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2市で試行の実績、県内の快適トイレ事情

2021/02/02 新潟建設新聞

 国土交通省が男女ともに快適に利用できる「快適トイレ」の標準仕様を定めてから5年。国発注工事は設置が原則となり、上限額引き上げの改定もあった。県内でも試行や、検討を進める動き見られる。これまで後回しになりがちだったトイレ事情が大きく変わってきた。

 県内の状況をみると、快適トイレの実施要領を設けているのは新潟県、新潟市、糸魚川市。

 県は当初設計額7000万円以上の工事、または250万円~7000万円未満の工事で受注者が希望した場合を対象とする。2017年1月から試行を開始。土木部発注の実績は本年度9月までで延べ585件。受注者希望型を含む総数で、自主的に設置した工事や現場環境改善費で設置したものは含まれない。

 新潟市は当初設計額1億円以上の工事、または女性技術者の配置を求める工事が対象。試行初年度の18年度は対象工事46件のうち実施25件、19年度は対象69件のうち実施54件、対象工事48件で、実施28件、協議中(契約前含む)15件で推移している。

 糸魚川市は本年度から試行をスタートした。予定価格130万円以上で市長が指定する工事が対象で、受注者希望型。本年度は5件の対象工事のうち1件の実績があった。関連団体からの要望を受けて導入した。

 また、燕市では市議会12月定例会において、一般質問で俎(そ)上に載った。鈴木力市長は「試行を目指して前向きに検討する」と答弁している。

 国の定める快適トイレの標準仕様は▽洋式便座▽水洗またはし尿処理装置▽匂いの逆流防止機能▽容易に開かないロック機能-などを備えるもの。適合トイレの認定マーク制度も設け、星の数で評価している。契約後に設計変更し、実際の設置料と従来型トイレ(1万円/基・月)との差額を計上。上限は5万1000円/基・月。当初4万5000円だったが、引き上げを行った。男女別で各1基ずつ2基を上限とする。なお、新潟県、新潟市、糸魚川市は差額4万5000円/基・月を上限に設定している。

 県内外で仮設トイレのレンタルを手掛けるエムテク(解良己明社長・新潟市西区)は、快適トイレの普及を実感しているという。同社では快適トイレの中でも特に環境配慮型のバイオトイレに力を入れる。バイオトイレはおがくずを利用したものが一般的だが、同社の扱うトイレは水を常時循環させることで微生物の活性化を促し、汚物を分解する。処理能力は一般的な簡易水洗仮設トイレの5倍ほど。設置費用は割高ではあるものの、自己処理型でくみ取り費用を抑えて環境負荷が少なく匂いもないため、リピーター率が高い。同社保有のトイレの中でも全体の3割ほどを占めるようになってきた。災害現場での実績が評価され、複数の自治体と災害時の協定を結んでいる。解良社長は仮設トイレ全体について「課題は価格。価格の一人歩きではなく、付加価値を備えて様々なユーザーの希望に応えたい」としている。

 レンタルが中心の仮設トイレ。国は、快適トイレが増えることで、災害時の仮設トイレの快適化という副次的効果も期待する。新潟県建設業協会女性部会が行ったアンケートでも、特に女性従事者からは歓迎の声が大きい。今後、各地で実施の動きが活発化しそうだ。

【写真=手洗い付きのハウス型快適トイレ「ウォータス」(エムテク提供)

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