国土交通省は2月9日付で各地方整備局の企画部長らに対し、いわゆる単品『逆』スライド・「請負代金額の減額変更を請求する場合における工事請負契約書第25条第5項の運用について」を通達した。ガソリン価格の下落を背景に、「燃料油」を対象とした発注者から受注者への逆スライド請求が予想されている。
「公共工事標準請負契約約款」の第25条(スライド条項)には、「特別な要因により工期内に主要な工事材料の日本国内における価格が著しい変動を生じ、請負代金額が不適当となったとき」に、「請負代金額の変更を請求することができる」と規定されている。請求権は発注者・受注者の双方に認められている。
振り返ると昨年6月に国交省は、業界の強い要望を受けて、昭和55年以来28年ぶりに単品スライドを発動した。通常合理的な範囲を超える価格変動については、どちらか一方の契約当事者のみに負担を負わせるのは酷という考え方からの措置だった。
運用ルールでは、変動額が対象工事費の1%までは受注者の負担分として、1%を超える部分をスライド増額することにした。この点に関して当時、業界の一部関係者からは「1%以下を足切りするのではなく、全部みてほしい」といった不満の声が挙がっていた。
今回の単品『逆』スライド通達は、昨年6月の運用通達を反対方向に読み替えた内容だ。スライド額算定ルールは、増額時と「対称」になる。1%ルールもそのままで、今度は反対に1%の範囲内は受注者が利益を吸収できるとも言えよう。
増額スライドと減額スライドの最大の違いは、発注者に詳細な資料がない点である。価格の拠り所は物価資料のみ。購入時期に関しては、施工計画書の計画工程表で判断する。
国交省は、物価資料の範囲内で請求を行う。すなわち、あらかじめ受注者に対して資材購入時期や価格についての証明書類の提出は求めないことにしている。価格に関しては物価資料が下限値であり、その価格よりも安く購入していたケースまでは追い求めないという。
逆に物価資料よりも高く購入していた場合は、証明書類の提出を求めた上で、協議により決めていくことになる。
昨年6月に単品スライド適用を決めた際、国土交通省は「建設産業救済策」というフレーズは使っていなかった。業行政の観点からではなく、資材価格の高騰に対応するという発注行政の観点から発動した経緯がある。
今回の逆スライドには、感情論としてやり切れない思いを持つ受注者も多いだろうが、反対方向に資材価格が変動した際に適用することは、本質論として考えた場合に「やむ無し」と言わざるを得ないのだろう。