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県 林業大学校を創設、林業センターに2棟整備、新年度に設計、22~23年度建設

2021/01/21 日本工業経済新聞(栃木版)

 県林業木材産業課は20日、県林業大学校(仮称)を宇都宮市下小池町の県林業センター敷地内に創設すると発表した。研修・研究棟は木造2階建て、屋内実習棟は木造平屋建て。新たな座学と実習の研修施設を建設し、林業の人材確保や育成システムの中核拠点とする。2021年度に実施設計を委託し、22年度に建設工事に着手。2カ年間で整備を進め、24年度の開校を目指す。全天候型の施設や実習フィールドを確保し、林業の成長産業化を後押しする。

 本館南側への建設を予定。21年度は敷地の地質調査や測量を委託。本館は築50年以上が経過し、老朽化が著しい。新築後は本館の解体撤去を視野に入れる。ハード整備と並行し、カリキュラム作成、講師確保、施設内容周知、受講者募集要領や選考準備を進める。

 県林業大学校の設置は、県林業人材確保・育成方針の中で明示された。基本方針は生産性向上につながる林業経営への転換、新たな林業経営に対応できる知識や技能を有する多様な人材の確保と育成。新規就業者を確保し、雇用環境改善による定着が狙い。

 生産性の高い林業経営は①林業の成長産業化(経営規模の拡大・効率化、新技術の積極的な導入)②森林資源の循環利用と適正管理(再造林・管理の徹底)③労働安全の確保(安全教育の徹底)。「林業人材確保・育成システム」を構築し、就業支援を強化する。

 県林業大学校の就業前初級研修は1年制の長期研修のほか、転職者向けの単科研修を新設。就業後研修は習熟度や役割に応じ、現場作業者(初級3年未満、中級3年以上、上級5年以上)、現場指導者(リーダー)養成、林業経営者(経営力)と研修内容を充実する。

 就業前初級研修は高校卒業以上の林業事業体への就業を希望する人(15~20人程度)を1年間1200時間以上、単科研修は転職希望者(10人程度)を2週間2回程度、就業後の現場作業者、現場指導者、林業経営者は各10人程度を定員とする。

 育成する人材像は現場実践力を有し安全作業を着実に担える人材、専門的な技術を有し森林の適正な管理や経営を担える人材。演習フィールドは鹿沼市入粟野の「21世紀林業創造の森」の県有林を活用。インターンシップは林業経営体の協力を得る。

 人材は県教育委員会と連携し、農業高校をはじめ職業系専門学科を中心に幅広く募集。就業マッチングは県林業労働力確保支援センターがサポート。林業事業者らは講師や機械の提供で協力する。林業関係団体~川上~川中~川下~その他(メーカー)の参画を得る。

 昨年末に「とちぎの林業人材確保・育成のあり方に関する検討会」(座長・有賀一広宇都宮大農学部准教授)が福田富一知事に答申する意見書をまとめた。人材育成拠点は木造とし、県内各地からのアクセスが容易な場所を選定すべきと提言していた。

 主な提言内容では人材育成施設は1年を通じた長期研修に加え、年に複数回の短期研修を計画的に実施。ICT技術や労働安全に優れた施業方法を習得できるよう必要な設備を完備。最先端の情報が得られるよう研究機関やメーカーと連携。運営は県に委ねる。

 幅広い知識、反復練習による確実な技術の習得、施業に必要な資格取得と就業をスムーズにするインターンシップを導入。研修生が県内に就職し、県域全体での均等な就業につながるよう育成だけでなく就業コーディネートを充実。林業経営体とは関係性を強化する。

 県内の民有人工針葉樹林の7割が利用期に移行し、木材利用促進と森林の若返りが必要。所有者や境界が不明な森林が多く、林業の労働力不足が課題。川中の素材生産量は74%にとどまり、一部は県外産を使用。高性能機械やICTによる労働生産性の向上が課題。

 林業従事者は660人前後で推移し、65歳以上の高齢者が増加傾向。新規就業者は年間40人程度で推移し、就業後3年目までの離職者が4割程度と他産業に比べて高い。給与水準は全産業比で100万円程度低いにもかかわらず、災害発生率は約10倍と高率。

 人材定着には雇用環境の整備や労働安全対策強化が必須。就業前に森林・林業に関する全般的な知識や救急救命応急法、刈払機やチェーンソー操作を身に着け、即戦力となる人材を養成。高校生、専修学校、大学との連携により多種多様な人材を集める。

 2011年以前、国内の林業人材育成研修機関は6校のみ。12年度の京都府立林業大学校の設立をきっかけに全国的に同様の施設設置が相次ぎ、今年度までに18校が設置されている。1年制研修型が多く、就業前の長期研修を通じた人材育成に効果を発揮する。

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