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千葉県県土整備部

活力ある強靭なまちづくり/「新たな視点」の取り込み必要/高橋伸生県県土整備部都市整備局長インタビュー

2021/08/19 日刊建設タイムズ

 4月27日付の人事異動で、県県土整備部都市整備局長に就任した高橋伸生氏がインタビューに応じた。都市計画課、市街地整備課、公園緑地課、下水道課、建築指導課、住宅課の6課を所掌し、「活力あるまちづくり」と「災害に強いまちづくり」を推進。都市公園への民間活力の導入を検討していくほか、災害ハザードエリアにおける開発抑制のために条例改正手続きを進める。事業の推進にあたっては、防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策の重点化や、新たな視点としてニューノーマル、カーボンニュートラル、SDGsの取り込みが必要との考えを示した。

 

 ――就任にあたっての抱負・展望をお願いします。

 

 高橋 「活力あるまちづくり」と「災害に強いまちづくり」を推進したいと考えています。

 「活力あるまちづくり」に関しては、人・モノの流れを促進する広域的な道路やインターチェンジを生かした産業の受け皿づくりのため、土地利用の調整や都市計画での位置付けを行います。さらに、市町村が策定する立地適正化計画の支援、土地区画整理事業、都市公園の整備に取り組みます。

 「災害に強いまちづくり」については、災害ハザードエリアの開発抑制、土地区画整理事業における下水道・道路の整備、広域的な避難所となっている都市公園のオープンスペースの確保、流域下水道の耐震化・長寿命化・耐水化、住宅セーフティネットに寄与する県営住宅の整備、建築物の耐震化促進を図っていきます。

 防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策を重点化するほか、新たな視点としてニューノーマル、カーボンニュートラル、SDGsを取り込んでいかなければなりません。

 事業の推進にあたっては、自身の経験や視点を伝え、担当者を含めて議論を深めていくことが、物事が思わぬ方向に動いたり、障害が生じたときの迅速な対応につながると考えています。

 

 ――主要事業や、2021年度における取り組みを教えてください。

 

 高橋 頻発・激甚化する自然災害に備え、都市計画による土地利用の規制・誘導を図ります。市町村が行う、インターチェンジ周辺や成田国際空港周辺の産業基盤づくりなどの支援にも取り組みます。

 県条例により、市街化調整区域内でも開発可能な区域が定められていますが、ここから災害ハザードエリアを除外するための条例改正の手続きを進めています。

 また、7月15日の都市計画審議会では、首都圏中央連絡自動車道の整備や成田空港の更なる機能強化に伴う産業誘致に向け、新たな土地利用を位置付けるための都市計画区域マスタープランの変更について諮りました。銚子連絡道路の匝瑳から旭までの区間の計画についても、原案通り可決いただきました。

 

 ――土地区画整理事業についてはいかがですか。

 

 高橋 柏北部中央地区、運動公園周辺地区、木地区、金田西地区の4地区で進めています。インフラ整備とともに、保留地販売を推進したいと考え、昨年11月に専用のホームページを開設しました。市町村の子育て支援のページにリンクさせるなど、地域の暮しやすさがダイレクトに伝わるように心掛けています。

 

 柏の葉公園に民活導入を検討

 

 ――都市公園に関して聞かせてください。

 

 高橋 長生の森公園、八千代広域公園、市野谷の森公園の整備を進めています。

 また、管理している公園については長寿命化に取り組むほか、さらに魅力あるものにしていくため、民間活力の導入を検討します。新型コロナウイルスの影響で公園の使われ方の変化が想定されるため、新たな価値の創出や民間事業者の進出意欲を見極めていく必要があります。先行的に、柏の葉公園でマーケットサウンディングを行うとともに、管理・整備の方針の策定作業を進めています。

 

 ――流域下水道について伺います。

 

 高橋 江戸川左岸、印旛沼、手賀沼の3つの流域下水道があります。江戸川左岸の事業区域の未普及対策に優先的に取り組むため、江戸川第一終末処理場の整備を進めており、全9系列のうち第1系列を3月1日に稼働開始しました。第2系列以降についても、切れ目無く進めていきます。

 

 ――19年の房総半島台風に伴う被災者支援について教えてください。

 

 高橋 1日も早く普段の生活を取り戻していただけるよう、災害救助法に基づく応急修理を8月末までに完了させたいと考えています。また、県が独自に創設した被災住宅修繕緊急支援事業に関して、被災者や工事業者に対して積極的な働き掛けを行っており、年度内の完了を目指します。

 

 ――社会資本の長寿命化や更新についてはいかがですか。

 

 高橋 都市公園、流域下水道、県営住宅の老朽化に対応するための改築更新や修繕にあたり、コストを平準化するため、長寿命化計画を作成しました。事後保全から予防保全的な維持管理への転換を図っています。

 流域下水道においては汚泥焼却炉の更新が必要となっていますが、未利用エネルギーの活用によるカーボンニュートラルの推進が求められており、導入可能性の検討を実施しています。

 

 ――県内建設業への期待をお願いします。

 

 高橋 地域の整備の担い手であり、安全・安心の守り手だと思っています。日頃から大変感謝しており、大きな信頼を寄せています。引き続き役割を担っていただくためには、業界が活力をもって持続的に発展していくことが何より大事です。

 一方で、担い手の確保が課題であることも認識しています。学校の先生や保護者にも建設業の魅力や社会的な役割を理解いただくとともに、休日の確保、働き方改革、生産性の向上が不可欠です。

 県では、ICT活用工事の普及・促進や建設現場における週休2日制の促進などに取り組んでいます。建設業界と意見交換しながら、支援していきたいと考えています。



【略歴】

 たかはし・のぶお

 1963年2月8日生まれ。85年3月、東京理科大学理工学部土木工学科卒業。同年4月、入庁。東葛飾都市計画事務所(現・柏土木事務所)技師、道路計画課副主幹、県土整備政策課主幹(下水道公社派遣)、江戸川下水道事務所第一終末処理場建設課長、江戸川下水道事務所長、都市整備局下水道課長、県土整備部次長などを経て、4月27日から現職。趣味は読書と晩酌。モットーは「誠実」。

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