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県の担当者に聞く/ISOは活かされているか(2)

2004/02/04 埼玉建設新聞

 昨日の紙面においてISOはどのように活かされているかを検証したが、第2回目のきょうは発注側の今後の課題、ISOの客観的評価について考えたい。

 建設業は下請けが多く同じシステムを共有することが望ましい。現状では認証取得を目的化し、それを品質管理へどのように活かすのかが問われている。

 現に国土交通省検討委員会にオブザーバーとして参加した時、当時の関東地方整備局の幹部は、「建設業ではさほど意味はない」と答えている。当時の幹部は、現在本省の課長職に就いているが、同検討委員会には上司である本省の審議官も参画しており、当然幹部の発言を了解しているものと受け取れる。

 零細企業が入り混じった下請け企業がISOについてどの程度まで理解しているのであろうか。

 里見橋下部工事を受注したさいたま市の業者も当然のことながら下請け通知を当時の浦和土木事務所に提出している。土工事、仮設工事、地盤改良、杭工事の4工種においてそれぞれ1者の合計4者を下請けにした。

 結論から言うと、下請のなかにはISOを取得してない業者も存在したが、県に提出する書類は元請がマネジメントし書類化した上で提出したため、連載1回目でも述べたように整然とチェックされ、これなら期待どおりの品質が確保されていることとの判断になる。

 元請の指導があればISOを理解しようがノウハウが異なろうが、発注者が求める書類は問題ないことになる。各社の品質管理のシステムを使いより一層品質の確保を好ましくするためにはISOの取得は条件付けた方が良いとする意見が県にあることも事実だ。一方、業者側には品質管理に充分注意を払えばISOの取得に関係なく、県が求める品質と提出書類は「楽々こなせる」という意見もある。

 昨日述べたように発注側の担当者も書類が良く、品質管理が充分なされているという判断材料はたぶんに「主観的部分」が多いと言うことは認めている。

 課題はその辺ではなかろうか?主観的部分ではなく、今後はいかに客観的指標を見出すかにある。県ではISO取得に主観点を加算するくらいなので、それなりの効果を発揮する義務が業者には生ずる。ただ取得すると自動的に加算されるのでは意味がない。どのように活かされたのか、個別事案で品質の審査もより一層厳しく見る必要があり、客観的な評価基準も内部で確立しなくてはならない。

 県ではとりわけ河川の橋梁、排水機場などの構造物の工事で今後もISOを入札の参加条件とする方針だ。これまでのISO対象工事を集約し検証した上で、何らかの客観的基準を設け活かされているのかを選別し主観点への反映を考えるべきではなかろうか。

 (この連載は渡辺喜光が担当)



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