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聞屋の目線/ベトナム人を受け入れる(3)/高度成長期の精神学べ

2011/11/02 日本工業経済新聞(茨城版)

 育成から派遣までの流れを一貫して構築し、企業にとって低賃金でやる気ある働き手を確保できるようにする「外国人技能実習生受入事業」。

 その狙いは、もちろん効率化や人件費もあるが、それより大切なのは「若手職員にモチベーションの高さを呼び起こさせる事」と、広域関東圏建設関連協同組合の田中嗣人代表理事は言う。

 「30万円もらっている職員に、50万円あげるといってもたいしてやる気は出ない。なぜなら30万円でも生活できるから。だが、彼らは月3万円あげると言えば、狂ったように働く。そのモチベーションの高さは日本人にも刺激になる」

 ベトナムの若者達は、1年間、日本に来たいという一心で、さまざまな試練を乗り越えて来ている。「そのガッツはすごい。彼らには日本の高度経済成長期のような勢いがある」と話す。

 現地ベトナムでの溶接試験。彼らは、「ここで落ちたら日本に行けない」という思いで泣きながら練習しているという。だが、そんな中でも悲壮感を漂わせることなく、明るく振る舞っているという。

 「あとで悪いことをしたと思ったが、面接で溶接協会の試験に落ちていたと嘘を付いてみた。そうしたら、ガッカリするかと思いきや、『もう一度チャンスを下さい、一からやり直しますから』」と、前のめりに答えたという。

 いまの日本の若者に、同じような言葉が出るだろうか―。日本人なら、ふてくされる人、諦める人もいるのではないか。

 だが彼らは違った。落ちていても「もう一回」と、再起の精神を持っている。「そういう姿勢を見ると、経営者も明るくなれる」と田中氏。

 茨城県鐵構工業協同組合の奥津典一理事長も「組合にとっても人材確保は関心事。若手の育成無くして会社は成り立たない」と田中氏らの取り組みにエールを送る。

 高度経済成長期に日本人が持っていた活気とやる気―。それはハングリー精神であり、その失われたものを持つ彼らの未来は明るいはずだ。日本の若者達が、彼らに学ぶことが出来るかに、日本の未来がかかっているのではないだろうか。 おわり


【写真=ベトナム人実習生】


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