全国統一資格として、公共工事品質確保技術者制度が平成21年度からスタートする運びとなった。現行では国土交通省の各地方整備局ごとに運用しており、管内だけのローカルルールとなっているが、新たに(社)全日本建設技術協会が資格運営をしていくことに決定した。有識者と国交省担当者らがメンバーとなる運営委員会を組織し、試験資格の決定や合否判定、更新制度などを決めていく。
そもそも「発注者支援技術者制度の全国統一化」は、関係省庁が20年3月に申し合わせた「公共工事の品質確保に関する当面の対策」で明記されていたもの。17年8月に閣議決定している公共工事品確法の基本方針第2の8では「発注関連事務を適切に実施することができる者の活用」が規定されており、その促進具体策と言える。
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国土交通省が20年12月に公表した最新の調査によると、市区町村の総合評価導入率は42・4%にとどまっている。総合評価による発注を実質的に義務付けている公共工事品確法の施行からまもなく4年ということを考えると、悲しくなる数字とは言えまいか。また導入していても、年間1、2件の適用実績では論外だろう。
同省が20年10・11月に行った総合評価の導入実態調査では、地方公共団体が挙げた導入困難理由として「手続きに伴う事務量の増大」が63・8%で最多となっている。
そうであるならば、品確技術者の活用が期待されるところだ。品確技術者Ⅰ種は総合評価の審査や導入・制度検討のアドバイスなどを行う。またⅡ種は、仕様書や予定価格の作成など、発注関係事務などを実施する。
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新資格の運営団体となる全日本建設技術協会は、昭和34年に設立された社団法人。国・地方公共団体・機構や公社に勤務している技術系職員からなる団体で、会員約7万5000人の会費で運営している。
国交省が同協会を選んだ背景には、公共工事品確法の精神がある。品確法の最大級のポイントとして、発注者の責務を明確化した点が挙げられる。公共工事の品質を確保しようと思えば、まずは発注者における取り組みが不可欠ということだ。そうであるならば、技術系職員の多くが所属している同協会が最適であることに、異論はないだろう。
公共工事は、1件1件がオーダーメイドという特性を有している。価格競争では、1円でも安い金額を提示した者が、品質面をまったく勘案することなく、後世に残すインフラ整備の担い手になってしまう。防止策の大本命が総合評価であり、力量がない市町村は、品確技術者の活用を自発的に進める必要があるだろう。