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茨城県建設業協会

設計変更へ適切対応求める/建設工事の諸問題を討議/国と協会が意見交換

2010/08/10 日本工業経済新聞(茨城版)

 国土交通省関東地方整備局(菊川滋局長)と(社)県建設業協会(岡部英男会長)との意見交換会が6日、水戸の県産業会館で行われた。毎年、建設工事の諸問題を話し合うもので、県土木部(進藤崇部長)もオブザーバーとして参加。毎年のように議題に上る設計図書や入札・契約、施工関係を中心に意見交換。協会側は、工事発注前の調整や設計変更への適切な対応、発注者間での意思疎通に、抜本的な改善を求めた。そのほか昨年から話題に上った敷き鉄板の運搬費の問題や、品質証明員の立ち会いなどが討議された。

 冒頭のあいさつで、菊川局長は「意見交換を踏まえ、低入札やダンピングの防止、また契約後には受発注者間のコミュニケーションを円滑に行い、受注後の採算を悪化させるような要因をつくらないよう取り組みたい。本日は貴重な意見をお願いしたい」とあいさつ。

 続いて進藤土木部長が「大型プロジェクトや重要港湾、地域に密着した道路整備、そして災害への対応と、インフラ整備のニーズが増している。その一方で、今年度の公共予算は厳しい。来年度予算は概算要求で10%減の話も出ており、そうなると茨城のインフラ整備は止まってしまう」と地元企業への優先発注を国に呼びかけた。

 そして、協会の尾曽正人副会長が「地方の建設業者は公共事業の減少による競争激化、利益率低下により体力を奪われている。そんな中、地域を下支えする役割として日々努力している。工事発注では、工事実施の基本的要件である施工条件を明示して頂くとともに、その条件に変更が生じた場合は対等な立場でワンレス対応をお願いしたい」と述べた。

 意見交換では、▽入札・契約関係▽設計図書関係▽施工関係―の3項目について協議。

 入札・契約関係では、総合評価方式のうち簡易な施工計画の点数化について、協会の石津健光副会長が「現場状況が類似した同種工事で、ほぼ同じ内容の施工計画書を提出した際、発注機関によって評価に大きな差が生じた。評価に疑問が残る」と説明を求めた。

 これに対し、関東地方整備局の箕作光一技術調査課長が「それぞれの工事の特徴や現場監督などを考慮して評価している。ただ、今日の意見を考慮し評価の中で対応したい。ガイドラインの中でも参考にしていきたい」と述べた。

 また石津副会長は、積算資料の単価と市場単価が大幅に違う点を、PHC杭の具体例を用いながら「建設物価や積算資料で27万円前後の杭が、メーカーからの見積もりでは73万円。40万円以上の差があり、現場はたいへん苦労した。積算資料だけでなく、できれば明確な見積もりを反映させて頂ければ」と説明。

 原俊彦技術管理課長は「外部有識者による審査委員会で調査プロセス結果を審議して反映させている。資材単価に意義がある場合は建設物価調査会が対応ができると聞いている。取引数量が少ないものについては特別調査で単価を設定して積算し、適切に対応したい」と返答した。

 続いて設計図書関係では、石津副会長が「概略設計で発注された際、詳細設計図の引き渡し時期が特記仕様書に明記されているにも関わらず、着手が遅れる例が多い。納期が守られないコンサルにどう対応しているのか」と述べ、尾曽副会長も「設計変更の件は言いたくても言えない業者が多い」と、さらには鈴木一良経営企画委員長も「この問題は一番重要」と適切な対応を求めた。

 これに対し、原技術管理課長は「昨年度は前倒し発注で概略設計が多かった。今年度はしっかり整理して発注してまいりたい。特記仕様書に明記しているものの、地元関係者との協議、調整に時間を要して設計時期が遅れる。設計変更審査会で対応してまいりたい」と説明。

 この件には菊川局長も「受発注者間の話だが、どうも発注者間で意思疎通がとれていない。抜本的な改善が必要だ」と、発注者間での連絡調整を蜜にする考えを示した。

 また、支障物件について石津副会長が「現場に入ると、電柱や電話ケーブルなどの支障物件が済んでおらず、工事に入れない。また、地元の同意を得ていないために着工できないケースがある」と返答を求めた。

 これに対し原技術管理課長は「発注前での対応が難しいこともある。その場合、占用事業者との事前調整をできるかぎり明示したい。やむを得ず中止する場合、設計変更審査会で適切に対応したい」と説明した。

 そのほか協会側は、増加傾向にある品質証明員の立ち会いについて、立ち会い段階の明示を求めたほか、現場技術員とのデータ交換にメール提出を可能とするよう要望。さらに、現場技術員を書類担当と施工管理担当の複数に分けず、ひとりとするよう求めた。

 また、事務所や出張所などでローカルルールの存在する場合があり、現場担当の技術者が苦慮している現状を説明。仕様書や基準などの運用、解釈の統一を求めた。

 フリーの討議では、昨年も話し合われた運搬費(敷き鉄板)の積算について、協会側から「規模に関わらず予算に計上するよう話があり、胸を撫で下ろしたが、出張所まで浸透していない。発注者間でさらなる意思疎通を」と求めた。

 そのほか尾曽副会長が、「このような場が持たれて十数年。以前よりも対等な立場で話せるようになったが、同じテーマを繰り返すということは改善頂いていないということ。是非、改善を」と適切な対応を求めた。


【写真=全景】

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