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道路生かす県土整備/災害対応評価する制度設計を/熊谷俊人知事就任インタビュー

2021/05/11 日刊建設タイムズ

 3月21日の第21回千葉県知事選挙で、過去最多の約141万票を獲得して当選を果たした熊谷俊人知事がインタビューに応じた。就任の抱負として「千葉県の魅力を発揮させるためのインフラ整備を進め、民間投資を引き出すプロジェクトを進めていく」と力を込めた。半島性を克服するため、基幹的な道路ネットワークを構築するとともに「道路を生かす県土整備」を展開。また、千葉マリンスタジアムの整備を含む幕張新都心の発展ビジョンを、千葉市と戦略を共有しながら描いていく。県内建設業に対しては「災害時に地域の守り手として応えていただけるよう、入札などにおいて取り組みを評価する制度設計を検討していきたい」と語った。

 

 ――就任にあたっての抱負、展望を聞かせてください。

 熊谷 新型コロナウイルスの影響で、東京一極集中型の生活様式からの転換が進んでいます。将来的にテレワークやリモートワークの比率は高まってくると考えられますので、東京都の隣県でありながら豊かな自然を有する千葉県の魅力は、十分に訴求できるものと考えています。そして、それにふさわしいインフラ整備をしっかりと進め、実現できるようにするのが私の仕事です。

 日本の縮図である千葉県のそれぞれの地域の特性を生かし、民間投資を引き出すプロジェクトをしっかりと進めていきたいと思っています。

 

 ――県政ビジョンに掲げた「半島性を克服する交通インフラの充実」について教えてください。

 熊谷 千葉県においては半島性を克服し、人や物の移動がしっかりと行われるというのが経済的に非常に重要で、これまでにも東京湾アクアラインの建設など、いろいろな取り組みが行われてきました。

 まずやらなければならないのは、人や物の流れを県内の広範囲に生み出すために必要な、基幹的な道路ネットワークを構築することです。

 首都圏中央連絡自動車道は大栄・横芝間がもう少しで暫定2車線で開通しますが、4車線化も重要です。

 わが国、そして千葉県にとって非常に重要な成田国際空港と東京を結ぶ北千葉道路の早期全線開通も非常に重要です。

 さらに、基幹的な道路の沿道におけるまちづくりや企業の集積を全庁的なプロジェクトとしてしっかりと進め、道路を生かす県土整備を展開していきたいと思っています。

 加えて、銚子連絡道路や長生グリーンラインなど、圏央道の効果を波及させるための道路整備も推進します。

 そのほか、将来の活力のため、新たな湾岸道路の整備とそれに伴う京葉臨海コンビナート地域の競争力強化、また東葛地域との結節を強化する千葉北西連絡道路の整備に向けた機運醸成をに取り組んでいきます。

 

 ――「成田空港を活用した国際拠点整備」についてはいかがですか。

 熊谷 成田空港に関しては、地元の方々のご理解をいただき、第3滑走路の新設を含む機能強化が進められています。

 旅客数を増やすだけではなく、国際物流という観点で、成田空港周辺にいかに産業を集積をさせていくかが非常に重要です。そこで、成田空港周辺地域における国家戦略特区を国に提案しています。土地利用の規制を緩和し、成田空港があることを生かして、土地の高度利用が進むような取り組みを計画していきます。

 また、医療関係機関も多くあり、医療系の産業などの集積も促進できればと考えています。

 

千葉市と戦略共有/新都心ビジョン等

 

 ――「千葉マリンスタジアムの整備」など、千葉市と連携して取り組む事業について教えてください。

 熊谷 幕張新都心は、千葉新産業三角構想によって整備された、千葉県にとって非常に重要な拠点です。県から千葉市に権限などが移管される中で、改めて千葉市に中長期的なビジョンを作っていただき、今度は県が協力していくことになります。整備が進められている幕張新駅の効果を最大限生かすような発展のビジョンを描いていくことが大事です。

 千葉マリンスタジアムに関しては、老朽化対応に併せて必要なバリアフリー化などを実施すると60~80億円かかるというのが、千葉市による粗い試算です。最終的な税金の投入が抑制できるならば、建て替えの議論を進めるのだろうと思っています。建て替える場合の用地に関しては、さまざまな議論がありますが、新駅に近接する幕張メッセの駐車場など結論ありきではなく、メンテナンスも含めた一定期間のライフサイクルコストや場所のメリット・デメリットなどの兼ね合いで、最適な方針を決めていくことが必要と考えます。

 少なくとも、県と千葉市は戦略を共有できる関係性が構築されています。県民、市民の負担が抑えられ、経済面、文化面、スポーツ面でも効果の高い手法を検討していきます。

 

――「県水道と千葉市水道の統合」について聞かせてください。

 熊谷 県として負担が増えない、または統合効果が高まるのであれば、推進していきたいと考えています。県と千葉市に限らず、中長期的にメンテナンスコストを軽減するため、行政の枠を超えて統合や広域化を進めていきたいと思っています。

 

――県内建設業への期待を伺います。

 熊谷 千葉市長時代に、東日本大震災や19年の東日本台風など、多くの災害においてご協力をいただきましたので、地元建設業の重要性や役割については十分に理解しています。

 いざというときに、地域の守り手として、県や市町村からの要請に応えていただける建設業が各エリアに存在しなければなりません。そのために、入札などにおいて災害時の取り組みをしっかりと評価する制度設計を、業界の皆さんと一緒に検討していきたいと考えています。

 また、担い手不足を解消するため、建設業を志す子どもたちや若者が増えるよう、教育行政における取り組みを強化していきたいと思っています。

 

【略歴】

 くまがい・としひと

 1978年、奈良県生まれ。43歳。2001年、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。同年、NTTコミュニケーションズ入社。07年、千葉市議会議員選挙で当選。09年、千葉市長選挙で当選し、全国最年少市長(当時)、政令指定都市最年少市長となる。14年、ワールドメイヤー(世界市長賞)ノミネート。17年、千葉市長選挙で再選。21年、第21回千葉県知事選挙で当選。趣味は登山、詩吟、歴史。

熊谷知事

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