あの水害を忘れまい―。記憶の風化を避け、多くの犠牲から得た教訓を生かし続けたい。同じ思いを胸に水辺に集まった50人余りの人々。7・13水害から6年を経た三条市諏訪1の五十嵐川破堤現場。午後1時15分、9人の犠牲者を悼み、平穏を誓う静かな時が流れた。
3月の嵐川橋開通で災害復旧事業の4橋梁架け替え工事が完了し、新たな水の流れが時の経過を感じさせる五十嵐川堤防。水害復興記念公園として整備された一角に献花台が設けられ、黙祷に続いて國定勇人三条市長をはじめ、市議会議長、県三条地域振興局長らが白菊を捧げ、犠牲者の冥福を祈った。
「6年が経ち、改めて亡くなられた9人の方の冥福を心からお祈りした。と同時に、国と県の尽力で堤防そのものはしっかりしたものになったが、私たちの責務として、安心、安全なまちづくりへの思いを新たにした」と感想を述べた國定市長。
「当時は参議院選挙直後で、正にオーバーラップする被災の日となった。思い出すと長い月日の様に感じる。多くの世帯が移転されたが、右岸側のシバザクラの植栽など、一つ一つの取組みで普段はやさしい川としてのイベントも考えていきたい。最近のゲリラ豪雨を見ると、いつ大きな災害が起きても不思議ではない。常に公助、共助、自助を意識して、特に災害時要援護者を社会全体でフォローする仕組みづくりをしていかなければならない」と行政としての決意を語った。さらに、本年から群馬大学の教授を防災アドバイザーとして迎え、減災、防災への提言を、現在の防災体制に反映する方針とも述べた。
昨年、川面を見下ろす河川敷に建立された観音像が静かに寄り添う慰霊碑。三々五々、手を合わせる人が訪れる川辺が、二度と悲劇の舞台になってはならない。
【写真=献花する國定市長と水害復興記念講演の慰霊碑】