日本企業のニーズに合ったベトナム人実習生を育てようと、広域関東圏建設関連協同組合(田中嗣人代表理事、広域組合)と茨城県鐵構工業協同組合(奥津典一理事長、鐵構組合)による外国人技能実習生受入事業がスタートした。従来の受入制度では、受け入れる日本企業と送り出す側との間に介在するものが多く、日本企業のニーズに合った実習生が確保できなかった。このため広域組合では、現地ベトナムでの育成から日本企業への派遣までを一貫して構築。これにより、企業にとって、低賃金でやる気ある働き手が確保できることになる。しかし、その背景には、低下する若者の仕事力に歯止めをかけたいとする事務局の願いと、そして、海外で苦戦するゼネコンが現地労働力を強化させたいとする思惑が混在していた。
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ベトナム人実習生5人は、第1期生としてことし8月8日に入国。以降、1カ月後の9月8日に研修を終え、鐵構組合を経由して各企業に配属された。これから2年10カ月の間、日本で実習して帰国するというスケジュールだ。
取り組みを始めたきっかけは、専門工事業への若年層の低い就職率と高い離職率にあるという。鉄鋼業を営む㈱ミヤマエ(龍ケ崎市)で、専務として働く田中代表理事は、これまで、実習生制度の状況を肌で感じてきた。
従来の実習生制度では、中国人を受け入れるケースが大半。1期生から2期生、3期生となるにつれ、質が低下していったという。田中氏は「実習生を送る側と受ける側の間に、さまざまな機関や手続きが介在していたため、エンドユーザーとの要望にミスマッチが生じていた」と問題点を指摘する。
「それならば、仕組み自体をわれわれで構築してしまおう」と考えた田中氏。組合を設立し、研修生の受け入れ母体となって、ベトナムの送り出し機関を買収。日本企業の要望がベトナム人実習生に届くよう、〝架け橋〟となる役割を買って出た。
とは言え、これを実際に行動に移すのは容易なことではない。「ここまで来るのに3年間もの月日を要した」と当時を振り返る。
以前、ベトナムで働いたことがある経験を頼りに、ホーチミン職業技術大学へ人材育成と技能教育ボランティアの主旨を説明。幾度かにわたる交渉の末、日本基準の高いレベルでの技能教育を、現地ベトナムの若者たち向けへ提供できることになった。
通常、海外からの技能実習生が日本で働ける期間は3年間。その決められた期間内に、日本に来てから基礎教育を行おうとすると、最低6カ月程度を要してしまう。それでは実質的に働ける期間が短い。
広域組合では、事前にベトナムで基礎教育を行うことで、日本へ入国してからすぐ働けるスキルをベトナムの若者たちに身に付けさせた。また、日本企業の要望にしっかりと応えられるよう、彼らには現地で日本溶接協会のJIS(日本工業規格)を取得させているという。
「これも一筋縄ではいかない作業だった」と田中氏。日本溶接協会へ依頼したところ、ベトナム語訳の学科試験が無いため試験できないと断られたという。それを交渉を重ねた結果、人材育成の観点から、これを了承。ベトナムでJISが取得できることになった。
このホーチミン職業技術大学「日本溶接コース」は、メディアにも取り上げられるなど地元でも評判で、ベトナムの期待の高さがうかがえる。
そして、この実習のベースを溶接工としていることについて、田中氏はこう語る。
「鉄鋼にとって溶接工は一番コストが高い。外注で1時間2000円とられてしまう。それが彼らは最賃法で690円で済む。そのコストパフォーマンスの高さから溶接工に絞っている」
ただ、溶接工だけできても、重いものを動かせなければ効率が悪い。そのため、彼らにはクレーンと玉かけの技術も習得させているという。日本クレーン協会と龍ヶ崎労働基準監督署に主旨を話し、中小企業の救済や育成の観点から、ベトナム人への講習が実現した。
この外国人技能実習生受入事業については、すでに大手建機メーカーやその関連会社などが、興味を示しているという。
【写真=ホーチミン職業技術大学】

















