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栃木県下野市

下野市、跡地利用にPFI可能性調査、事業者提案で魅力を向上、大松山プールを廃止

2021/02/05 日本工業経済新聞(栃木版)

 下野市教育委員会は、大松山運動公園プールを廃止する。廃止後の跡地利活用は、大松山運動公園全体の運営方法を含め十二分に検証する必要性があると判断。検討方法は民間活力導入に向け、PFI可能性調査を実施。事業者提案ヒアリングを基に、まちづくりの拠点となるよう跡地利活用の可能性を多角的に分析。スポーツ施設に限定せず、多様なスキルやノウハウを持つ民間事業者の魅力的な提案を施設整備に反映する。市内公設プールの代替先は主に、ふれあい館温水プールを活用する。

 市内の公設プールは石橋地区に大松山運動公園プール(大松山1-7-2)、国分寺地区に国分寺B&G海洋センター(小金井277-2)、南河内地区にふれあい館温水プール(三王山698-5)の3施設を有す。これらは3町合併前から市民に親しまれてきた。

 大松山はレジャー指向の高まりに応え、1985年6月に開設した屋外プール。25mプール、幼児プール、流水プール、ウオータースライダーを備える。入場料は乳幼児無料、小中学生200円、一般500円。近隣には競合施設があり、苦戦を強いられている。

 年間6万人が利用する壬生町黒川の里ふれあいプール、真岡市の県営井頭公園1万人プールの集客力には遠く及ばない。近年は熱中症対策で、気温と水温の合計温度が65度以上の場合は利用を中止。かつての暑い日イコール屋外プールという構図は崩れた。

 2019年度の1日当たりの利用者数は、大松山は記録が残る1996年の490人の半数以下の240人。B&Gは29人にとどまり、一部市民の定期的利用に限定される。ふれあい館は2015年度の指定管理者制度開始を機に回復し、最も多い266人。

 屋外の大松山は利用者数が天候に左右されやすく、営業期間が夏場の2カ月間に限定される。B&Gはテント型屋内プールながら温水ではなく、決して良好と言える利用状況ではない。屋内温水プールのふれあい館は、年間を通じて安定的に運営されている。

 維持管理運営費は大松山が70~80%が公費負担、残りを入場料で回収。B&Gはほとんどが公費負担、入場料回収は4~9%。指定管理者制度のふれあい館は他の施設に比べ、市の負担割合が52~65%と最も少ない。大松山とB&Gは統廃合を検討した。

 大松山は築35年、B&Gは築37年、ふれあい館は築23年が経過。このうち大松山とB&Gは経年劣化が著しく、継続利用には大規模改修が不可欠。2施設の更新時期はほぼ同時期に差し掛かり、多額の財政出動や効率的な運営の妨げとなる。

 年間約1000万円赤字計上の大松山の継続利用には流水プール起流装置交換、階段や連絡橋の塗装、プール本体防水改修、ろ過機交換の機能回復、シャワー温水化、トイレ洋式化、プールサイド改修に1億円以上が必要。大松山を廃止し、ふれあい館を活用する。

 B&Gは20年度にB&G財団から補助を受け、屋根の鉄骨塗装、25mプールと幼児プールの防水シート修繕を約2800万円で施工。今後数年の安定的利用が担保されるため、当面は継続利用する。大規模改修が必要な際は改めて継続か廃止かを検討する。

 統廃合に当たり、建設コストや運営経費の削減に有効なPFI手法の民間活力を導入。市民サービスを維持しつつ、経費削減を図る。他のプール利用料は維持管理コストに対し、施設の目的や利用状況に応じた受益者負担が適切かを確認。料金設定や減免制度を見直す。

 大松山運動公園は市街地に近く、まちづくりのポテンシャルが高い。陸上競技場兼サッカー場、水辺の遊び場、ウォーキングコース、遊具広場といった施設を配備。各施設の利用率や回収率を向上させ、プール跡地は体育施設だけでなく様々な可能性を排除しない。

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