平成18年度ごろの開港をめざす航空自衛隊・百里飛行場(東茨城郡小川町)の民間共用化で、国と県は今年度から着工に向け本格的に動き出す。新滑走路については用地取得、無線・照明施設等の基本設計等、空港ターミナルは17年度の着工に向けた調査・検討等に着手する。
また、周辺地域の関連整備では新設道路の仮称・空港線をはじめとするアクセス道路、臨空型工業団地「仮称・空港テクノパーク」(同町下吉影、面積51・1ha。うち分譲用地約40・4ha)の用地買収や調査等に着手する。道路は開港に間に合うよう整備を進め、総事業費約108億円を見込む工業団地は19年ごろに分譲開始する予定だ。
百里飛行場の民間共用化に伴い、建設費と開港後50年間の維持管理費はおおよそ317億円。これに対し、開港後50年間の時間短縮効果や費用低減効果といた利便性は1、523億円と推計されており、投資に対する効果の割合は4・8倍に上るといわれる。また、建設投資による経済波及効果は1、820億円、航空事業の開始、ターミナルビル運営、観光客増加など民間共用後の経済波及効果が300億円、全体の雇用誘発数については1万1、000人が見込まれている。
■百里飛行場エアフロント検討委員会(委員長・山形耕一茨城大学教授)
▼平成14年3月をめどに「仮称・百里飛行場エアフロント計画」を策定する。
▼主な検討内容
◇飛行場周辺整備の基本方針◇導入機能及びゾーニング計画◇土地利用及び導入施設計画◇アクセス交通計画◇事業スケジュール・事業手法◇地域振興方策など
※土地利用と導入施設計画では、公園、緑地、駐車場等関連公共施設、複合商業施設、観光施設などの立地可能性を探る調査を行う。空港西側の拡張エリアに整備されるターミナルビルについては、バリアフリーなど利用者が使いやすい施設のあり方を探り、採算性を考えた施設規模の適正化を検討する。また、ターミナル周辺のエアフロントに関しては、公園・緑地等の関連公共施設の整備に向けた計画の土台づくりを進める。
■百里飛行場ターミナルビル検討委員会(委員長・石田東生筑波大学教授)
▼平成14年3月ごろをめどに百里飛行場ターミナルビル基本計画(案)をまとめ、14年度以降に事業主体を設立する。
▼基本計画の主な検討内容
◇設計コンセプト◇施設計画◇事業主体の経営計画◇今後の課題-など。
■事業の概要
【事業の目的】
▼増大する県民の航空需要に対応するとともに、県内の4本の高速道路、4つの重要港湾などとの連携による陸・海・空の交通ネットワークの形成を図るため、百里飛行場の民間共用化を推進する。
【位置及び設置者】
▼位置=東茨城郡小川町(百里飛行場は水戸市から約25km、つくば市から約40km、鹿嶋市から約40kmの位置にあり、現在、航空自衛隊の百里基地と位置づけられている。
▼設置者=防衛庁長官
【共用化の事業主体等】
▼空港の種類=共用空港
▼事業主体=国土交通省
▼費用負担
◇基本施設(滑走路、着陸帯、誘導路、エプロン)国3分の2、県3分の1
◇附帯施設(その他の施設)国10分の10
【施設整備の概要】
▼新滑走路を整備するとともに、現滑走路については、民航機が天候の悪い時等に利用するため、嵩上げ(補強)を実施する。
【施設規模】
▼新滑走路
◇滑走路=長さ2、700m、幅45m
◇着陸帯=長さ2、820m、幅150m
◇誘導路
▽滑走路取付=4箇所
▽エプロン取付=1箇所
▼現滑走路(嵩上げ)長さ2、700m、幅45m
▼エプロン(検討中)新滑走路の整備に伴い移設が必要となる施設については機能補償する。
▼工期=約6年(平成18年度前後に開港の見込み)
▼全体事業費=約250億円(見込み)
▼航空需要予測=年間80万7、000人(平成18年度開港時点の国土交通省予測)
▼費用対効果(国土交通省試算)
◇施設供用後50年間の総便益=1、523億円
◇建設費及び施設供用後50年間の補修費等の総費用=317億円
◇費用対効果(総便益/総費用)=4・8
【民間共用化に向けての最近の経緯】
▼平成12年4月=12年度の運輸省(当時)予算に、百里飛行場民間共用化のための事業費1億円が予算化
▼平成12年7月=空港整備法施行令の一部改正により、百里飛行場が共用化空港に指定。
▼平成12年11月=県、運輸省(当時)鹿島港湾工事事務所などにおいて、現地測量実施のための地元説明会を開催。
▼平成12年12月=13年度の国土交通省予算(案)に用地取得費を含む事業費11億5、100万円が計上。
▼平成13年1月=国土交通省鹿島港湾工事事務所において現地測量を開始。
■百里飛行場民間共用化に向けての経緯
平成5年10月=県が小川町及び議会からの要望を受け「百里飛行場民間共用化可能性調査」を実施。
平成7年8月=県が「百里飛行場民間共用化構想」を発表。
平成7年12月=「百里飛行場民間共用化推進協議会」(小川町)が設立される。
平成8年3月=「茨城県百里飛行場民間共用化推進協議会」が設立される(県及び14市町村で設立)。以後、精力的に運輸省・防衛庁等に共用化を要望。
※茨城県百里飛行場民間共用化推進協議会は、平成9年7月に構成団体を県、22市町村、34経済団体に拡大。
平成8年12月=第7次空港整備5箇年計画閣議決定(後に7箇年に変更)。運輸省資料において、「百里飛行場の共用化について引き続き関係者と調整を行うこととし、結論を得た上で所要の整備を図る」と位置づけされる。
平成10年3月=「主として民航が使用する新たな滑走路を現滑走路の西側210mの位置に設置する」との基本的な検討の方向が確認される。
平成11年4月=運輸省において空港整備事業の調査比を予算化。
平成12年4月=運輸省の12年度予算において、百里飛行場の共用化のための事業費(実施設計調査費)1億円が予算化。
平成12年7月=空港整備法施行令の一部改正により、百里飛行場が供用飛行場として指定される。
平成12年11月=現地測量実施のため地元説明会を開催。
平成12年12月=国の平成13年度政府予算案に百里飛行場の供用化のための事業費(用地造成、無線・照明施設整備)11億5、100万円が盛り込まれる。
■空港ターミナルの整備スケジュール
▼14年度以降=事業主体設立
▼15年度=基本設計
▼16年度=実施設計
▼17年度=着工
▼18年度=営業開始
■臨空型工業団地「仮称・空港テクノパーク」
県は平成12年度補正予算で造成委託契約について債務負担行為を計上した。
▼期間=平成12~23年度
▼限度額=108億8、600万円並びに事務費及び利子の合計額。
▼整備場所小川町下吉影地区の51・1ha(うち分譲面積40・4ha)
※県施行による一般宅地造成事業として(財)県開発公社に委託。
■空港へのアクセス道路の整備
【仮称・空港線】
平成13年度の新規採択が予定される上吉影岩間線と紅葉石岡線に続き、空港関連道路のメーンとなる「仮称・空港線」が測量及び道路設計((株)ミカミ)に入った。
計画ルートは、県道・紅葉石岡線から空港までの延長約2、900mで、4車線道路として新たに通す。幅員構成は、空港ターミナルから約370mが40m(車道部13m)、この先紅葉石岡線までが25m(同6・5m)。県単費で調査を進め、平成14年度の新規採択をめざす。
【県道・上吉影岩間線バイパス】
昨年度県単独で調査を行い、今年度の新規事業採択をめざす。上吉影岩間線は常磐道・岩間インターチェンジ(岩間町押辺地内)から、国道6号(美野里町中野谷地内)までの延長約6、700mで計画。国道6号との交差部で平成13年度の完成を見込む広域農道に結ばれる。
道路構造は、道路規格第3種第2級、設計速度・時速60km、幅員15・0/6・5m。総事業費には約60億円を見込む。
事業スケジュールによると、第1期工事は今年度から空港が開港する平成18年度までの期間に、岩間IC側から、改良を計画してる町道までの約2、700mと、国道6号側から県道・石岡常北線までの約1、400mの区間を整備する。また、第2期工事は残る約2、600m区間を平成18年度以降から取り掛かる。
【県道・紅葉石岡線】
このほか、百里関連の主なアクセス道路の計画では、県道・紅葉石岡線、国道355号関連や県道・小川鉾田線、生活関連の宮ケ崎小幡線などの整備が計画されている。
このうち、県道・紅葉石岡線の道路改良は、水戸方面から空港に向かうためのもので、今回の計画では小川町と茨城町のほぼ中間を整備。地域高規格道路となる仮称・南北幹線道路の整備が完了するまでの間は、その機能を補完する道路として開港に合わせて整備する。