県は、北茨城都市計画(北茨城市)の区域マスタープラン案(都市計画区域の整備、開発及び保全の方針)をまとめた。都市づくりの基本理念は「常磐自動車道などの広域交通網を生かし、商業・業務などの都市機能や産業技術の集積をさらに高め、観光・レクリエーション機能の一層の充実を図り、潤いと活力のある都市を目指す」。この区域は、区域区分(線引き)を定めないことにしている。また、現在整備中又はおおむね10年以内に整備に着手することを予定する主要な施設(都市計画施設)として<1>3・4・11豊田下駒木線<2>3・4・3平潟港線<3>3・4・21五浦海岸線-などを挙げている。
北茨城都市計画の区域マスタープラン案の概要は次のとおり。
●都市計画の目標
【都市計画区域の名称及び範囲】
◆名称…北茨城都市計画区域
◆範囲…北茨城市の一部
【都市づくりの基本理念】
本区域は、明治時代以降、漁業や石炭産業などを中心に栄え、昭和30年代前半には最盛期を迎えたが、エネルギー革命等により炭鉱閉山が相次ぎ、石炭産業は衰退した。その後、国道6号や常磐自動車道などの広域的な交通体系の整備が進展したことや、磯原、中郷等において積極的に工業団地の開発等を進めたことから、製造業を中心とする産業が集積してきた。
今後、本区域を含む県央・県北地域では、日立市や水戸市、ひたちなか市を中心とした水戸地方拠点都市地域において、地域交通網や国際流通港湾・常陸那珂港の整備効果を生かして、商業・業務などの都市機能や産業の集積をさらに進め、当地域の均衡ある発展を先導していくことが期待されている。
このような状況を踏まえて、本区域では、次のとおり都市づくりを進める。
◆常磐自動車道などの広域交通網を生かして、商業・業務などの都市機能や産業技術の集積をさらに高めるとともに、21世紀FIT構想など県際地域との広域ネットワークの形成を図りながら、恵まれた自然環境を活用して観光・レクリエーション機能の一層の充実を図り、潤いと活力のある都市を目指す。
【地域ごとの市街地像】
◆北茨城市街地地域
JR常磐線磯原駅を中心とする地域は、商業・業務、工業、住宅等が集積しているほか、海岸部は磯原海水浴場の一部となっている。今後、土地区画整理等の面整備事業を推進しながら、商業・業務機能などの充実を図り、中心市街地の形成を図る。
また、駅周辺地区を同心円状に取り巻く既存の住宅地は、都市計画道路及び都市公園等の都市基盤整備を計画的に推進し、居住環境の向上を図る。
中郷町に開発された住宅団地周辺は、良好な生活環境の維持と整備に努める。
◆大津・平潟市街地地域
常磐線大津港駅を中心とした地域で、大津漁港から平潟漁港にかけて市街地が形成され、東は海に面し、美しい眺望で知られる五浦海岸や長浜海水浴場などがある。
本地域では、漁港の整備を進めて水産業の振興を図るとともに、休憩所や駐車場など観光基盤の整備を進めて、観光・レクリエーション機能の充実を図る。
◆工業系市街地地域
磯原工業団地及び中郷工業団地は、国道6号バイパスなどの広域幹線道路や工業用水の整備を進めて、工業地域として今後とも良好な工業環境の維持向上に努める。
◆既存集落地域
地域の実情に応じて生活基盤整備を進め、居住環境の向上や活力の維持を図る。
●区域区分の決定の有無
本都市計画に区域区分を定めない。
本区域は、これまで区域区分を定めず、農林漁業との健全な調和を図りながら都市づくりを進めてきたが、近年、本区域の人口の増加傾向はほぼ停滞しており、周辺都市などから強い市街化圧力を受けている状況がないことから、今後、急激に人口及び産業が拡大する可能性は低いものと考えられる。
本区域の市街地外における農地や緑地などの自然的環境は、農業振興地域の整備に関する法律や森林法など他の法令によって、おおむね保全が図られており、無秩序に市街化が進行する恐れは少ないと考えられることから、区域区分を定める必要性はない。
●主要な都市計画の決定の方針
【土地利用に関する主要な都市計画の決定の方針】
◆主要用途の配置の方針
<1>商業・業務地…磯原駅周辺や大津港駅周辺、大津港周辺等に商業・業務地を配置する。磯原駅周辺は、土地区画整理事業によって整備された駅前広場や街路等を中心に、活力とにぎわいのある都市拠点の形成を図る。
大津港駅周辺や大津港周辺は、地域を対象とした商業・業務地として機能の充実を図る。
<2>工業地…計画的な整備を図る工業地として、中郷工業団地、磯原工業団地を配置する。周辺の居住環境や自然環境に配慮しつつ、生産環境の維持・向上を図る。国道6号の沿道等に既存の工場等による工場地を配置する。
<3>住宅地…商業・業務地の周辺に住宅地を配置し、道路・公園・下水道等の都市施設の整備を図るなど、住宅地としての良好な環境の形成を図る。
汐見ケ丘地区など計画的に整備された住宅地は、良好な居住環境の維持を図る。
【都市施設の整備に関する主要な都市計画の決定の方針】
◆交通施設
<1>整備の方針…本区域は、東西をそれぞれ太平洋と阿武隈山脈とに挟まれ細長い市街地を形成しているが、南北・東西方向の主要幹線道路の整備が遅れているため、国道6号などの幹線道路では交通渋滞が慢性化している。そのため、本区域は、常磐自動車道や国道6号を中心とした幹線街路網の構築を図る。
また、道路交通の混雑を緩和し都市環境の改善を図るため、JR常磐線や市街地間を連絡するバスなどの公共交通機関の積極的な利用を促し、交通需要マネジメント(TDM)を促進する。
<2>主要な施設の配置の方針
・自動車専用道路…東京から東北地方に延びる常磐自動車道を配置する。
・主要幹線街路…自動車専用道路と連携し、本区域内外の都市拠点間を連絡する主要幹線街路として、国道6号、県道日立いわき線、都市計画道路豊田下駒木線、二ツ島木皿線等を配置する。
・都市幹線街路…主要幹線街路を補完し、本区域内の市街地間を連絡する都市幹線街路として、都市計画道路磯原二ツ島線、二ツ島中妻線、豊田西丸線、平潟港線、神岡五浦線、五浦海岸線、北町浜田線、北町関本下線、二ツ島・関本中線、久保ノ内細ノ原線、金付矢萩線、引地坂口横場線等を配置する。
・その他…交通の結節点となる鉄道駅において、交通処理の円滑化を図るため、駅前広場の整備を促進するとともに、駅舎や駅周辺における交通施設等のバリアフリー化を図る。
また、駅周辺や中心市街地において、自動車交通の増加に伴う駐車場需要に対応するため、駐車場の整備を図る。
<3>主要な施設の整備目標
現在整備中又はおおむね10年以内に整備に着手することを予定する主要な施設(都市計画施設)は、次のとおりとする。
※主要幹線街路…3・4・11豊田下駒木線
※都市幹線街路…3・4・3平潟港線、3・4・6北町浜田線、3・4・16金付矢萩線、3・4・20二ッ島・関本中線、3・4・21五浦海岸線
◆下水道及び河川
<1>下水道…市街化の動向や道路などの都市施設整備と十分に整合を図りながら効率的な施設整備を行い、本区域における生活環境の向上と公共用水域の水質の保全を図る。
汚水に係る下水道施設の整備は、人口や産業が集積している地区や計画的な開発による市街地整備が行われる地区から重点的に進める。
市街地の雨水の排除は、放流河川の整備と十分に整合を図り、排水施設の整備を進める。
<2>河川…洪水による浸水被害から地域の安全を確保するため、河川改修など適切な治水対策を進める。
河川流域において親水性などを生かした憩いや交流の場の整備を進めるとともに、水質の浄化や水辺環境の保全など、環境にも配慮した総合的な河川整備を進める。
<3>主要な施設の配置の方針
・下水道…汚水処理は、北茨城公共下水道の整備を促進するとともに、処理区域の拡大を図る。市街地の雨水排除は、河川や農業関連の計画と調整を図り、ポンプ場や雨水管渠の整備を進める。
・河川…本区域の河川は、大北川や花園川、里根川等が流れており、市街地の雨水はこれらの河川に排水されている。これらの河川は、洪水による浸水被害から地域の安全を確保するため、河川改修など適切な治水対策を進める。
<4>主要な施設の整備目標
現在整備中又はおおむね10年以内に整備に着手することを予定する主要な施設(都市計画施設)は、次のとおりとする。
※単独公共下水道…北茨城公共下水道
◆その他の都市施設
<1>火葬場…1箇所(北茨城市葬祭場)を配置する。
<2>汚物処理場…1箇所(北茨城市環境センター)を配置する。
【市街地開発事業に関する主要な都市計画の決定の方針】
◆主要な市街地開発事業の決定の方針
本区域における市街地開発事業は、これまでに磯原駅西地区における土地区画整理事業などが積極的に行われてきた。今後は、既成市街地において都市機能の更新や居住環境の改善、防災性の向上を図るための事業を重点的に行う。
さらに、市街地内の農地や工場跡地などの低・未利用地は、土地区画整理事業等を行うことによって道路や公園などが整備された良好な市街地の形成を図る。
【自然環境の整備又は保全に関する都市計画の決定の方針】
<1>主要な緑地の配置の方針
・環境保全系統…大北川など河川周辺の緑地や、西部に連なる丘陵の斜面林、平地部にまとまった平地林等は、本区域における自然環境の骨格を形成しており、野生動植物の生息・生育地として、CO2の吸収や大気の浄化等の環境への負荷の軽減などといった観点から重要なものであることから、積極的な保全を図る。
・レクリエーション系統…住民の日常のレクリエーション需要に対応するため、街区公園などの住区基幹公園や農村公園などの整備を促進するとともに、人々の生活に密着した社寺境内地の保全を図る。
また、週末のレクリエーション需要に対応するため、スポーツ・レクリエーション機能を持った運動公園など都市基幹公園の整備を進める。
・防災系統…地震や火災などによる都市災害に対応するため、災害時に住民の避難地となり、延焼遅延効果がある緑地や農地の保全を図る。斜面崩壊などの自然災害に対応するため、丘陵地などの斜面林の保全を図る。
・景観構成系…市街地の周辺に残された緑地など自然景観を維持するため、丘陵地の樹林や、五浦海岸の樹林など太平洋と一体的な景観を構成する緑について保全を図る。潤いのある都市景観を創出するため、幹線道路等の緑化に努める。本区域内に点在する集落地の屋敷林や社寺林など昔ながらの安らぎをもたらす景観の保全に努める。
<2>主要な緑地の確保目標
現在整備中又はおおむね10年以内に整備に着手することを予定する主要な公園緑地等(都市計画施設)や、おおむね10年以内に指定することを予定する緑地保全地区等(地域地区)は、次のとおりとする。
※都市計画公園…磯原中央街区公園、豊川街区公園、豊田第1街区公園、豊田第2街区公園