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長野県建設部

働き方改革 避けて通れない/総合評価加点で推進促す/田下昌志建設部長インタビュー

2020/05/22 長野建設新聞

 2020年度の県建設部当初予算は1584億円。令和元年東日本台風の災害復旧や国土強靱化のための3か年緊急対策により、近年にない規模に膨らんだ。舵取りを担う田下昌志建設部長にかかる期待も大きい。新型コロナウイルス感染症という不測の事態はあるが「災害復旧は一刻も早く行わなければいけない。県民生活を守る緊急対策もしかり」と着実な推進へ決意を示し、働き方改革の一環であるICT活用工事や週休2日工事の実績を総合評価落札方式で加点する取り組みについても計画どおり20年度中に実施する考えを示した。


 ―抱負をお聞かせください

 今まで立ち上がってきた事業を、直轄も含めてしっかりと推進していきたい。昨年の災害でも明らかだが近年気候変動は激しく、これに対応する防災・減災は待ったなしの状況。災害時、企業の皆さんには昼夜を問わず懸命に取り組んでいただいた。今後も県民の目線で安全・安心を実感できるよう、業界と意見交換しながら進めていきたい。

 また、自分の組織を褒めることは気恥ずかしいが、建設部の職員はそれぞれが場面に応じて判断し自ら動くことができるようになってきている。今後も風通しを良くし、言いたいことを言い合い、若者の提案も取り上げながら良いものを造っていきたい。


 ―東日本台風災害の復旧の見通しは

 災害復旧事業の大半は20年度中に発注し、21年度までに完了させる。再度災害を防止するため改良復旧、例えば遊水池の整備や堤防のかさ上げといったものは、おおむね5年間で進めていく。

 事業量の増加に伴う不調・不落は上小地域や北信地域で若干発生しているが、企業の皆さんの協力により今のところおおむね計画どおり進んでいる。


 ―3か年緊急対策は最終年度を迎えました

 国から大きな予算を付けてもらっており、着実に執行していきたい。業界が対策期間終了後の事業量の減少を危惧していることは承知している。3年間で集中的に行ってきたとはいえ、整備すべき箇所はまだまだある。橋梁等の老朽化対策、長寿命化も必要。

また、新たな事業や夢のあるプロジェクトを継続していくことで、地域の暮らしが良くなり、若い人たちが長野県に住みたいと思えるようにもなる。予算に大きな変動があると企業の皆さんも建設産業に進もうと考えている若者も不安になる。緊急対策後の予算確保については、知事からも国へ要望しており、建設部としても機会を捉え訴えていく。


 ―新型コロナの影響は

 連休明けの時点で一時中止しているのは工事と委託で各1件。資機材の調達が困難となったことと在宅勤務が理由と聞いている。企業の皆さんは対策をしっかりやっていただいていると思う。現場での感染事例はなく、発注は計画どおり進めている。


 ―働き方改革の取り組みも急務です

 週休2日の確保や生産性向上を図るためのICT活用は避けて通れない、進めなければいけない課題。ただし、週休2日については災害復旧という特殊事情があり、どの程度実現できるか。発注者側としては十分な作業期間の確保やワンデーレスポンスの徹底などによる「ウィークリースタンス」を徹底しなければいけない。

 また、BIM/CIMについては19年度に「信州BIM/CIM推進協議会」を発足し、20年度はモデル事業の実施を予定している。やりながら課題を探り、着実に進めていきたい。


 ―週休2日とICT活用の実績を総合評価で加点することを予定しています

 業界からは時期尚早との意見もいただいているが、やらなければいけないという方向性は決まっている。20年度中にある程度の件数を実施し、それを刺激として全体の取り組み推進につながればと考えている。


 【あとがき】「建設業は県民に喜ばれる、やりがいのある仕事」。五輪大橋の建設や県事業として初の透過型砂防堰堤建設など、これまで担った事業を回顧する表情に、社会資本整備に携わってきた誇りと充実が感じられた。趣味の昆虫は冊子の監修も務めるほど。「庭に蝶が好む草木を植えている。成虫が好む蜜と、幼虫が食べる植物。環境を整備すれば蝶はやってくる」。担い手確保・育成が急務となる中、官民の良好な信頼関係と事業量があるこの好機に、選ばれる産業への環境整備が推進されることを期待したい。


 (たした・まさし) 1962年1月18日生まれ、58歳。木曽福島町(現木曽町)出身、長野市在住。85年京都大学農学部卒。農学博士。建設政策課技術管理室長、道路管理課長、砂防課長、建設技監を経て、2020年4月より現職。

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