二〇〇一年一月から国土交通省に衣替えするため、今夏の建設省幹部人事の異動ルートは実質的に最後となりそうだ。そのキャリア組の人事が今週半ばには内定される。
官僚トップの事務次官は、タスキ掛け、あるいは二頭立て馬車などといわれるとおり、事務官の官房長と技官の技監からの交代制で昇格される。事務官が支配する霞が関官僚の中では、技官との交替制が存在するのは建設省のみである。官房長に就任すると必ず次官に昇格できるため、官房長は「次官待ちポスト」との異名をとる。ところが、技監には一年技監と二年技監が交互に就任する慣習がある。一年就任技監は、技監を最後に勇退。つまり、技監は一人置きにしか事務次官に昇れない、それも、二年就任技監だけが事務次官に昇格する。
ところが、昇格しても技監の事務次官任期は、官房長からの二年任期に比べ、一年でしかない。ただし、九十八年人事のように、技官の橋本鋼太郎・事務次官と佐藤信彦・技監が共に技官人事のように横並びする場合のことを踏まえての規則ともいえる。
また、トップの事務次官の入省年次を超えてはならない掟もある。仮に事務次官が入省三十九年組なら、先輩も同僚組も勇退しなければならない。簡単にいえば、建設省を含む中央官僚の出世レースは、厳格な同僚レース、入省年次レース。これが黄金則として長く定着しているルールである。省庁再編後は不明だ。
現在、国土交通省の省庁再編を睨んで、建設、運輸、国土、北海道の四省庁の担当人事課長などを中心に、新たな人事の枠組、ルールづくりが練られていると言われる。そこで、事務次官だけは建設と運輸のタスき掛け人事が内定したとされている。
話しを戻す。次官、技監に次ぐ官房長ポストに就任すれば、官房長任期三年と事務次官二年の五年が保証される。官房長には建設経済局長経験が必須条件となる。当然、建設経済局長で勇退するもの、一般的に上がり職と言われる総務審議官コースに行くものも出てくる。今回の人事で、橋本事務次官と佐藤技監が勇退し、小野邦久・官房長の事務次官昇格が確実視されている。後任の官房長には、同期である木下博夫・建設経済局長と小川忠男・総務審議官の一騎打ちが取り沙汰されている。一人が官房長に就任すれば、もう一人は勇退を余儀なくされる。
いま、建設省あげて大手元請業者を中心に業界再編に取り組んでいる。実質は建設経済局の業務で本日中にも原案を取りまとめる段取りになっている。これは建設経済局長の実績づくりの一つとの見方もあり、これを受けて官房長には、木下建設経済局長の昇格が噂され始めている。
技監コースは、道路、河川の両局長からの交互昇格が定番だが、ここ最近、道路局長から二年就任技監を輩出し、事務次官に就任するケースが目立つ。同期の井上啓一・道路局長か青山俊樹・河川局長が最大の候補になっている。
道路、河川の両局長以外には技監への昇格コースはない。その道路、河川の局長には、基本的に東北、関東、近畿、中部、北陸、中国、四国、九州の八地方建設局長、および技術調査官などからの昇格が常道。鈴木道雄、三谷浩、藤井治芳、藤川寛之、橋本鋼太郎、佐藤信彦局長ら、ここ六代の道路局長はいずれも、そのパターン。しかも、藤川寛之局長を除くとすべて技監に昇格、さらに言えば、佐藤・現技監を除けば全員が事務次官まで昇りつめたほど道路畑が優勢に見える。
道路畑の場合、経済調査室長、高速国道、有料道路課長などを経て、企画課長から地建局長へ出向するのが一般的。藤川寛之、橋本鋼太郎、佐藤信彦、井上啓一局長らは、すべて例外なく道路局企画課長からの局長昇格だ。つまり、道路局企画課長こそが道路局長への道といえそうだ。とすれば今回の人事で佐藤信秋企画課長が地建局長に出向し、道路局長に昇格する公算は大きい。道路畑と同様に、河川局長になるケースも地方建設局長からの就任が一般的。
地建局長は道路、河川両局から技官課長からの就任が常道だが、尾田栄章・中部地建局長の技術審議官、、山中敦・四国地建局長の技術調査官からの例などもあり就任はまちまち。
一般に道路は高速国道課長などから、また、河川は計画、治水、開発課長などから昇格するケースが多い。現在、地方建設局長は入省四十五年組、四十六年組が主流。
建設省の人事序列は、中二階といわれる審議官(次長級)を除くと、事務官では大臣官房の人事、文書、会計、政策の部屋持ち四課長が、同列の入省年次で出世レースを競っている。いま時流に乗って人事課長の手腕が省庁再編という名の人事革命で試され、文書や政策課長を乗り越え人事課長が次官レースのトップに立っているといわれる。通常、昇格コースは、企画官、官房企画官、室長、建業等通常課長、中枢四課長を経て、審議官(次長)、建設経済局長、官房長へ昇りつめるコースが一般的だ。
伴・元事務次官(入省三十八年組)の場合。室長、通常課長、人事課長を経て、審議官、建設経済局長、官房長、事務次官に。小野邦久官房長(入省三十九年組)の例。建業課長、会計課長、審議官、建設経済局長、総務審議官、官房長、そして今回、事務次官に内定。木下建設経済局長(四十二年組)も建業課長、会計課長に。審議官は経ずに都市局次長、都市局長、建設経済局長に就任。将来的には、この出世コースに乗っているのが、風岡典之審議官(四十四年組)、三沢真審議官(四十五年組)、峰久幸義人事課長、竹歳誠会計課長(ともに四十七組)らが有力視されている。