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国土交通省北陸地方整備局(建設)

来年度にも建設段階へ/大町ダム等再編事業

2019/06/28 長野建設新聞

 国土交通省北陸地方整備局は、現在実施計画調査を進めている大町ダム等再編事業について、2020年度にも流入土砂対策の施設建設工事に着手したい考えだ。このほど長野市内で開かれた長野県事業連絡協議会で松原誠河川部長が発言した。

 同事業は大町市の信濃川水系高瀬川にある高瀬ダム、七倉ダム、大町ダムの容量の一部を洪水調節用に振り替えるとともに、安定的に治水・利水機能が発揮できるよう流入土砂対策を実施するもの。現時点における総事業費は約230億円(調査検討結果により変更となる場合もあり)。19年度は約2億円を措置している。

 ダムの洪水調節機能が向上することで、高瀬川や犀川沿川はもとより、千曲川本川でも浸水被害の軽減効果が期待されている。実際に06年7月の豪雨では、国交省と東京電力が連携し大町ダムを含む高瀬川、梓川の6ダムで特例的に洪水を貯留。下流部の氾濫を防いだ。

 3つのダムのうち東京電力が管理する発電ダムの高瀬ダムと七倉ダムでは、発電容量のうち合わせて1200万m3を洪水調節容量に活用。国管理の多目的ダム・大町ダムは水道容量から67万m3を洪水調節容量に振り替える。ダム関連の工事としては高瀬・七倉ダムで洪水調節を行うためのダム制御・監視制御設備の整備が計画されている。堰堤のかさ上げは予定していない。

 流入土砂対策では、高瀬ダム上流部の不動沢と濁沢との合流部付近~大町温泉郷間に土砂を搬出する全長約14㎞のベルトコンベアを設置する。このうち3区間約7㎞はトンネルを新設し、2区間約5㎞は旧高三導水路を活用する計画だ。

 17年度に発注した土砂対策設備の予備設計(土砂搬出トンネル、ベルトコンベア、破砕設備等および切土斜面の予備設計)は八千代エンジニヤリング、18年度に発注したダム制御設備と監視設備の概略設計(高瀬・七倉ダムで洪水調節を実施するためのダム制御・監視制御設備の概略検討、土砂搬出用トンネルおよびダム監視用CCTV設備の配置検討)は建設技術研究所が担当している。

 大町ダム等再編事業は14年度に新規事業化され、15年度から実施計画調査に着手している。14日に開かれた協議会の席上、松原河川部長は北陸地整の県内主要事業の一つとして同事業を紹介した上で「来年度に建設段階へ進めるよう、東京電力とも協議している」と述べた。ただし、建設段階へ移行するために必要な新規事業採択時評価は現時点で未着手となっており、計画どおりに進むかは流動的な情勢だ。

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