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建設業労働災害防止協会千葉県支部

「日頃の努力の結果」を糧に/約3年、死亡無災害継続中/建災防柏分会が安全大会

2021/06/29 日刊建設タイムズ

 建設業労働災害防止協会千葉県支部柏分会(戸邉昌之分会長)の主催による「2021年度安全大会」が24日、柏市内のザ・クレストホテル柏で開かれ、総勢約50人が参加。安全教育の徹底や、安全管理体制の確立等、安全意識の高揚を図るため、労働災害の防止に全力で取り組むことを決意する「安全大会宣言」を採択。柏労働基準監督署の工藤仁美署長による来賓祝辞のほか、柏労基署安全衛生課の松葉一之課長が「熱中症予防対策の徹底」と「第13次労働災害防止計画の計画期間後半における取り組み」についての安全講話を実施。Office W-being代表で(一社)日本シェアハウス協会理事、「家庭掃除・収納士」資格認定講座専任講師、女性活躍推進コンサルタントの響城れい(日々キレイ)氏を講師に迎え、『業績アップのための整理整頓・掃除術』~社員の「気づき力」を育てる凡事徹底のコツ~をテーマに特別講演も行った。『安全意識の啓蒙活動』と称され、開始から30余年が経過した現在も、会員312人(36社)から430点の作品が寄せられた「安全標語」では、優秀入選者として、最優秀賞1件、優秀賞3件、佳作7件を表彰した。

 

 「安全標語」入選者表彰も

 

 主催者を代表して戸邉分会長は、昨年の柏労基署管内における建設業の労働災害について「死亡災害はゼロで、2018年8月27日に業務上の交通事故で1件発生して以来、現在まで発生させていない」と報告。加えて「熱中症も、コロナに対するクラスターの発表もない」と強調した。

 一方、休業4日以上災害については「残念ながら、若干右肩上がりになっている」と厳しく指摘し、猛省を促した。

 これらに対して、戸邉分会長は「死亡無災害を続けているということは、会員各位の日頃の努力の結果である」と評価。「引き続き、安全作業を継続して頂きたい」と呼びかけ、あいさつとした。

 

 安全対策の形骸化 意識の低下に懸念

 

 労働行政を代表して柏労基署の工藤署長は、管内で本年1月に、新型コロナウイルス感染症による死亡災害が発生したことに言及。

 「新型コロナウイルス感染症への対策は最重要課題である」としたうえで、職場における大規模な感染拡大を防止するために「事業者、労働者それぞれが、職場内外での感染防止行動の徹底について正しい知識を持ち、職場や職域の実態に沿った対応に取り組むことが必要」と訴えた。

 一人ひとりの感染防止に向けた取り組みが、現場全体の感染リスクの抑制に繋がるとされることには、「単独作業や他の従業員との距離が十分にとれる場合、会話のない場合などでは、熱中症予防の観点から、マスク等を外した方が良い場合も考えられる」と言明。

 熱中症を排除するのには「マスクを着用する場面、マスク等の選び方、正しい着用の方法を、作業員一人ひとりに徹底することが重要である」との考えを示した。

 一方、県内建設業では、今年に入って重機への挟まれと墜落・転落災害で、計2人の死亡災害が発生していることに言及。「本来、これまで構築されてきた安全衛生教育の労働災害防止対策でカバーできるところで発生している」と厳しく指摘し「安全衛生教育や安全対策の形骸化、元請け職人や下請け作業者等の危険管理意識の低下が懸念される」との危機感をあらわにした。

 

 これまで蓄積した高い安全水準継承

 

 「コロナ禍の中で、他業種から建設業に転職される方もいる」とした工藤署長は「安全衛生教育の徹底、リスクアセスメントの実施、それに基づくリスクの低減など、建設業がこれまで蓄積してきた高い安全水準の継承をお願いする」と要請。

 さらに「労働災害をなくそうという機運を盛り上げるためのこの大会に際して」として工藤署長は「今一度、みなさんの安全に対する取り組みがどうであったかを振り返り、それぞれの職場での死亡災害ゼロの継続と、労働災害の撲滅に向けて、何が必要かを考えて頂きたい」と重ねて要請。

 最後に「『安全のために取り組もう』ということを自ら宣言し、妥協することなく継続して取り組んで頂きたい」と呼びかけ、祝辞に代えた。

 

 安全大会宣言

 

 我々は、人命尊重という崇高な基本理念のもと、産業界での自主的な労働災害防止活動を推進し、広く一般の安全意識の高揚と安全活動の定着を図ることを目的に、労働災害の防止に懸命な努力をしてきた。

 この努力により、労働災害は長期的には減少している。しかし、建設業は、多くの危険作業を伴う仕事であり、他の産業に比べて、まだまだ高い水準で推移している現状である。

 このような状況を踏まえて本日、本大会において、会員全員が本年度の全国安全週間のスローガン『持続可能な安全管理 未来へつなぐ安全職場』のもと、労働災害のさらなる減少を決意。

 働く方一人ひとりがかけがえのない存在であり、各事業所で一人の被災者も出さないという基本理念のもと、日々の仕事が安全なものとなるよう、不断の努力を誓い、全員がルールを順守し、ゼロ災害の明るい職場づくりになお一層、邁進することをここに宣言する。

 2021年6月24日 建設業労働災害防止協会 千葉県支部柏分会 安全大会 実行委員長 富田 英紀



 2021年度建災防柏分会 安全標語入選作

 

 最優秀賞

 ○話し合おう 違う目線で危険予知 皆で育てる安全意識/ナカソネ リカルド コウジ(㈱出口工業)

 

 優秀賞

 ○危険を感じたその瞬間 後でじゃなくて即改善!/鈴木 孝則(㈱コスモ工業)

 ○時間と気持ちのゆとり持ち 視野を広げて危機回避/岸 教子(㈱吉岡建設工業)

 ○見る目 気づく目 注意の目 全てにまさる危機管理 初心に戻って 安全確認/猪飼 秀明(㈱ダイエックス)

 

 佳作

 ○身を守るのは安全作業と安全意識 着けていますか 保護帽・マスク・安全帯/藤田 雅久(㈱藤田土木)

 ○ひとり一人の気遣いが、コロナも現場も、大切だ!/山下真弘(㈱助川工務店)

 ○何か変 仲間の変化に敏感に 健康管理はメンタルも/今井 みどり(㈱出口工業)

 ○一人一人に役割を 一人一人に責任を みんなの努力で 災害ゼロ/齋藤 明美(㈱)

 ○慣れた作業を再確認 必ずあるぞ危険の芽 みんなで摘み取り ゼロ災害/宮島 純夫(浅野さく泉管工㈱)

 ○まずいです 言える勇気と 心のゆとり/片桐 裕子(丸山建設㈱)

 ○早くやるより正確に 焦ってやるより確実に 安全確認ゼロ災害/市川侑樹(㈱ダイエックス)

戸邉分会長 工藤・柏労基署長 響城れい氏による特別講演「業績アップのための整理整頓・掃除術」 「安全標語最優秀賞」のナカソネ リカルド コウジ氏(右) 記事資料

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