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軟弱地盤対策などで400億増/東関道水戸線(潮来~鉾田)

2020/01/23 日本工業経済新聞(茨城版)

 国土交通省関東地方整備局の事業評価監視委員会(17日)で、東関東自動車道水戸線(潮来~鉾田、30・9㎞)について事業の継続が了承された。同区間は用地取得率が面積ベースで93%(2019年12月末現在)に達し、各区間で改良工事や橋梁工事が進展。一方で軟弱地盤対策や調整池整備などにより事業費が約400億円増額の約1110億円となることが報告された。今後も用地取得を進めるとともに、早期完成を目指して工事を推進していく。休憩施設の設置についても調整を進める。残事業費(工事費、用地および補償費、間接経費、付帯工事)は約650億円。


 東関道水戸線の潮来~鉾田区間(潮来市延方~鉾田市飯名)は、開通している鉾田ICと潮来IC間を結ぶ。延長30・9㎞、幅員13・5m。4車線の計画だが、当面は2車線で整備する。2009年度に事業化した。

 用地については19年12月末時点で、面積ベースで93%を取得。残る用地は引き続き任意の取得に最大限努めるが、土地収用法による取得も並行して実施する。

 工事は、潮来市延方地区で地盤改良工や函渠工、潮来市前川地区で橋梁下部工や函渠工、潮来市川尾地区で本線函渠工、潮来市島須地区で跨道橋下部工、行方市小高地区で調整池工、鉾田市両宿地区(北浦IC)で改良工や橋梁下部工、鉾田市野友地区で調整池工が進んでいる。

 一方で地質調査の結果、全区間にわたり想定以上の軟弱層があり、追加対策が必要となった。切土法面の湧水や盛土法面での雨水による浸食も確認され、法面処理工の追加変更も必要で、さらに関係機関協議により調整池の整備も必要になっている。

 これらにより事業費は約400億円増額。

 増額内容は、軟弱地盤対策として約288億円。内訳は①円弧すべり対策の深層混合処理工法の追加で約115億円②構造物設置箇所の沈下対策として深層混合処理工法の追加、函渠断面の変更で約55億円③切土法面の湧水や盛土法面の雨水浸食対策で約70億円④当初想定の支持層の下に軟弱層があり、下部工(18橋)の杭長の変更で約48億円。見直しの結果、深層混合処理工法量は当初の約7万8000立方mから約93万立方mへと大幅に増加する。

 また潮来IC~(仮)北浦IC間で関係機関協議に伴う増加に約112億円。内訳は①渡河橋梁について、近年の集中豪雨を踏まえた河川管理者(県)による河川改修計画の見直しにより、河川幅員が拡大したことによる橋長の変更(7橋、195m増加)で約35億円②道路整備による流出増加分を一時貯留する調整池整備(20カ所、貯留量約7万立方m)で約77億円。残る区間も協議などが整った段階で事業費の影響を確定する。

 そのほかの事業計画の見直しでは、事業によって分断される市道の横断箇所を集約し、横断函渠11カ所、跨道橋10カ所を見直す。

 これらを含めた工事については、用地の未引渡地や未買収箇所が点在しており、着工できない箇所が全体的に多く残っているため、今回の増額内容も含めて引き続き精査し、用地取得状況も見ながら推進していく。

 コスト縮減への取り組みでは、橋梁の架橋位置に軟弱な粘性土層が堆積しているため、橋台背面の盛土が通常盛土の場合、逆T式橋台に加え土圧軽減工法も併用。杭本数を少なくする。

 休憩施設の設置については、現在の休憩施設の施設間距離が東関道の佐原PAから北関道の友部SAまでの約63㎞と長く、事業区間内に新たに休憩施設を整備する必要があるため、設置に向けて関係機関や地元自治体と調整を進めている。

 委員会ではそのほか、県からの事業に対する意見として、事業の継続に異議はなく、24年度の工事完成を目指し進捗を図ること、徹底したコスト縮減を図ることなどを踏まえて一日も早い全線開通に努めることが要望されていることも報告した。

 費用対効果(B/C)については、事業全体では0・9、残事業で1・5となっているが、費用便益分析に含まれない効果(輸送時間短縮による生産性向上、観光客増加、時間信頼性の向上など)を確認していることも説明した。

 以上のことから関東整備局では事業について、首都圏や北関東などを結ぶ広域的なネットワークの形成、重要港湾や茨城空港へのアクセス向上、災害時のリダンダンシー(交通ネットワークの多重化)の観点から、必要性や重要性は高く、早期の事業効果発現を図るため事業の継続が適切と説明。了承された。

    ◇

 東関道水戸線(潮来~鉾田)の残事業費の内訳は次のとおり。工事費は土木工事標準歩掛および近接事業箇所の実績単価を使用。用地補償費は近接事業箇所の直近実績単価を使用。

 【工事費554億1600万円】

 ◆改良費313億4700万円=土工(345万4937立方m)61億5900万円、軟弱地盤改良工事(1式)53億400万円、法面工(55万2561㎡)62億4000万円、擁壁工(1式)19億9500万円、管渠工(2482m)3億8500万円、調整池(1式)45億6200万円、函渠工(898m)41億4500万円、排水工(4万2102m)17億9000万円、中央分離帯工(1式)6億5500万円、雑工(1式)1億1200万円

 ◆橋梁費164億5700万円=100m以上(1式)79億8000万円、100m未満(1式)84億7700万円

 ◆IC・JCT費32億200万円=IC(3カ所)

 ◆舗装費34億7100万円=車道舗装(43万2849㎡)

 ◆付帯施設費9億3900万円=交通管理施設工(1式)

 【用地および補償費19億1000万円】

 ◆用地費5億1100万円=宅地(3300㎡)5300万円、田畑(4万2197㎡)2億9400万円、山林・原野(3万7693㎡)1億6400万円

 ◆補償費13億9900万円=補償(1式)

 【間接経費77億2100万円】

 ◆地質調査、測量、設計費用および予備費


【図=工法変更位置図】

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