国土交通省の直轄工事で応札者ゼロの入札不調が急増して問題となっていることから、弊紙では今回、関東甲信越の支局ネットワークを活用し、管内の状況を取材した。その結果、応札者ゼロ、入札不調の状況は県によって事情が異なっているものの、一般競争入札制度の運用、予定価格、技術者確保などの問題が顕在している。このまま推移すると拡大するのは明白で、公共事業の円滑な執行に影響し、快適な社会資本の提供に大きな問題となりそうだ。
まず、東京都は応札者ゼロの入札不調が国交省と同様に急増しており、看過できない状況となっている。19年度は全発注工事3864件中、368件で発生(発生率9・5%)している。
埼玉県内でも入札の「中止・取り止め」が多発。目玉事業、大型事業でもエントリーゼロが起こるという、数年前には考えられなかった事態が現実となっている。発注者の単価が厳しく「とても公共といえど請けられない」という声が挙がっている。
茨城県は、19年度に27件の不調が発生した。前年度比6割の増加。取材の過程で、橋梁補修で多く発生していることがわかり、技術者の専任制に課題があるという指摘もあった。
群馬県の場合、県土整備部の発注で19年度にエントリーゼロだったのは7件あった。受注者側からは、入札参加時の書類の煩雑さも問題点のひとつという意見が聞こえてきた。国交省の八ッ場ダム工事事務所、高崎河川国道事務所でも増加傾向にある。
山梨県の19年度の状況をみると応札者なし(1者あるいはゼロ)は指名競争36件、一般競争11件の、計47件。現行ではそれほど深刻化しておらず、県では、今後急激に増加すれば対策を講じていく考えを示した。
新潟県発注工事は、国交省とまったく違う状況にある。応札者ゼロは18年度1件、19年度2件と、ほとんど発生していない。これは、新潟県の場合、一般競争の対象を1億2000万円以上と絞っていることが大きいようだ。
長野県も「今のところ問題視する状況にはない」という。県が昨年度に発注した受注希望型競争入札4821件のうち、応札者がなかった案件は79件、発生率は1・6%だった。取材により、地区別でみると南信で多発傾向にあることが判明した。
こうして関東甲信越の現況を見渡してみると、「応札者ゼロ」の入札不調が深刻化している県と、そうではない県とにわかれている。
国土交通省では不調が急増している要因として、一般競争への急速かつ全面的な切り替えが企業側の選別受注を促進している点を認識している。指名競争時代は表面化していなかった“利益の薄い工事”を敬遠する動きが顕著になったのだろう。
不調問題解決の糸口としては、現場条件の実態に合った予定価格の設定、タイムリーな単価を用いることのほか、技術者の確認要件緩和も挙げられる。また根本的なポイントとして、一般競争の適用を広げすぎないことも一案と言えそうだ。