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渡良瀬川流下向上計画評価検討委、足利の中橋架け替えへ、堤防嵩上げが妥当、事業費107億

2020/07/30 日本工業経済新聞(栃木版)

 渡良瀬川中流部の流下能力向上対策における計画段階評価検討委員会(委員長・清水義彦群馬大大学院理工学府教授、5人)が29日、国土交通省渡良瀬川河川事務所で開かれた。利根川水系1級河川渡良瀬川に架かる主要地方道足利千代田線中橋(足利市通2丁目~南町)は架け替えと堤防嵩上げ案が妥当と判断。整備事業費は約107億円と試算した。清水委員長は「地元足利市と地域住民との対話の場を設け、一体となって議論を深めてほしい」と付帯意見を述べた。

 計画段階評価では国が複数の対策案を提示。概略評価では①中橋架け替えと堤防嵩上げ②中橋上下流の河道掘削③上流部に位置する草木ダム(群馬県)の洪水調整能力増強-が2次選定に残った。3案の中からコスト面が最も抑えられる①案に絞り込んだ。

 ①案の50年間の維持管理コストは約13億円。コスト面以外の評価項目でも他の2案を上回り、県は国の意見照会に異議なしと回答。ただし昨年の東日本台風では県管理区間の支川で溢水被害が発生した状況を踏まえ、一層の事業推進に特段の配慮を求めた。

 中橋を新橋に架け替え、堤防高が不足している架橋地点の堤防嵩上げが約1万立方m。用地補償約415平方m、現道擦り付け(橋長117m、盛土延長114m)、JR両毛線対策は跨道橋延長25m。概略設計は八千代エンジニヤリング(東京都)が担当中。

 既存の中橋は橋長295・1m、幅員11m。1936年に架設されたモスグリーンの3連アーチが特徴的な長大橋。桁下が堤防より低く、国の重要防災個所に指定されている。国、県、市の3者が「中橋整備検討委員会」を組織し、対策の協議を重ねている。

 中橋は渡良瀬川を挟んで南北の市街地を結ぶ。現況はPC単純下桁橋・鋼単純アート桁橋。下部工は逆T式橋台、ラーメン式橋脚。現在地での架け替えを前提に、1976年に都市計画決定済み。幅員25m以内で橋梁や取り付け道路の配置を検討している。

 中橋は前後の堤防に比べ左岸側で約3m、右岸側で約2m低い。足利市は渡瀬川を挟んで市街地を形成。両市街地を渡良瀬橋、中橋、田中橋の3橋が結ぶ。左岸側には市役所、JR両毛線足利駅があり、右岸側は東武伊勢崎線足利市駅、渡良瀬川河川事務所が近接する。

 中橋付近で堤防が決壊した場合、市街地の多くが浸水し最深部は3mに及ぶと推定。100年に1度の洪水予測では浸水面積4600ha、被災人口3万8000人、浸水世帯1万6000世帯、被害額3000億円のシミュレーション結果が出ている。

 現況の流下能力は毎秒1500立方m、河川整備計画の河道目標流量の毎秒3300立方mの半分に満たない。東日本台風では桁下まで残り1・2mまで水位が上昇。市は2日間にわたり中橋を通行止めにし、両岸への大型土のう設置で浸水被害に備えた。

 南側は多くの商業施設や住宅地、北側は史跡足利学校、鑁阿寺といった文化遺産、住宅や商店が立ち並ぶ。朝夕の通勤通学時間帯はJR両毛線の運行に遮断され、慢性的な交通渋滞が発生。通学路の役割を担う片側歩道は歩行者と自転車が錯綜する危険な状況。

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