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県発注者に聞く/ISOは活かされているか

2004/01/30 埼玉建設新聞

 建設業界でもISOを取得している業者が増大。国土交通省は旧建設省の時代から取得を推奨してきた。埼玉県は9001と9002を取得すると主観点に35点、14001の場合は15点が加算される。このようなインセンティブが働くからこそ県内業者は取得に躍起になっている。

 各社が持つ品質管理のノウハウ・仕組みを工事に反映させることが目的となろうが、取得企業はISOを正しく理解し工事に活かしているのだろうか。品質確保は公共事業では当たり前のことなのだが、ISOを取得していると本当により一層品質確保がしやすくなるのだろうか。本県のISO取得を入札参加条件に明記した初弾案件「里見橋下部工」を例にどのように活かされていたのかを2日連続で検証する。初回は発注者が見た具体的に活かされた点にスポットをあてる。

 同工事は鴻沼川河川激甚災害対策工事の一環として実施され、13年3月22日に公募型指名競争入札で執行された。落札したのはさいたま市の業者で最終的な確定契約金額は1億8、872万3、850円だった。

 なぜ、同工事に対しISOの認証を条件にしたのだろうか。担当者は同時期の発注工事の中では比較的大規模だったことと、地下にNTTのケーブルが入っていたため工程と品質の管理などが他の工事よりも条件が厳しかったことをモデル工事に選定した要因と答えている。

 具体的にはどのように、ISOのノウハウが発揮されたのだろうか。

 県では工事担当監督員が施工中に幾度か書類を求める。書類とはISOの取得如何に関わらず、すべての工事に求めるもので、受発注者双方が所有している「県土木工事実務要覧・第1巻第2巻」に沿って行う。

 発注者が求める書類は、同要覧の中でも「出来形管理基準」「品質管理基準」に即したもの。出来形管理基準は石積、コンクリート、人孔など各工種ごとに項目が明記され、橋梁下部工事の場合だと「コンクリート橋台工」の欄に高さ、幅などの規格が明示されている。

 また、「品質管理基準」では「セメントコンクリート」の欄に、アルカリシリカ反応試験をどのように行うかなどを定めている。

 発注者によると求める書類が非常に見やすく、整然とし、品質のチェックがなされ相当ノウハウが活かされていると感じた。

 しかし、どの工事でも求める書類ならば納得のいく整然とした書類でなくてはならない。担当者は、受注者はいろいろな業者が存在し、常に完璧なものではないとしている。したがって、当該工事の受注者は品質管理の項目が多くしっかりとチェックし、発注者が納得のいく書類であり、品質管理の仕組みを良く理解していたのだろうと推測できる。

 総論すると、発注者である県は、期待どおりの品質管理がなされている工事の出来栄えだったISOのメリットを強調した。。

 第二回の明日は今後の課題と検証のあり方について進める。



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