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新松戸造園に「えるぼし」/県内建設業で初認定/女性活躍推進で千葉労働局/通知書交付式

2020/11/24 日刊建設タイムズ

 県内建設業で初めてとなる「えるぼし認定通知書交付式」が19日、千葉市内の千葉第2地方合同庁舎で行われ、友藤智朗・千葉労働局長から㈱新松戸造園の松戸克浩・代表取締役に、認定通知書が手渡された。同社は、女性活躍推進法が施行される以前から女性の就業問題に着眼し、職場環境の改善や育成プログラムの見直し等に着手。千葉労働局によると、今回の認定は「未経験からの挑戦を後押しし、働きたい女性がより活躍できるようサポートするとともに、後進の育成、人材確保にも繋がったことを評価した」としている。


 初申請で最高位の3ツ星


 「えるぼし」とは、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づく認定制度。一定の基準を満たし、女性活躍推進に関する状況などが優良な企業に発行される認定マークで、認定は厚生労働大臣より送られる。

 5つの評価項目を満たす数に応じて3段階あり、えるぼし認定マークは、段階によって1ツ星から3ツ星までの3つに分類。新松戸造園は初めての申請で、最高位の「3ツ星」を獲得した。

 えるぼし認定を受けた事業主は、厚生労働大臣が定める認定マークを商品や広告などに付すことにより、女性活躍推進事業主であることをPR。優秀な人材の確保や企業イメージの向上等に繋がることが期待できる。

 女性活躍推進法は2016年4月1日に施行。千葉労働局管内では、10月末現在で510社が行動計画を届け出。そのうち、新松戸造園が10月1日付で、県内20社目の「えるぼし認定企業」に決定した。

 この日、千葉労働局長室で行われた「えるぼし認定通知書交付式」には、新松戸造園から松戸社長をはじめ、松戸幸子さん((一社)日本造園建設業協会女性活躍推進部会員)、廣川真知子さん(緑化事業部課長)、土屋絵里さん(企画部)、竹内美咲さん(緑化事業部)の5人。千葉労働局からは、友藤局長をはじめ坂根登・総務部長、荒井直子・雇用環境・均等室長、工藤仁美・雇用環境改善・均等推進監理官らが同席。

 交付式に引き続いて懇談会が行われ、主に、友藤局長が松戸社長や社員に対して質問を投げかけるなど、次のようなやりとりが行われた。


 現場女子活躍の母体づくり


 ★友藤局長★ 「えるぼし認定」を取得しようと思ったきっかけは。

 ★松戸社長★ 全国で約12万箇所ある公園のすべてを統括する公園財団も、この認定を受けている。それが「えるぼし認定」という言葉を知るきっかけとなった。我が社としても「女性が活躍できる造園業界づくりを」ということで、以前から市役所のポスターや電車内広告をはじめ、今で言うホームページやSNSを活用して取り組んでいた。

 ★友藤局長★ 女性が活躍できるための具体的な取り組みは。

 ★松戸社長★ 地域に密着して、自然を中心に活動するという持続可能なプロジェクトを進める中で、やはり「女性の力が必要だな」と単純に思っていた。10年ほど前は、現場の女子というものが、中々思うように雇用できなった。今は、学校の授業では男女比がほぼ同じ割合で造園関係を学んでいる。しかし、建設系の就職先が非常に少なかったことから、何とか「現場女子が活躍できる母体づくりから始めた」というのがきっかけ。会社内の更衣室や休憩所、女性用トイレなどの基盤づくりから取り組んだ。

 ★友藤局長★ 社内に資格取得を推奨するような制度はあるのか。

 ★松戸社長★ 費用面も会社で全額を負担している。

 ★友藤局長★ 実際に資格を取得された方は。

 ★廣川緑化事業部課長★ 1級造園技能士や街路樹剪定士のほか、色々な資格を獲らせて頂いた。社長本人から、剪定の仕方や土壌の植栽基盤などを教わり、大分自信をつけてから現場に送り出してもらったことは、大変心強かった。

 ★友藤局長★ 廣川さんは、元々造園を目指されていたのか。

 ★廣川緑化事業部課長★ 前職は栄養士の仕事をしていた。昔から「花とガーデニング」が好きで、造園に関して憧れがあったため、勇気を出して転職した。

 ★友藤局長★ 資格を取得して、見る目は変わったか。

 ★廣川緑化事業部課長★ 自信を持って現場に出られるようになったことで、周囲の人への心づかいも変わったと思う。現在は2か所の公園のマネージャーを担当している。


 CCIちば出張授業のロールモデル


 ★松戸社長★ 県県土整備部の建設・不動産業課が事務局を務めるCCIちば(千葉県魅力ある建設事業推進協議会)において、小中学校の出張授業の動画のロールモデルとなり、造園の魅力を言葉で発信している。先ほどの1級造園技能士の資格取得は、民間企業で働く造園女子としては、県内初の快挙だった。

 ★友藤局長★ えるぼし認定も1ツ星から3ツ星まであるが、貴社は「3ツ星」を獲られた。それまでには、大変なご苦労があったと思うが。

 ★土屋社員★ 3ツ星を獲るには、男性社員の理解を得なければ達成できなかった。まずは「えるぼし」という制度を全員に周知し、社員一丸となって取り組んだことが、大きなポイントだと思う。

 ★友藤局長★ 女性を活用することによる経営面での会社のメリットは。

 ★松戸社長★ 造園建設業は植物(生きもの)を扱う建設業であることをPRしていく中で、男性の扱い方と、女性の繊細な扱い方には大きな差がある。建設業の場合は、設計された数量を図面通りに植栽(施工)すれば良しとしてきたが、生の声で視点を変えて取り入れられたことが、会社としては大きなメリットとなった。

 ★友藤局長★ 今後の目指すところは。

 ★松戸社長★ 約30人の弊社社員のうち、女性は8人を占めるが、仮にこの女性8人で会社を作ったとしたら、残りの男性が顔負けなのは一目瞭然。女性一人ひとりの優秀さは、私が一番、身を持って感じている。

 ★友藤局長★ 今回取得された「えるぼし」マークは、ハローワークの求人の際や学校の面接会等々に使うことで広くアピールされ、さらに女性を採用して頂けるとありがたい。公共事業の入札の際にも、わずかではあるが加点もされるので、私どもも「えるぼし」をPRしていきたい。



「えるぼし認定」に際して女性4人のコメント


 女性という個性が活かせる職業へと 松戸幸子(社員(一社)日本造園建設業協会女性活躍推進部会員)

 千葉県内の数ある建設業の中で、弊社が初の「えるぼし認定」となったことに驚きを覚えると同時に、大変光栄なことと身が引き締まる思いです。

 女性が活躍できる場を整えるだけではなく、働きやすさや居心地のよさを改善することは、男性社員の働き方の見直しにも繋がることと考えております。

 「造園」は、様々な経験が仕事に活かせる職種です。女性という個性を活かしていただけるよう、努めて参りたいと思います。


 特別視でなく誰もが働きやすい職場


 弊社も所属している(一社)千葉県造園緑化協会には140社、(一社)日本造園建設業協会(日造協)には、全国47都道府県に約900社の「造園建設業」の仲間がいます。ほとんどが小規模の事業所ですが、女性の活躍を前向きにサポートしている会社も多く、刺激を受けています。

 私は、日造協で女性活躍推進部会に所属していますが、女性が建設業で働くためには、まだまだ多くの課題があると感じています。事業所や現場施設の改善に費用がかかることもそうですが、「社内に女性一人」という会社もあり、悩みを共有できないなど、一事業者だけでは解決できないこともあります。

 また、男女問わず現場の方からは、工期の平準化や書類の簡素化などを望む声も多く、行政の方々との連携が必要であると感じました。

 女性を特別視するのではなく、女性が働きやすいと感じる職場は「誰もが働きやすい職場である」と思います。建設業で唯一、生き物を扱う職種の「造園業」の魅力を広めるとともに、「女性という個性が活かせる職業である」ということを、広く発信していきたいと思います。



 会社全体で女性を/受け入れる懐深さ 廣川真知子(緑化事業部課長)

 「建設業としては県内初の認定」を頂けたとのことで、一翼を担うことができて、とても光栄に思っております。社長をはじめ、社長の奥様、同僚の男性たち、会社全体が女性を受け入れる懐の深さがあるから、このような認定を頂けたものと思っております。

 今後の女性採用や、女性役職者の育成が進んでいくように、私自身が女性の働きやすさを体現していきたいと思います。また、自分自身のスキルアップ、そして、後輩へのお手本となり、指導できる人材になることが目標です。


 自身で女性の働きやすさを体現する


 現場での女性の働きやすさは「周りの理解があるから」ということに尽きます。力仕事では男性に敵わないところはありますし、その分、負担をかけてしまっているところは否めません。

 しかし「女性でもできること」「女性のほうが向いていること」「みんなが苦手とすること」など、できることは何でもしますし、何でも受け止める「柔らかい心と頑張り」があれば、自然と周囲の人たちも理解してくれて、働きやすい環境になっていくのではないかと思います。

 女性ならではの感性」が生かせる

 「女性が活躍できる」と感じたことは、樹木の剪定だったり、色彩の組み合わせだったり、レンガ等の敷設などの細かい作業も「女性ならではの感性」が生かせるところだと思います。公園管理の仕事では、来園者と話す機会も多く、女性のほうが話しやすいと感じる方も多くいらっしゃると思います。

 機械を使うことの多い造園業ですが、「機械の運転が得意」という女性も結構いますよ。



 男性社員と協力継続/認定からがスタート 土屋絵里(企画部)

 公園財団が「えるぼし認定」を受けたことを社長から聞き、えるぼし認定制度について知りました。弊社は、女性活躍推進法の施行前から女性の就業問題に着眼しており、様々な取り組みを行ってきたので、それを「目に見えたカタチで評価して頂いた」というのは、大変光栄に思います。造園建設業としては「県内初の認定」を頂けたことは嬉しい反面、良い意味でプレッシャーを感じております。

 今回の認定は、男性社員の協力なしでは得ることができなかったので、今後も協力し合い、継続して働きやすい環境づくりに社員一丸となって努めて参ります。


 認定を自信と誇り女性入職イメージ


 「認定を受けてからがスタート」だと感じております。まだまだ女性の入職が少ない業界ですので、えるぼし認定を誇りに、自信を持って、そのイメージを変えていきたいと思っています。

 ホームページやSNS等での女性活躍についての発信は、今後も継続していきたいです。弊社のPRだけではなく、業界としてのPRに繋がれば良いなと思います。



 『現場女子』増加に期待 竹内美咲(緑化事業部)

 「造園業=男性職」というイメージが強い中で認定を頂けたことは、大変嬉しく思います。「造園業でも女性が活躍できる」ということや「女性を積極的に雇用している企業がある」ということのアピールにも繋がると思います。

 認定維持に向けた今後の目標としては、「労働環境が整っていること」や「女性でも働きやすい職場であること」を、SNS等を活用して発信していきたいです。

 「まだまだ現場で活躍する女性は少ない」のが現状ですが、これを機に『現場女子』が増えていくと嬉しいです。

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