記事

事業者
ズームアップ

低入札は失格が本筋/不当廉売も課徴金対象

2008/03/04 本社配信

 公正取引委員会は3月上旬に、課徴金の対象となる行為類型を拡大するなど独占禁止法の一部改正法案を国会へ提出するため、現在準備を進めている。今回の改正案では、公共工事にも適用される「不公正な取引方法」の不当廉売について、「違法行為に係る商品などの売上額×3%」の課徴金が課せられることになる。また不当廉売を「正当な理由がないのに、供給に要する費用を著しく下回る価格で継続して販売することであって、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの」と法定化する。

 公取委では昨年、2300件の公共工事低入札案件を調査。このうち5件で、不当廉売の恐れがあると警告している。公共工事の不当廉売に関しては、果たしてどう認定すれば良いのかという難しさがある。例えばガソリン価格の場合は、ある地域において1リットル150円で売っているガソリンスタンドが大勢を占める中、1店舗だけが100円で売っていたとしたら、消費者はそこに集中する。こうしたケースでは、ほかの事業者の活動を困難にさせていることは一目瞭然といえる。

 ただ公共工事の場合はこうした判断が難しい。昨年の5件は、文字通りあくまでも警告であり、これ以上しないようにという戒めと捉えるのが自然だろう。

 2月14日に開かれた自民党の「公共工事品質確保に関する議員連盟」。防衛省が低入札情報を公取委に通報する連絡要領を作成すると説明したことに対し、議連の中核的存在である脇雅史議員は「公取に通報すれば良いという問題ではない」と釘を刺した。脇議員は、公共工事品確法に則った調達においては価格と技術とを絡めて判断することから、価格を決定した責任も発注者にあると指摘した。

 不当廉売への課徴金が現実味を帯びてきた今、独禁法の目的は公正かつ自由な競争の促進であるということを、再認識する必要がある。当然だがその中に、建設産業の健全な発展という概念はまったく入っていない。

 ダンピング抑止の効果を不当廉売に期待することはできるが、各発注者が極端な低入札をきちんと排除するということが、対策の本筋と言える。極論すれば公共工事の場合、ダンピングをすべて失格にしていれば、不当廉売は起こりえないのである。

 低入札は工事品質の面から見て懸念がある。またそれ以前の問題として、基幹産業の疲弊を食い止め、適正な利潤による健全な発展を促すことは、発注者の重大な責務ではないだろうか。このままでは、今後「不当廉売で課徴金を課せられるくらいなら、契約段階で発注者に失格とされていたほうがまだ良かった」という建設会社が出てこないとも限らない。

紙媒体での情報収集をご希望の方は
建設新聞を御覧ください。

建設新聞はこちら