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ぶどうの丘にワインミュージアム構想 鈴木幹夫甲州市長インタビュー

2020/08/01 山梨建設新聞

 2月の甲州市長選で初当選を果たした鈴木幹夫市長。市の改革に向け動きだそうとした矢先、新型コロナウイルスの感染拡大で、その対応に追われた。市に必要な施策を練るため、来年度から有識者を交えた戦略会議を始動させる。かねてから経営難が指摘されていた「勝沼ぶどうの丘」については、県による活用話も出てきた。このほか塩山駅前のホテル建設など、建設関連の話を中心に聞いた。


--市長職はいかがですか

 5期県議をさせてもらったが、やはりそれとは違うなと感じている。県議会では、意見をすることはあるにせよ、個人で判断するということはない。みんなで話し合って決めたことを知事に進言していたが、今度は逆。市長となれば誰も責任を取ってはくれない。私が責任を取る立場だ。コロナ対策などをやっていくうちに、時間は掛かったが徐々に自分の立場を自覚した。3万人以上の市民生活が自分の肩に掛かっていると思っている。


--コロナ感染症の影響で「勝沼ぶどうの丘」の経営が心配されます

 実際のところ経営状況があまり良くない中、コロナ禍で営業がますます厳しくなっている。以前から民間のホテル企業など、実際いくつか、ぶどうの丘に興味を持っているところはある。ただ私は公約に市直営でやっていくことを掲げており、今の段階でそうした話を取り入れることはない。だが、このままコロナが続くようだと経営自体が立ちゆかなくなる。東京からのお客様が7割程度を占めていたが、それが来られなくなったのが痛い。国の「GoToトラベル」にも参加する予定だったが、東京発着の旅行が対象から外れたため見送った。ここでマルシェ(市場)をやる計画もあったが、9月ごろまで先延ばしすることにした。


--ぶどうの丘を使いたいという企業や団体を受け入れる可能性は

 実は県が甲州市にワインのミュージアムをつくるという話が出てきている。山梨県の中でもワインの歴史があるといえば甲州市。ここに全国のワインを紹介したり、試飲や食事ができるような施設をと考えているようだ。ただ、県としても新しい建物を建てることは考えていない。市内の既存の施設で800~1200㎡を確保するとなると、ぶどうの丘ということになる。だがぶどうの丘は旧勝沼町のシンボル。合併したとはいえ、地元の方は施設への思い入れがあると思うから慎重に検討していく。ただ、県や甲州市、ワイン業界、地域すべてにいい話ということになれば、賛同する方向で考えたい。県も「ワイン県」を宣言したこともあり、何か動くことを考えているのかもしれない。


--塩山駅前にホテル建設の話がありますが

 東横インについては、大月市に建てた後、甲州市にも出店してもらう方向で話が進んでいたが、ホテル側がコロナの対策に力を入れなければならなくなったため、協議が止まっている。コロナが終息に向かえば、協議を再開したい。200床くらいで考えているようだ。このほか田辺酒造の敷地についても、東横インが持っており、いろいろな活用案が出ているが、やはりコロナで止まっている。また勝沼にはシャトレーゼがホテルを建てる計画があると聞いている。


--市の課題解決に向けたビジョンをお聞かせ下さい

 甲州市の改革に向け、県内外の有識者15人程度で戦略会議を創設しようと思っている。10月ごろまでに(会議の概要を)策定し、12月市議会でお示しできるようにしたい。甲州市は合併は進めてきたが、改革されていないものがたくさんある。一般財政から災害対策、子育て支援、老人介護、障害者福祉など。時間を掛けて一つひとつ取り組んでいく。また、その戦略会議と同時に、20~40代くらいの方を中心とした、これからの甲州市について考える会もつくり、そこでの意見を上げてもらうようにしたい。


--市の財政状況は

 甲州市は財政健全化に向け、2060年までに財政支出を223億円減額することが求められている。これは毎年7億4000万円ずつ減らしていく計算。それはとても無理だが、できるだけ近づけるよう学校の統廃合だけでなく、指定管理となっている施設の見直しや、さまざまな無駄を、ここで出していかなければならない。


--では新規事業も当面抑制することになりますか

 建設事業については、大きなプロジェクトを始動させることは控えたい。塩山駅前の整備にしても、今やっている工事の後に考えていた計画があったが、それはストップした。ただ災害対策や生活道に密着したものは、今後も力を入れていかなければならない。また西関東連絡道路は現在岩手ランプまで開通しているが、山梨市の市長や県議会議員と一緒に、知事のところに(その先の整備促進を)要請に行く。県の財政も大変だが、岩出橋から国道411号までは通すべきだ。決して短期的に考えているわけではないが、県にお願いはしていこうと思っている。

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