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辞退要件緩和を検討/来年度からの低入札価格調査/受注側意見踏まえ実施前に対応/業務委託

2019/01/12 長野建設新聞

 県が2019年度から実施する建設工事に係る委託業務の低入札価格調査で、意図せず調査基準価格を下回り落札候補者となった場合の対応策を検討していることが分かった。調査基準価格未満で落札した場合、技術者の専任配置を求める方針に変更はなく、辞退に関する要件が緩和されるとみられる。内容は2月に開催予定の県契約審議会で報告した後、3月に企業向け説明会を開き周知する。

 新たに実施する低入札価格調査に対しては、地域を支える調査・設計業検討会議で業界側から「厳しすぎる」との声が挙がっており、また昨年12月に県内4カ所で行われた入札制度改定の企業向け説明会でも、運用に対する意見が複数出されている。

 調査基準価格は受注希望型競争入札の場合、予定価格の87.5%相当額。総合評価落札方式では予定価格の87.5~90%の範囲で変動制となる。失格基準価格は調査基準価格よりも2.5%低い価格に設定する。調査基準価格未満で落札した場合、調査書類の提出や管理(主任)技術者の専任配置、第三者照査の実施が義務付けられる。

 とりわけ通常は兼任を認めている技術者の専任配置は「国、地方公共団体等及び民間等の発注業務のいかなる技術者としても従事しないこと」が条件となる。落札候補者を辞退することも可能だが、年3回以上の辞退で入札参加制限の措置が講じられる。企業にとっては死活問題にもなりかねない罰則だ。

 県技術管理室は、品質確保の観点から技術者の専任配置は予定どおり実施する一方、意図せず調査基準価格を下回り落札候補者となった場合など、改定内容に寄せられたさまざまな意見を踏まえ、辞退に関する要件を緩和する方向で検討している。

 低入札価格調査は過度な安値受注を防ぎ、品質を確保するため必要不可欠な制度であることに異論の余地はないだろう。ただし、罰則の加減次第で制度が形骸化したり、逆に地域に根差した優良企業の経営をおびやかすことにもなりかねない。入札制度改定には慎重の上に慎重を期す必要があり、県が改定を周知後、実施を待たずに部分的な修正に踏み切るのは、まさにその表れだと評価したい。

 なお、19年4月の公告案件から適用される低入札価格調査では、調査基準価格未満で落札候補者となった場合、通知日の翌日から起算して2日以内に調査書類(①その価格により入札した理由書②積算内訳書③当該契約の履行体制④手持建設関連業務の状況⑤配置予定技術者名簿⑥手持機械等の状況⑦同種または類似の業務受注・履行実績)の提出を求め、業務完了時にも同様の調査書類を提出してもらう。

 さらに、技術者の専任配置と第三者(資本面のほか、役員を兼ねるといった人的関係がない者)による照査も義務付ける。第三者照査を行う者は、県の入札参加資格を有し、過去5年間に県発注の委託業務において、調査対象者の第三者照査を受託または調査対象者に第三者照査を委託したことがないことが条件となる。

 小規模補修や緊急対応など発注者側から依頼する業務は、技術者の専任配置の対象とはしない。

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