上下水道マネジメント企業のウォーターエージェンシー(東京都新宿区)で社長を務める榊原秀明氏は、真言宗智山派「観喜院(かんぎいん)」(埼玉県川口市)住職という顔もあわせ持つ、異色の経営者。9月1日付で日本ヘルス工業から社名を変更した背景や、経営方針を聞いた。榊原社長は「改革はルーチンワーク」と考えており、社名変更もその一環と述べている。
―社名変更した背景は
榊原 はっきり申し上げて、わかりやすさ。業態を端的に言い表せる社名にした。エージェンシーというのは代理という意味がある。水環境というのは国、行政の責務において実施すべきことで、インフラの根幹。我々自身がそのことをやるのではなくて、国や自治体の責任において実施することの一部を代理するという意味がある。
―市場環境は、従来の請負から官民連携などへの変革期にあるが
榊原 飲み水にまつわる話は、人の生命に起因してくる。民間がそういう思いを抱き、シフトしていけるか。行政と民間の大きな違いを挙げると、行政は性善説で、民間は性悪説。行政は良き人の立場で安全を授かっている。そこを民間が間違えてはいけない。ビジネス、ビジネスとシュプレヒコールをして合唱するのを懸念している。民間の立場で、行政がやってきたことや気持ちを理解しなければいけない。それらをどこで共有できるかが、PPPの条件になるのではないか。PPPの大合唱になっているが、まだ官民が、お互いにけん制し合っている。民間のビジネスの大合唱に対して、少なくとも国内の官公庁は抵抗感がある。自分たちがここまでやってきたことを理解してほしいと思うだろうし、どういう思いで安全を担保してきたか。またPPP、PFI、コンセッションなどは、ことごとく輸入物。まだ日本向けに料理されていない。そこに無理がある。私たちも4、5年前から、日本向けの場合はこうあるべきといったことを分析、検証している。
―現在の経営課題は
榊原 今までは護送船団で、分配論。所属さえしていれば、すべての企業が黙っていても生きられた。それがここにきて、競争原理がはっきりしてきた。提案力の差によって変わってくる。私どもの会社の受託案件の4割が、提案型になってきている。毎年、加速しているので早晩、6、7割になってくるのではないか。民間同士であれば、その企業の経済環境に合わせて必要なものを提供していくのが、商売の本来のあり方。本当に必要なものを見極めて(自治体に)提案していく姿勢が必要。かつての、官が仕事をあげて、民が仕事をいただくという関係を変えていかなければならない。民間同士で普通にやっているように、自治体の状態を知りながら、それに合うように。あるいは財政に何らかの形で寄与できるような提案の仕方があるはず。従来はニーズの開拓が、官公需に関しては意味をなさなかった。今はそうではない。ニーズの把握という基本的なところを怠ってはいけない。
【略歴】
さかきばら ひであき。1950年11月20日生まれ。大正大学文学部卒。1977年日本ヘルス工業入社。取締役大阪支社長、取締役副社長などを経て、87年より現職。
【写真=「自治体のニーズ開拓が重要」と話す榊原秀明社長】