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業者の叫び①/先行施工指示は本当に正しい行為なのか/元請けも保護する施策を/先行施工指示で元請け不利

2010/10/13 日本工業経済新聞(茨城版)

 政権交代の転換期を迎え、国の公共事業費は対前年度比18・3%減と未だかつて無い削減幅に見舞われている。県においても国ほどの削減幅ではないにせよ、前年度比15・6%減を堅持するのがやっとの状況。この大きな時代のうねりの中で、地元建設業者の苦しみは、もはやピークを超えている。この状況を打開していくためには、建設業(社会資本整備)の意義をあらためて主張していくことが重要である。そしてその根幹である、受発注者間の友好的パートナーシップの締結のため、これまで胸の内に留めていた現場からの声を、少しでも多くの人に知ってもらうことも必要なのではないだろうか―。本紙では建設現場の生の声として「業者の叫び」を数回にわたって掲載する。第1回目は、「先行施工指示で不利な状況に立たされる元請け業者」を取り上げる。

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 受発注者間における契約は、本来、発注者と受注者が契約を取り交わし、受注者(元請け)が下請けと契約を交わすのが一般的な流れ。そして、これは追加や変更があった場合でも同じはずだ。しかし、追加、変更の工事の際には、この流れどおりではないという。

 ある元請け業者はこう切り出した。

「発注者からは下請けときちんと契約するよう指導するにも関わらず、発注者は変更や追加があった際、その手続きとして受注者に対して金額明示のない、紙一枚の先行指示(工事打合わせ簿)で施工をさせる場合がある。その際でも、発注者は受注者に対して下請けとの注文書の写しを提出するよう命じる。これを提出しないと仕事をさせてもらえない」

 発注者からの契約金が判らない(追加、変更の工事額)なかでの下請けとの取り決めは、一般的な経営感覚として考えられない。そしてその後、決定される追加変更工事額が逆ざやとなり、利益の下方修正を余儀なくされる場合がほとんどだという。

 例えば根固めブロックを1000個つくる内容で、途中、500個を追加することになったとする。通常なら、500個を追加するための金額を決めて契約を交わした上で、元請けは下請けと契約を交わし、その注文書の写しを施工前に添付する流れになる。

 それが、先行施工指示として契約しないで口約束にて作成させようとする。そして500個をつくった後、変更契約の時に本当に500個分の費用を見てくれるのかというと、そうではなく予算の関係上、480個程度しか見てくれないケースがあったという。

 ある元請け業者は「発注者が工事追加変更を金抜きの先行指示でするのであれば、元請けも下請けに対して同じことをやってしかるべきという考えになる。金額は元請けと下請けでの契約が決まった時にあらためて交渉させてもらえば逆ざやの発生を防止出来る」と主張する。

 また、ほかの元請け業者も「先に契約書を交わしてくれないのであれば、下請けと契約も後回しとなるのは当然ではないのではないか。契約書なしに仕事をさせておいて下請けとの契約書を提出させるのは虫がいい話」と憤りをあらわにした。

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 ことし3月、国土交通省は入札制度の更なる改善として、下請建設企業へのしわ寄せ防止策を発表。新たな下請代金保全策の導入検討や下請け企業の見積もりを踏まえた入札方式の試行、標準請負契約約款の改正検討などに取り組む考えを示した。

 このように下請け保護を重視する傾向にあるなか、元請け(受注者)に対する保護についてはどうだろうか。そもそも、そういう風潮がないのではないか。

 「追加変更であっても、きちんと契約してから施工指示するというように、手順に乗っ取って進めて欲しい。要求するばかりでなく、保護してくれる施策もしっかりと考えてほしい」と元請け業者は切望する。

 このような声に対し、発注者は「先行指示を受けても工事額がおおよそ分かるように図面や歩掛かりの公開、ユニットの単価合意などを行っているので、元請けさんに理解して頂いているはず」との見解を示す。

 「対象する総価の追加変更の工事額を先に明示して欲しい」と主張する元請け業者、それに対し「歩掛かりに応じて積算できるだろう」という認識を示す発注者。このような双方の認識の違い。さらには現場でのやりとりの中での微妙な食い違いが、業者に不満を募らせているのだろうか。

 発注者と下請け業者との間で〝板挟み〟になっていることを強調する元請け業者。追加変更工事の際、下請けが契約書で保護されるように、元請けも契約書で保護されるようなしくみが必要なのかもしれない。



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