記事

事業者
(一社)千葉県建設業協会

入札契約や総合評価への提案など/県土整備部と建設業協会が意見交換会 県から小池 荒木部長ら

2011/10/17 日刊建設タイムズ

 県県土整備部(小池幸男部長)と(社)千葉県建設業協会(鈴木雅博会長)との意見交換会が14日、千葉市内のホテルポートプラザちばで開かれ、県から小池部長をはじめ荒木博美・災害・建設業担当部長、色部剛史・次長ら22人、協会からは、正副会長をはじめ各支部長ら25人の総勢47人が出席した。

 内容は、協会からの意見・提案事項の趣旨説明をはじめ、それらに対する県の回答と県施策に関する説明(検討課題についてのフォロー)、フリートーキング、県からのお知らせなど。

 意見交換に先立ち、双方を代表して先にあいさつした鈴木会長=写真右=は「今月に入り、公共事業を巡る情勢の風向きに変化が表れている」とし、「前政権が2011年度予算で執行を留保していた5%の公共事業費を、本県出身の野田総理の内閣が解除し、ただちに地方自治体に配分する方針が示されたことに『意義がある』と思う」と述べるとともに、「今後、直轄事業分1000億円、補助事業分2000億円の合わせて3000億円が、既存の公共事業に対する追い風になっていくものと期待している」と弁。

 この留保分事業費の執行について氏は、「今月3日に開いた全国建設業協会の関東甲信越地方ブロック会議でも、業界側が国土交通省幹部に強く要望した事項であり、そうした活動が奏功したのでは」との考えを示した。

 一方、同協会が7月に県内外の関係直轄機関を回り、「地域で必要とされ信頼される建設業」が永続的に活動していくことができるよう、県内建設企業に対する受注機会の確保を要望したことに言及した氏は、「先般の台風12号、15号による洪水被害等でも明らかなように、日本国土の自然災害に対する備えは依然として弱く、安全・安心な国土づくりに向けた地元建設業の役割を含めた一層の取り組みが必要であろうと意識している」と強調。

 この日の意見交換については、「県の入札契約制度や現場での対応等について、県土整備部の幹部のご所見を伺うことをはじめ、発注機関・受注者間の共通する課題等について意見交換させて頂くとともに、皆さんの忌憚のないご所見を伺いたいと念願する」と述べ、あいさつとした。


 社会資本整備の3つの視点

 これを受けて、小池・県土整備部長=写真左=は、まず「3月11日の東日本大震災での県内被災地において、建設業協会の皆さんによる復旧工事のご尽力に対し、御礼申し上げたい」と弁。

 次いで、「私の社会資本整備における3つの視点を紹介させて頂く」とした氏は、「一つは安全安心であり、いわゆる『県土の安全と県民の安心』に力を入れたい。また、長いスパンで続いている地域経済の疲弊に対する『地域の活力の推進』、そして、我々21世紀に住む者にとっての『潤いのあるまちづくり』という、これら3つの視点に立って社会資本整備を維持推進していくことが大変重要であろうと思う」との考えを示した。

 震災関連については「災害査定はすべて終了し、結果的に県と県内市町村を合わせた災害決定額は335億5900万円となった」と報告したうえで、「これはあくまでも災害査定で、国で行った分である。当然ながら、査定から洩れたそれ以外の災害関連工事もある」と指摘。「それらを含めて、我々としては早急に発注し、復旧復興に繋げていきたい」との意向を示し、既にかなりの発注を行っていることも付け加えた。

 また、台風15号の被害については、「これから災害査定に入るが、海岸部を中心として被害を受けており、被害総額は5億円を試算。今後速やかに対応していきたい」との方針を示した。

 一方「5%の執行保留分の解除」については、「今月7日の閣議において財務大臣から方針が示されたが、本日、通知を頂いた。千葉県は市町村を合わせて50億円の事業費となる」と説明したうえで、「県財政も国の財政も厳しい中ではあるが、私どもとしてはこれらの事業費を大事にしっかりと確実に実施していきたいと考えている」と弁。

 「建設業の皆さんにおいては、地域のインフラの推進と維持管理はもとより、『地域防災力の強化』という観点からも、非常に重要な役割を果たしているところである」と述べた氏は、「地域の雇用という面でも非常に重要だと認識している。従って建設業の皆さんが、この厳しい状況を乗り越えていけるような施策を進めていくことが大事だ」との考えを強調。

 最後に、「本日は入札契約制度を中心とした議論になるかもしれないが、私どもはしっかりと皆さんの意見を聞き、それらを踏まえながら改善に繋げていきたいと考えている」と述べ、あいさつを結んだ。

 この日の協会側からの提案・要望事項は、①入札・契約手続き、発注方法及び総合評価方式等のあり方等に対する提案②設計内容や積算価格等の課題③設計変更手続き、着工に至るまでの問題点――の3項目。これらを小別すると合わせて13問に及び、それぞれに対して県側が回答を示した。( 面に「県土整備部・関係出先機関に対する提案・要望」と出席者。県の回答は後報)

 (1面参照)

 【入札・契約手続き、発注方法及び総合評価方式等のあり方等に対する提案】

 (1)一般競争入札の技術資料の継続学習(CPD)の取得状況(様式第6号)の学習履歴の証明期間について、様式6号には(注2)が記されている。この期間は、今まで公告日より起算していたが、証明書発行団体の証明が取得できれば、前年度以前の証明でよいのか。入札のたびに発行手数料がかかるうえに、前払い制になったことで、発行までの日数がかかるようになったため、公告日からの起算としているのなら年度単位にして、1年間使用できるようしてほしい。

 (2)工事発注時期について、2/4期後半から4/4期前半に発注される工事が非常に多い。結果的に、建設業者が雇用している技術員の稼働は、毎年9月から3月までの期間に集中しており、4月から8月までは事務所で待機、9月から3月までが1年分の稼働期間となっている。建設業で健全経営を行うには、受注の確保が重要であり、そのためには技術者の確保が必要になるが、前述のような状況では遊休期間の技術員経費で一般管理費の大部分を占めるようになっている。「年度初めの早期発注」及び「年度末・繰越し工事」の発注を増やしてもらうことにより、効率的な技術員の稼働となる。地方自治法や職員異動等の問題もあると思うが、建設業にとっては、大きな問題であることを認識し、配慮してほしい。

 (3)総合評価の施工計画提案について、過大な提案は評価しないとなっているが、何が評価されているのか苦慮している。国交省は公表しているので、千葉県も具体的に公表してもらいたい。

 (4)ダンピング防止対策として、今年8月から低入札価格調査基準価格、最低制限価格の引き上げを実施したが、より一層の引き上げをお願いしたい。ちなみに、新潟県では91%のラインにまで引き上げられている。

 (5)県内・県外の区別のない入札において、総合評価方式の項目で県外に有利な技術開発実績が加点の対象となり、地域要件(防災協定)、優良工事が加点とならない案件があった。県内・県外企業が同じ土俵においての入札が増えて、技術開発実績を加点するのであれば、防災協定、優良工事、80点以上取得した技術者に対する加点等を同じ扱いにしないと不公平ではないか。検討して頂きたい。

 (6)優良工事及び工事成績80点以上取得の技術者の取扱いについて、優良工事の加点は2年間有効であるのに、技術者の加点は1年間であるが、むしろ技術者においては、仕事に誇りを持ち定着率を高めるためにも、3年間位有効の加点対象として頂きたい。

 (7)工事事故について、現在、県は労災事故で指名停止、文書注意、ロ頭注意等1年から2年間との重い処罰になっている。工事に事故はつきものとの考えではないが、事故が発生する確率が、工事を多く施工すれば施工するほど高くなってくる。よって、労災事故の取扱いを3か月程度で減点が消える国と同等程度にして頂きたい。

 (8)県では、災害復旧事業の実施に当たっては「災害復旧事業の早期復旧に向けた手続きの簡素化について」に基づき進められると聞くが、災害復旧以外の工事についても「早期に発注する必要があると思われる工事」については、これに準じた取り扱いをお願いできないか。

 【設計内容や積算価格等の課題】

 (1)設計に計上されている交通誘導員の人数について、どの様な状態の時に配置するのか、どの個所に何人配置するのか特記仕様書に明示願いたい。 我々が実際に工事を受注して交通誘導員を配置する場合には、設計に計上している人数で収まる事が非常に少ない。ほとんどの場合、設計人数をオーバーしている。安全管理上・近隣対策上、おろそかにできない要件である。

 そこで、特記仕様書で明示できないのであれば、契約後、交通誘導員の配置に関して、工事工程を考慮し安全・近隣対策を勘案の上、協議に応じ現実的な交通誘導員の人数を確定し、設計変更として取り扱っていただきたい。

 (2)任意仮設の参考図として示される考え方が過少で、計算上は問題ないとしても、実際の施工にそぐわないことが多い。例えば、2級河川を大型土嚢で締切る等、安全を無視した設計と言わざるを得ない。

 (3)設計内容を正確に把握するために、設計図書の下記内容等について、なるべく数量の明示をお願いしたい。

例:敷鉄板等仮設材の損料日数・水替え日数・土砂、廃材等の運搬距離・仮設材、重機等の運搬距離

 【設計変更手続き、着工に至るまでの問題点】

 (1)工事発注時における、未買収用地や借地問題、電柱移設・埋設物の切回し、関連工区の進捗状況予定等を、「施工条件の明示」として、設計図書に示してほしい。受注後、工事に速やかに着工できず工期延長等を行うと、請負者として工事完了時の「工事評定」に、いかなる理由があっても決して良い印象を与えていない。

 また、主任技術者を長期間拘束されることにより受注の機会を逃すことにもつながる。

 (2)仮設については、請負者が施工性・経済性・安全性から現場にあわせて施工する場合が実際のところ多く、指定や任意などの区別自体が不自然ではないか。柔軟な変更協議が望ましい。

 「そのことも分かっていて受注したはずだ」という、発注者の逃げ道になっているのではないか。

 □意見交換会出席者

 〈県土整備部〉小池幸男・部長▽荒木博美・災害・建設業担当部長▽色部剛史・次長▽小高千弘・県土整備政策課副課長▽鯉渕 彰・技術管理課長▽渡邉政利・技術管理課副技監(兼)企画調整室長▽楠本保郎・技術管理課副技監(兼)技術情報室長▽岩井昭則・技術管理課副技監(兼)技術審査室長▽石田大喜・建設・不動産業課長▽神作秀雄・建設・不動産業課副課長(兼)建設業・契約室長▽田村智由・建設・不動産業課建設業・契約室主査▽久保田曄・施設改修課長▽大道 等・千葉土木事務所長▽齋藤甚一・葛南土木事務所長▽榊 邦廣・東葛飾土木事務次長▽髙浦 操・印旛土木事務所長▽土屋 謙・山武土木事務所長▽簾 壽志・長生土木事務所長▽安田武夫・安房土木事務所長▽大林正章・君津土木事務所長▽大野二三男・千葉港湾事務所長▽新井 守・印旛沼下水道事務所長

 〈建設業協会〉鈴木雅博・会長(太陽物産㈱代表取締役)▽阿部典義・副会長(阿部建設㈱代表取締役)▽式田秀穂・副会長(式田建設工業㈱代表取締役)▽高橋順一・副会長(㈱高橋工務店代表取締役)▽畔蒜 毅・副会長(㈱畔蒜工務店代表取締役)▽内山弘通・副会長(鈴木土建㈱代表取締役)▽船越博文・千葉支部長(㈱船越組代表取締役)▽保戸田泰夫・京葉支部長(㈱保戸田組代表取締役)▽菊地政廣・市原支部長(新千葉建設㈱代表取締役)▽山本章裕・東葛支部長(山本建設工業㈱代表取締役)▽宮村良典・北総支部長(東邦建設㈱代表取締役)▽石井良典・香取支部長(石井工業㈱代表取締役)▽岡田知益・銚子支部長(岡田土建㈱代表取締役)▽小原久幸・八日市場支部長(小原建設㈱代表取締役)▽長谷川富美夫・山武副支部長(庄司工業㈱代表取締役、代理)▽片岡暉雄・長生支部長(片岡工業㈱代表取締役)▽平野英一・夷隅支部長(㈱平野建設興業代表取締役)▽中野高明・鴨川(本部理事)(㈱十文字土木代表取締役、代理)▽白幡 賢・館山支部長(白幡興業㈱代表取締役)▽青木孝行・君津支部長(㈱青木建材土木代表取締役)▽内藤栄男・本部理事(京葉工管㈱代表取締役)▽竹内義政・土木技術委員長(竹内建設㈱代表取締役)▽蓑輪 昇・専務理事(事務局)▽藤田正治・総務課長(事務局)▽平林兼治・広報課長(事務局)


紙媒体での情報収集をご希望の方は
建設新聞を御覧ください。

建設新聞はこちら