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有設計室が最優秀者に決定/市原市「水と彫刻の丘」設計プロポ

2010/04/05 日刊建設タイムズ

 市原市は2日、「水と彫刻の丘」のリノベーションに伴う設計プロポーザルで、有設計室(東京都中野区新井2-30-2)を再優秀者、宮本佳明建築設計事務所(兵庫県宝塚市湯本町4-29)を優秀者に特定したと発表した。これを受けて有設計室と近く委託契約を結び、今年度で基本・実施設計を行う。工事は11~12年度の2か年で進める予定で、12年度末もしくは13年度当初のリニューアルオープンを目指す。なお、市はリノベーションの総工事費は4億円、設計料は2000万円をそれぞれ上限として、プロポーザルを実施した。プロポーザルの応募総数は231点、そのうち一次審査を通過した5者により、3月26日に2次審査が行われた。

 水と彫刻の丘は、1995年に市の観光と文化の拠点として高滝湖畔にオープンした。開館から14年を経過し、利用者のニーズの変化や設備の老朽化など様々な問題が生じてきたため、市民をはじめ多くの人々が、同施設を通して芸術文化、自然環境に触れ、楽しむことができ、さらに内外に向けて発信性のある施設として生まれ変わることを目的に、リノベーションを実施することにした。

 市は、生まれ変わった施設を市の芸術文化振興、観光振興、地域振興をはかるための中核施設として活用することにしている。また、施設は今後供用開始予定の首都圏中央連絡自動車道の(仮称)市原南インターチェンジに近接しているため、多くの観光客が訪れることが期待される。プロポーザルで選定されたプランをベースに基本設計を行った後、市が選定したアーティストと協働しながら実施設計を行う。

 最優秀者に選ばれた有設計室の提案は、既存建物はすべての仕上げ材をはがし、むき出しのコンクリート躯体へと還元。ここに「ART WALL(アートウォール)」と名づけた鉄骨造の壁を折り曲げ、コンクリート躯体を縫うようにして配置。「ART WALL」は片面が金属の折板、反対の面が白く抽象的な展示壁で、ときに建物外へとはみ出しながら白く抽象的な空間と、コンクリートと金属板に囲まれた荒く素材感がむき出しの空間を連続的に作り出す。白い空間は展示室として、荒々しい空間は休憩所やホールとして利用する。

 この荒々しい空間は、アーティストとの共同作業によってこれから作っていく空間で、ホワイトキューブに展示されるアートとは違い、建築空間の特性と呼応したアート作品の設置が、美術館をより魅力的にするとしている。プロポーザル審査でも、「既存建物と新しく導入するアートウォールが相互に貫入しあうコンセプトがきわめて斬新」との評価を受けた。

 また構造計画では、増築部分は既存構造物とエキスパンションジョイントにより切り離し、既存部分からは構造的に独立したものとする。さらに、配置計画を平面とし、トイレ等の衛生設備の位置変えない、材質に配慮するなどの点で、建設コストやランニングコストにも配慮する。

 なお、プロポーザルの募集要項で示された計画条件等は次の通り。

 【計画条件等】

 ▽改修の考え方=①市原市の「水と彫刻の丘活性化計画」(専用ホームページ内添付資料参照)を基に、ハード・ソフト両面において発信性のある施設とすること②来訪者が終日、芸術文化、自然環境に触れ、親しむことができる施設とすること③今回のリノベーションでは、プロポーザルで選定された設計者は、提案したプランをベースとした基本設計を行い、市が選定したアーティストと協働しながら実施設計を行うことが求められる。施設全体のアートディレクションは、市と契約したアートディレクターが行う。今回のプロポーザルでは、アート計画は求めない。

 ▽改修条件=①既存の建物の主要構造物には変更を加えないこと②建物全体に魅力的な印象を持たせること③美術品展示に適した設備計画、採光計画、セキュリティ計画等の対応をはかること④美術品の搬出入を考慮すること⑤芝生広場との一体的な利用が望める計画とすること⑥ランニングコストの軽減、削減に考慮した計画であること⑦アート計画に対応できる空間計画、設備計画であること⑧地下1階のため池は原則廃止する。ただし、残す場合はその利用方法について提案を行うこと。

 ▽計画諸室=①エントランスホール。ミュージアムショップを併設する。現行の入場口を廃止し、エントランスを移動することも可能②常設展示室(100㎡)。外光の遮断、調光設備ができるようにする。調湿できる設備を設ける。施設外に必ず増築もしくは建築すること③展示スペース小(150~200㎡)。外光の遮断、調光設備ができるようにすること。調湿できる設備を設けること④展示スペース大(200~250㎡)。外光の遮断、調光設備ができるようにする⑤多目的ホール(100~150㎡)⑥カフェレストラン。施設外に必ず増築もしくは建築すること⑦便所。男女別および障害者用を設ける⑧事務室。従業員6人程度⑨機械室⑩従業員更衣室。男女別とする⑪警備宿直室⑫湯沸し室⑬倉庫⑭一次保管庫(50㎡)。調湿できる設備を設ける⑮電気室。

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