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首都圏空港に明日はないか/乗り越えるべき課題山積み/横田基地軍民共用化セミナー

2008/04/03 東京建設新聞

 「横田基地軍民共用化推進セミナー」が先月27日、東京都新宿区西新宿のハイアットリージェンシー東京で開催された。主催の検討委員会の杉山武彦委員長(一橋大学学長)が「今回のセミナーで軍民共用化に関する日米間の建設的な協議が行われることを期待したい」と挨拶。続いて石原慎太郎東京都知事が挨拶に立ち「世界は時間的にも空間的にも狭小になってきている。空からのアクセスを充実させないと日本の国家としての明日はない。横田基地は太平洋戦争のレガシー(遺産)だと米国は言うが、決して基地の返還を要求しているわけではない。空のアクセスは重要なので使わせてもらいたいと言っている。中国やインドもどんどんキャッチアップしてきている。横田基地を使わないと日本の国力は低下する一方だ」と軍民共用の推進を訴えた。

 講演に移り、塩見英治中央大学経済学部教授がトップバッターとして「首都圏の航空事情と横田基地の軍民共用化の意義」について語った。塩見氏は「首都圏の空港利用比率は全国の6割を占め、高度に集中しているが、空の自由化時代における競争環境への対応が遅れ、国際競争力が低下している」と指摘。「中国、韓国、シンガポールなどアジアの近隣諸国は拠点空港建設への戦略的投資を行っている。これに対し、2010年に羽田空港再拡張工事が完成するが、2020年には再び首都圏の空港の容量が限界に達すると見られている。この問題を解決もしくは緩和するには横田基地の軍民共用化を推進する必要性がある」とした。また、塩見氏は「横田基地の共用化によって、電子・デバイス、情報通信機械の製造品出荷額が都内の9割以上を占める多摩地域の経済活性化が図れると同時に埼玉県、山梨県など航空アクセスの弱い地域の航空需要も創出できる」とした。

 次に、元米国防総省日本部長のポール・ジアラ氏は「日米同盟の根本に立ち返る」のテーマで講演。ジアラ氏は「日本と米国は世界戦略上相互に依存している」とした上で「横田基地の軍民共用化は実現可能」という見解を表明した。しかし、現在の横田基地に関する日米交渉で双方の外交官や運輸関係機関のトップが参加していないことに懸念を示すと同時に「重要作戦や突然の作戦運用増加の時期には排他的な軍事使用が可能となるよう考慮することが必要」とした。また、滑走路整備や設備投資、地域自治体の同意など軍民共用化には乗り越えなければならない現実的な問題がいくつか存在することを明らかにした。

 3番目に、元米国務省局長のW.ロバート・ピアソン氏が「横田基地の民間利用に関する選択肢」のテーマで講演。ピアソン氏は「横田基地の現存施設のうち、ターミナルやメンテナンス施設の共用を期待するのは非現実的である。民間航空のオペレーションは、到着、出発に関して規則的なスケジュールを必要とする。民間航空機が使えると言われている時間については、詳細な検証が必要」とした。また、同氏は「米国高官によれば、横田基地が対応を求められる有事は複雑さを増してきている」とし、「現時点において米国政府が横田基地の軍民共用について簡単に合意することはなさそうである」との見解を示した。

 最後に、日本空法学会理事の坂本昭雄氏が「民間航空の視点から見た横田基地の軍民共用化」のテーマで講演。坂本氏は「民間航空は国の重要資源であり、自由化社会の国際的なハイウェイである」とし、「羽田空港大規模化との関連で横田空域の水平面を見直し、または横田空域を含む首都圏の航空管制を民間航空による広域管制とすることを検討し、その実施に至るまでの措置として、横田飛行場の軍民共用化を推進することが日米両国にとって最も現実的な解決法である」と述べた。坂本氏は法的な問題についても言及した。同氏は「日米両国の横田基地における法的地位は1960年に発効した日米相互協力及び安全保障条約に依拠する。この条約の第2条は日米両国間の経済協力の促進を規定している」とし、横田基地軍民共用化の法的根拠を説明した。

セミナー冒頭挨拶する石原東京都知事000204.jpg

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