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山梨県甲府市

代表企業5者が競う/委員から厳しい質問も/設計業者7日に決定/甲府新庁舎の公開プレゼン

2009/07/07 山梨建設新聞

情報公開と選定過程の透明度を高めるため、甲府市は、新庁舎建築設計者選定公開プレゼンテーションヒアリングを5日、県自治会館講堂で開催、選定委員7人のほか、約200人が聴講した。代表企業応募者18者の中から、第1次審査を通過した代表企業5者が(1)エイアンドティ建築研究所(2)久米設計横浜支社(3)石本建築事務所(4)日本設計(5)佐藤総合計画の順でそれぞれ公開。JVを組む甲府市内の企業(複数の場合有り)は既に内定しており、ヒアリングの結果は、7月7日に発表される見通しだ。

 1番目にプレゼンをしたエイアンドティ建築研究所のコンセプトは、庁舎を人と緑をつなぐ「甲斐の丘」と位置付け、杜に浮かぶ丘として、内部に3つの吹き抜けを設ける。また、市民果樹園、太陽光パネル発電、井水空調(雨水利用)、稼働間仕切りと可動ルーパーが特徴。庁舎は8階建てトラス構造(免震)でライフサイクルコストはの数値目標は5~6%試算した。また、実際の設計について、同社は「市民と対話しながらやっていく。スタート段階は地元でしたい。甲府で育った社員もいるので地縁もある。甲府市内の企業とは対話をしながら進めたい」と答えた。

 2番目の久米設計横浜支社のコンセプトは、敷地全体を緩やか緑の丘で覆った「市民ステージのある庁舎」、都市の森と響き合う庁舎、周囲の建物と調和したデザイン、端正な外観とした。庁舎は免震構造の7階建て(エレベーター3カ所)で、ライフサイクルコストは20%削減、地下駐車場は255台とした。甲府市の地場産材(カラマツなど)を利用した内装やインテリアにする。また、実際の設計について、同社は「コアチームについては設計の節目に期間を限定して常駐する。(甲府市業者とは)拠点事務所を共有したい」と答えた。

 3番目の石本建築事務所のコンセプトは、市民の集まれる場所「真のシティホール」とした、ワインヤード庁舎(中央のステージを客席が囲むコンサ-トホールの形式)。現庁舎4号館(旧郵便局)の外壁は保存する。庁舎は14階建てで(11階まで可能)、外観は角がまるいデザインとし、透明感のあるガラスチップを混入したホワイトセメントPC版を使用。さらに薄膜太陽電池パネル(200キロワット)、屋根は市有林材と鉄骨を組み合わせたハイブリット構造(武田菱をモチーフ)、木質バイオマスで床暖房などを特徴した。また、実際の設計について、同社は「市役所の側に事務所を借り設計分室とする。地元の方と共有したい。一つのチームとしての運営を考えている」と答えた。

 4番目の日本設計のコンセプトは、歩く街甲府の拠点、環境に配慮、市民と一体となって考える「ブドウ棚のような太陽光発電パネル(300キロワット)」。免震構想の建物は、議会棟と行政棟に分け、地下を駐車場、1、2階を窓口やロビー、3階に議場、4~9階を執務室を配置。特徴は、甲府市の環境を活かし日本一の太陽光発電パネルを設置(全体工費の5%を占める)やアーケードの足湯のほか、温泉や地下水を冷暖房エネルギー、自然換気、雨水を多く利用。市民とはワークショップで報告することを考えている。また、実際の設計について、同社は「(甲府周辺出身者の)初期段階には駐在も考えている」と答えた。

 5番目の佐藤総合計画のコンセプトは、市民やまちを元気にする「ひろば型庁舎(敷地の4角にまちかど広場)」。ひろばには、地場産材を多く利用する。庁舎はS造の免震構造。庁内の1階に窓口、2階に散策が出来る丘のひろばに面した活動ゾーンで外からアクセス可能。3~7階は執務室と交流ひろば、8階に議会と展望、各階の執務室には固定壁を作らないようにする。駐車場は地上50台と地下205台。さらに、太陽光発電100キロワット(ひろばの手摺り50キロワット)や、夜の冷気を取り入れ冷房に利用や地熱利用など。また、実際の設計について、同社は「東京本社を拠点にする。市内業者とは密接に連絡をとる(メール含む)」と答えた。

 公開プレゼンで各企業は、甲府市の地理的特性を活かした太陽光発電、自然採光、通風、雨水の利用に工夫がみられた。その後の各選定委員からの質疑では、庁舎建設事業費は約93億円にのぼることから、実現性、工期、埋蔵文化財調査やランニングコスト、地元市内業者との対応-に苦慮していた。その後の各選定委員からの質疑では、庁舎の実現性、工期、埋蔵文化財調査やランニングコスト、 JVを組む地元市内業者との対応―に苦慮していた。 庁舎建設事業費は約93億円で、 設計など調査に7億5000万円、 現庁舎解体除去ほかに9億5000万円を見込む。

 なお、整備スケジュールは21年度に仮庁舎整備、新庁舎基本設計、22年度に仮庁舎への移転及び現庁舎の解体、新庁舎実施設計、23年度に新庁舎を建設し、25年度の供用開始を目指す。


【写真=熱心に聴講する出席者】


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