記事

事業者
栃木県宇都宮市

LRT事業、宇都宮市、芳賀町で226億増、市は191億増 開業1年延期

2021/01/26 日本工業経済新聞(栃木版)

 佐藤栄一宇都宮市長は25日、芳賀町と進めるJR宇都宮駅東側の次世代型路面電車(LRT)整備事業の進捗状況を臨時記者会見で説明した。両市町の支出額は226億円(市191億円、町35億円)増え、総額684億円(市603億円、町81億円)に上ることを明らかにした。工事の20%が未着手のため、開業予定は2023年3月に1年延期する。事業費の2分の1は国庫補助金を充当する。

 優先整備区間は駅東口から芳賀・高根沢工業団地までの14・6㎞(市12・1㎞、町2・5㎞)。18年6月に着工し、停留場19カ所(市15カ所、町4カ所)、他の交通手段から乗り換えるトランジットセンター5カ所(市4カ所、町1カ所)を整備する。

 計画当初の概算事業費は458億円(市412億円、町46億円)と試算。複数工種に着工し、一定の実績を踏まえた上で事業費を精査。現地施工条件への対応、安全性や利便性の向上、建設需要増加による社会情勢の変化、地下埋設物の移設が事業費を押し上げた。

 当初の概算事業費による市増額分は218億円、このうち軌道構造仕様見直しによる減額分が27億円。差し引きで191億円を増額し、市の事業費総額は603億円となる。市事業の用地取得率は95%で、未取得用地の取得に1年を要する見込み。

 増額分は現地施工条件への対応102億円、安全性や利便性の向上46億円、建設需要増加による社会情勢の変化35億円、地下埋設物の移設費35億円。軌道下の地下埋設物の移設は計上しておらず、施設管理者との協議で軌道敷の外側への移設が必要になった。

 施工条件では鬼怒川周辺の野高谷地区の高架橋や車両基地の構造物を支える杭基礎の長さの変更や地盤改良の深層化に47億円増。買収面積や補償物件が31億円増。交差点改良部交通処理強化に17億円増。ケーブル延長と埋設深の変更で17億円増。

 安全対策は歩道バリアフリー化、停留場監視カメラ設置、電車近接表示器設置に23億円増。車両仕様変更(バリアフリー、カメラ増設、独自性デザイン)で14億円増。通信機器デジタル化に5億円増。運賃収受システム採用とICカードシステム導入に4億円増。

 建設需要の増加は積算基準改定による現場管理費や物価上昇に伴う労務資材価格の変化で26億円増。車両基地の盛土や擁壁の追加が9億円増。豪雨災害の頻発化を考慮し、L型擁壁の設置とともに車両基地の地盤を周囲より1~2m程度嵩上げする。

 地下埋設物移設は35億円が皆増。当初は軌道下の埋設物の移設は不要と判断。施設管理者と協議を重ねる中、工事の際に支障となる地下埋設物が多数判明。軌道敷の外側に移設した方が施設の管理が容易になるため、道路法における費用負担を新たに算定した。

 軌道運営事業者の宇都宮ライトレールは開業前経費が5億円増加。22年度に市82・88%、町17・12%を支出する。資本金は現行の4億9000万円を10億円に増資する。各株主と調整を図り、21年度に増資予定。市と町で51%を確保する。

 佐藤市長は「早期開業を期待する皆さんにお詫びしたい。未取得の事業用地取得に全力を挙げ、契約ペースを上げていく。開業の1年延期は死守し、延期時期を最小限に食い止めたい。市民への丁寧な説明を心掛け、何としても事業を前進させる」と語った。

紙媒体での情報収集をご希望の方は
建設新聞を御覧ください。

建設新聞はこちら