会の健全な発展を願っている」と述べ、現場パトロールを終えた。


 大規模建設工事合同パトロール出席者

 【木更津労働基準監督署】

 ▽阿部裕之・署長▽中村浩之・安全衛生課長▽上村隆一・地方産業安全専門官

 【建設業労働災害防止協会千葉県支部かずさ分会】

 ▽松本信夫・分会長▽嶋野貞雄・副分会長▽柴崎 誠・同▽青木孝行・同▽勝倉康博・理事及び安全指導者▽露﨑利行・同▽遠藤智朗・同▽片海裕光・同▽中山勝之・理事


 富津火力発電所9・12号LNG地下式貯槽及び関連設備工事現場の安全への取り組み

 【墜落・転落災害の防止】親綱1本、作業者1人表示/安全帯の先掛使用、ランヤード点検(月)/2m以上に場所の手摺りへネットの展張/本質安全、屋根ブロック搭載前に安全設備の事前設置

 【飛来・落下災害の防止】階段付近に離隔距離表/ホワイトボードで上下作業回避の確認&配置図を現場に掲示/高所作業車の標示(現実的な運用)

 【転倒災害の防止】段差部トラテープ注意喚起/通路確保、安全通路標識/近道行為の禁止の指導

 【単独作業者の災害防止】パトロール時の声掛け/グループKY後の1人KYを指導

 【熱中症災害の防止】気温・湿度・WBGT予測値→作業時間掲示(当日)/全員の体温・血圧・体調・配置確認、記録(当日)/WBGTでの作業時間、気温カード配布(全員、要健康管理者は別シート)/タンク内の冷房/水分塩分摂取管理表/熱中症計の表示

 【その他】作業安全シミュレーションの実施(翌週の作業内容を全員で確認し、実施事項を確実に行い、未実施の場合は着工禁止)/現場管理日誌の統計処理、グラフ化/考えるトイレ(安全シートをトイレ大・小に貼り付け)/作業員個人の良好事例の写真掲示で、本人の安全意識の強化・継続性/安全改善提案(ニチアス、SSS)ほか

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