法務省は先の国会で短期賃貸借制度の廃止を含めた、民法・民事執行法の一部改正案を提出、成立した。今回の制度改正により、これまでの短期賃貸借制度が廃止されて4月1日以降の新規の建物賃貸借契約で抵当権が設定されている借家・賃貸マンションなどに入居したテナントを保護する「明渡猶予制度」を創設。競売になった場合、競売開始前から入居しているすべての賃借人が競売・買受後6カ月間はそのまま居住できるようになる。
今回の改正は、担保物権となっている不動産を競売する際に、短期賃貸借を主張されたり、占有者が次々と変わって強制執行が出来ない等の理由で、正常な競売が妨害されたりすることを防止するのが主な目的。
これまでは、抵当権が設定された後に設定された賃借権であっても、土地なら5年以内、建物なら3年以内の、いわゆる短期賃貸借であれば、抵当権実行後の新しい所有者にも対抗できる、短期賃貸借の制度があった。
この短期賃貸借制度を廃止した代わりに、正当な建物賃借人を保護するため、抵当権者に対抗することのできる建物賃借人について、競売・買受後6か月間の明渡猶予制度を設けた。また、抵当権者に対抗できない賃貸借でも、登記したものであれば賃借権に優先する抵当権者すべての同意があれば、引き続き抵当権者・買受人にも対抗できる制度が創設された。
このほか、担保物権を不法占有したり、競売を妨害する「占有屋」を排除するため、売却のための保全処分の要件が緩和。これまでの「著しい価格減少行為」から、「著しい」の文言が無くなり、単に「価格減少行為」とだけとなる。また、その価格減少行為は「不動産の価格を減少させ、または減少するおそれがある行為」と規定され、不法占有を禁止・排除するための保全処分の申立が容易になる。