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木下修・長野県建設業協会会長インタビュー②

2021/06/16 長野建設新聞

 ―県では台風19号災害以降、迅速な復旧に向けて、入札制度の特例措置を相次いで打ち出しました。今回の加速化対策でも仕事量の増加を見越し、新たな発注標準や「強靱化JV」制度などを導入しています


 不調・不落をなくすにはどうしたらよいか、というのは発注者とわれわれの共通認識。これまでわれわれも機会を捉え県へ要望し、県もさまざまな施策を講じてきた。不調・不落の抑止には、やはり発注ロットの大型化は不可避。それを踏まえ、強靱化JVではB、C級のみでの構成を可能にし、新たな発注標準ではC、D、E級の参加枠を拡大している。工事の大型化を図りつつ各ランクも拾い上げる策を講じている。

 入札制度に正解はなく全ての企業が満足する形はない。地域によって各等級のバランスも異なる。地域ごとに現地機関と支部が意見交換し、事業が円滑に進むよう連携していきたい。


 ―木下会長は下位ランク企業の経営安定化を課題の一つに挙げています


 協会にはA級の企業もいればE級の企業もいる。ここ数年、経費率は上昇しているが、B級下位から下のランクの経営状況にその恩恵が見られない。東日本建設業保証の調べによると、令和元年度決算分析で売上高1億円以上の企業の営業利益率は各階層で平均2・86~4・77であるのに対し、1億円未満の企業はマイナス0・56。会員の約1割はこの階層にあり放っておくわけにはいかない。原因を探り、分析し、協会として何かしらの解決策を取りまとめていきたい。強靱化で仕事量が見込めるこの機に、下位ランク企業も体力が付けられるようにしたい。


 ―加速化対策は県土の安全・安心、さらにはそれを具現化する地域建設業の強靱化の面でも効果が期待されますね


 台風19号で甚大な被害が出た千曲川は、国が管理する区間の中に県が管理する、いわゆる「中抜け区間」が存在し、十分な高さの堤防がないところも多くある。そうした箇所に継続的に予算を付けて、安全な地域を造っていただきたい。

 幸か不幸か新型コロナウイルス感染症の影響により地方移住の動きが出ている。例えば佐久地区は東京に近く、人口も増加傾向にある。しかし災害があっては売り物にならない。強靱化の取り組みは期間を区切らず、危険な箇所がなくなるまで、要するに時間ではなくインフラ整備の成果で判断してほしい。

 また建設企業にとっては安定的な公共投資が見込めることで人材の補充、週休二日、働き方改革に積極的に取り組むことができる。働き方改革は担い手確保・育成のため避けて通ることはできない。いつか来る厳しい競争時代に備えられるよう各社において取り組みを推進してほしい。

 もう一つ、今回の災害復旧で大手ゼネコンが施工した工事の不具合事象が大きく報じられた。懸命に取り組んできた地域の建設業にとって大変遺憾なこと。先ほども述べたとおり、われわれ地元企業は「地域を守る」という意識を持ち、いい加減な工事はしない。県は今回の災害でもできる限り地域の企業で対応する形で取り組んでおり、この姿勢は正しいと思う。

 県内企業が成長すれば地域の雇用が増え若者も地域に戻ってくる。強靱化対策を地域振興につなげる意味でも、これからも県内企業優先、地方への公共投資の継続を訴えていく。


 【略歴】(きのした・しゅう)木下建工㈱代表取締役。1954年1月生まれ、67歳。佐久市在住。2011年県建設業協会副会長、18年5月より会長。高校で始めたラグビーは社会人チーム時代に長野県代表として本国体(1981年開催、滋賀県「びわこ国体」)出場経験も。

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