記事

事業者
(一社)千葉県建設業協会

人々に頼られる「建設業の真髄」を/建設業協青年部会視察 子供たちには瓦礫の山が「王蟲」(オーム)に

2011/06/27 日刊建設タイムズ

 東日本大震災における被災地の復旧活動を支援するため、(社)千葉県建設業協会青年部会(宇井和則部会長)の一行13人は、震災発生から99日目にあたる今月17日、(社)岩手県建設業協会青年部連絡協議会大船渡支部(長谷川順一支部長)と宮城県建設業青年会(舩山克也会長)を訪問。支援物資を届けるとともに、被災地の現状を肌で感じ、懇談の場では地元建設業の奮闘の数々を知った。(21日付1面で一報)

 最初に訪れた(社)岩手県建設業協会青年部連絡協議会大船渡支部では、長谷川支部長らが応対。津波による壊滅的な被害を受けた陸前高田市及び大船渡市の現状と、津波発生当時の様子などを聞いた。

 長谷川支部長によると、18人いる大船渡支部の青年部会員のうち、今回の津波被害により、陸前高田市の役員だった一人の青年部会員が死亡。また、陸前高田市内の会員事業所では、代表者が亡くなられた会社が7-8社あり、事務所が津波で流されなかった会社は数えるほどで、未だ同市内には行方不明者が600人程度いるという。

 「大船渡市と陸前高田市は隣合わせだが、津波の被害状況は違った」――。

 長谷川支部長によると、陸前高田は「海から真っ直ぐ太平洋を臨める」という感じだが、大船渡の地形は、街から海を見ようとしても外海まで見えない状況にあるという。

 「地元の旭市で津波の被害を受けたが、瓦礫の量一つを取っても、あまりにも規模が違いすぎることに言葉を失った」という千葉県協会の青年部会員の感想には、「すっぽりと町がなくなってしまったという感じがする。また『臭いの二次災害』とでも言うか、ハエの数も凄い」と応えた。

 現在の状況については、「瓦礫の撤去の段階で、復旧までにはまだ時間がかかる見通し。瓦礫の処分方法は、災害廃棄物のうち『食品関係』や『木片等』は最終処分の流れで、『アスがら』『コンがら』に関してはまだ決まっておらず、話にも上がっていない部分もある」と説明。支部会員のほぼ全社が瓦礫の撤去に追われる現状については、「今回被災したエリアでは、『早く復旧工事がしたい』という思いはどこでも同じだと思う」と代弁した。

 陸前高田市内の自社が津波で流され、現在までに仮事務所で営業を再開した長谷川支部長は、3月11日の震災当時の状況について、「市庁舎が全壊し、学校以外で残った公共施設は給食センターのみ。ガソリンスタンドをはじめ、スーパーマーケットもコンビニもすべて津波に流され、停電によりラジオのみでの生活が1か月以上続いた場所もある。携帯電話もまともに通じたのは4月に入ってからだった」とし、さらに、震災当日については「交通網や通信網まですべてが壊滅的だったことから、まず近所で重機が生きている(使える)会社を3社を探し当て、その日の夜から消防と森林組合と協力し、道路の啓開作業にあたった」と振り返る。

 「その後の作業員の確保」についての問いには、「大船渡と陸前高田とでは体制が違うが」と前置きしたうえで、大船渡市の場合は「緊急雇用対策により、市役所を中心に失業者などを優先して建設会社に勤務させるかたちを取っていた。第1回、第2回と各300人の応募があったが、我々建設業で雇い入れ出来たのは200人程度だったと思う」と説明。

 一方、陸前高田市では市庁舎が全壊したことから、「かなり出遅れた部分があるが、全国の方々からの支援により、市役所職員などを各市町村から派遣して頂き、今では大分体制が整ってきている」と弁。

 雇用の面では、「まだ大船渡市のような対策が出来ていないため、建設会社各社の判断で進めている」としたうえで、「大部分の建設会社は、例えば今まで『5人』だった従業員が『10-15人』に増えているが、やはり職人が足りない」と指摘。

 さらに氏は「もともと絶対数が少ない大工などは、これからは一般住宅の改修工事などが増えることになる」との見通しを示す一方で、「(職人不足が)一時的なものなのか否かは、もう少し様子を見なければならない」と言葉を選んだ。

 「市の総合計画がある程度決まってくれば、前に行くスピードも少しずつ速くなると思うが、まずは我々が出来ることをやらねばと強く感じている」とした氏は、一方で「働く場所がなくなってしまった陸前高田市で、このまま復興計画がスタートした時に、『果たして何人残っているか』である。人がいなければ本当の復興にはならない。その辺をどのように進めていくかが、岩手県沿岸エリア全域に共通する課題だと思う」との認識を示した。

 他方、地元の子供たちから見た現在の陸前高田市について言及した氏は、「その雰囲気や重機で積み上げた瓦礫の形状などから、皆んな口ぐちに、宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』の映画に出てくる腐海最大の蟲の『王蟲(オーム)だ』と言う」ことも明かしてくれた。

 後日、長谷川支部長に「今回の大震災で敢えて得たものは」と質問したところ、「自分たちの生まれ育ったまちは、自分たちで守るしかないという気持ちが強くなった。また、本当の意味で市民や役所に頼りにされ、本業を通じて我々の価値を高められる『建設業の真髄』(奥義)を究めた気がする」との答えが返ってきた。












 



  


紙媒体での情報収集をご希望の方は
建設新聞を御覧ください。

建設新聞はこちら