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「改正高齢者住まい法」/老朽団地建替え促進へ

2009/06/18 本社配信

 高齢化社会に向けて、住宅と福祉施設を一体的に整備して高齢者の居住を確保する取り組みが強化される。国土交通省と厚生労働省が連携して改正した「高齢者の居住の安定確保に関する法律」(高齢者住まい法、5月20日公布)によるもので、8月中旬には施行される。両省は国の補助金を活用した団地再編整備を推奨、今後は同制度を活用した公営住宅の建て替え促進が期待される。

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 外国人も多く行き交う東京・南青山の一画に、周囲と比べて高さが際立つ超高層ビルがある。団地建て替えプロジェクトによる民間賃貸住宅379戸・図書館・大学・商業施設が入る46階建ての複合施設だ。賃貸住宅のゲートは土地柄を感じさせる重厚で高級感あふれる造りで、家賃は月額200万円を超える部屋もある。一方の商業・公共施設の出入口は別に用意され、利用者が気軽に入れるものとなっている。

 ビルの裏手に回ると、同じ敷地内に14階建ての建物がある。都営住宅150戸と保育所のほかにグループホームが入っており、建物に入っていく高齢者の姿が見られる。

 19年3月完成の2つの建物は、老朽化した都営団地の建て替えにあたりPFI方式で民間資金を活用して建てられた。公営住宅の建て替え時に高齢者施設も併せて整備する手法は、国交省が考える高齢者向け住宅政策のモデルとも言える。

 公営住宅などの建て替えには、それなりの予算が必要だ。しかし地方公共団体はどこも財政難という状況だろう。南青山の場合はPFI方式がそれを支えたが、地方のどこでも通用する話ではない。しかし放っておけば建物の老朽化は進行する。また住民の高齢化も進む。

 こうした財政難の自治体を補助金でサポートするため、改正法では「高齢者居住安定化緊急促進事業」という制度が新設された。公営賃貸住宅の整備に合わせて高齢者生活支援施設(生活相談サービス施設や健康維持施設など)を整備する場合に国が補助金を出す制度で、高齢者生活支援施設整備費の3分の2が助成対象となる。

 実際に施設を建設・改良する場合には、高齢者生活支援施設整備事業補助金のほかに住宅共用部分を補助する地域優良賃貸住宅(高齢者型)整備事業交付金とを合わせることができるため、事業者負担はこれまで以上に軽減することとなる。

 同制度で費用負担が軽くなれば、自治体は老朽化した住宅団地の建て替え事業と高齢者のための対策を一挙に進めやすくなるはずだ。また整備によって街が活性化し、地区の価値・魅力が向上することにもつながるのではないだろうか。

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◎県課長に計画策定要請


 高齢者人口は、平成17年(2005年)の時点で2576万人。2040年には3850万人にまで膨らむ見通しだ。当然、介護が必要な高齢者も増加する。高齢者向け住宅と福祉施設の必要性は上がるばかりだ。14年度からは100戸以上の公営住宅団地建て替えにおいて福祉施設の併設が原則化されている。8月中旬から施行される「改正高齢者の居住の安定確保に関する法律」(高齢者住まい法)は、この住宅と福祉施設の一体的整備を一層促進するものだ。

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 都道府県が公営賃貸住宅の整備に合わせて高齢者生活支援施設を整備する場合に、国が補助金を出す制度、高齢者居住安定化緊急促進事業。改正高齢者住まい法で新設された同制度を実施するためには、都道府県は高齢者居住安定確保計画を策定する必要がある。

 6月5日、東京・平河町の全国都市会館に、都道府県および政令市の住宅部局課長と福祉部局課長が集まった。国土交通省と厚生労働省による改正法についての説明会である。国交省住宅局の本東信住宅総合整備課長は「高齢者居住安定確保計画を是非とも策定してほしい」と会場で呼びかけ、計画策定のためのマニュアルも配布した。

 都道府県による「高齢者居住安定確保計画」は、「住まい」「見守り・生活支援」「介護」の3点を確保することが目標。バリアフリー化された高齢者向け賃貸住宅と老人ホームなど高齢者施設の供給目標を記載するものとなる。国交省は具体的な目標数は示していないものの、平成26年度における「福祉施設を併設する高齢者向け住宅」の供給数は現状の2倍を目指している。

 また「高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)」や「シルバーハウジングプロジェクト」などの施策と合わせて、高齢者向けケア付き賃貸住宅(公営・民間)の数は平成20年の約15万戸から、平成26年には約2倍の30万戸になると見込んでいる。

 住宅建て替えと高齢者福祉施設の一体的整備を施策に盛り込んだ改正高齢者住まい法。施策とともに、戸建てを所有する高齢者の移住促進も想定される。彼らが現在所有する戸建て住宅を子育て世代などへ売却・賃貸することで、不動産市場活性化や住宅規模のミスマッチ解消、リフォーム率向上なども見えてくる。これらはいずれも住生活基本計画に盛り込まれているものだ。

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 年を重ねても快適に住み続けられるという「安心」を求める人々に、住宅と福祉の連携による新制度が応えることができるかどうか。その行方は、都道府県・政令指定都市による今後の施策の展開にかかっている。計画策定は、住宅と福祉が密着した新たなまちづくりへの第一歩となる。



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