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今度こそ開発実現を 山梨市の南反保地域

2019/10/25 山梨建設新聞

 山梨市役所東側に広がる南反保地域の開発に向けた検討が続く。昭和の時代から同様の計画が持ち上がっては消えた長年の市の懸案。高木晴雄市長も「何とか自分の代で軌道に乗せたい」と思い入れは強い。市は地元らと準備組織を立ち上げ開発手法の検討を始めたが、数多くの地権者の意見を集約し方向性を決めるまでには、まだ時間がかかりそうだ。

 市都市計画課によると、市は2018年8月、自治会の代表らと「南反保のまちづくりの会」を立ち上げた。これまでに数回勉強会を開いたほか、区画整理の事例を学ぶため静岡県内を視察。「ことしは長野県を視察するほか、この南反保地域をあらためて関係者で歩いてみようとも考えている」(同課)。地域の特性を再確認することで、その場所に合った開発手法を導き出していきたいという。

 開発の対象となる面積は約50hに及ぶ。市中心部に当たる地域だが農地が約6割を占め、耕作放棄地も目立つ。ただ一部宅地開発が進んでいる場所もあるため市担当者は「ゾーン分けして、それぞれの地域に合った開発の手法を取る」のも方策の一つと話す。

 同課によると、街づくりを進めていく上で、まずは地域の内外を結ぶ幹線道路を整備し、沿線の開発を促すことで住民を呼び込むという方法がある。地権者のうち約500人を対象に行ったアンケートでは、都市計画道路の整備や既存道路の改良を求める意見が数多く上がり、商業施設の誘致を望む声も複数あった。地方でよく見られる幹線道路沿いに集客力がある商業施設が並び、その周辺に住宅が増えていくイメージだ。

 だが道路事業主体で進めることで開発が中途半端に終わることを懸念する向きもある。街づくりに詳しい市担当者は「幹線道路の沿線はいい。しかし、その他の地域すべてに必要な道路を整備するのは難しいため、整備が行き渡らず宅地としての活用が難しい土地がスポット的にいくつも残ることになる」と指摘する。

 また道路事業として始めた場合、道路部分の整備には公的な資金を投入できるが、それ以外の個人の土地の改良などは地権者や民間企業の負担で行うことになる。このため開発が進むのは幹線道路周辺だけで、その他の地域は今のままになる可能性が高いという。

 一方、最近では甲府市や昭和町、富士河口湖町などで実績がある区画整理事業は、対象地域を1から造り直すことが前提の事業。このため道路整備だけでなく土地の整形や区画の見直し、水害を抑制するようための敷地の底上げといったことにも公的な支援が受けられる。区画整理により車のすれ違いが困難な道路や宅地活用が難しい土地はなくなるため、住宅が増え地域全体が活性化することにつながるという。

 区画整理となれば住民は現在の土地と区画整理後の土地を交換することになる。場合によっては土地が以前より狭くなる場合もあり差分は金銭で調整する。家屋の移設や引っ越しが伴うこともあるため、対象となる住民の9割が同意しなければ事業化はできない。ただ市担当者は「事業化できれば、完了までにそう期間はかからない。整備が始まってから5年程度で完了するケースも多い」と、組合が立ち上がれば、後は市や専門のコンサルなどの支援により事業は進むとみる。

 市は2018年5月、同地域開発の支援業務を日本工営(東京都千代田区)に委託。ことしの5月には区画整理の大枠となる計画づくりを同社に依頼した。今後はそれらの資料を準備組織に提示し、開発手法の検討をさらに深めていきたい考えだ。


【写真=市の中心部に当たる南反保地域】

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