総合建設機械メーカーの日立建機㈱(東京都文京区、木川理二郎社長)は、大型・超大型油圧ショベルやダンプトラックといった鉱山(マイニング)向け建設機械の生産能力を大幅に引き上げるため、ひたちなか市内の2工場(常陸那珂臨港工場と常陸那珂工場)で、増築と新工場の建設をそれぞれ決めた。そのうち増築は、1月からゼネコン数社で着工。新工場は、常陸那珂臨港工場が5月から、常陸那珂工場が8月から着工予定だ。さらに、インドネシアやカナダの海外生産工場でも増産投資を実施する。総投資額は約470億円で、うち国内は400億円。
全世界的な需要拡大が鉱山向けの建設機械で見込まれているなか、日立建機では、大型・超大型油圧ショベルやダンプトラックといった鉱山向け建設機械の生産能力を大幅に引き上げることを決定。本体生産に加え、長時間の連続稼働を伴う鉱山機械におけるアフターサービス向けの部品供給も含め、能力を増強する体制を整える。
まず国内では、鉱山機械本体の生産を行う常陸那珂臨港工場内のひたちなか市長砂163-10に、工場を9950㎡で増築する。増築する工場は、大型・超大型油圧ショベルとマイニングダンプ用組立・塗装工場。そのほかトレーニングセンターを新設し、厚板溶接訓練、大物塗装訓練、超大型油圧ショベル油圧配管組立訓練などの鉱山機械製造に特化した教育を実施する。
それとともに、隣接の港湾用地7万8312㎡を県から取得し、新工場を建屋面積2万9297㎡で建設する。2月27日から開会した定例県議会に県有財産の売却処分案として提出されており、議会を経て3月末に取得予定。新工場では大型・超大型油圧ショベルや、マイニングダンプ用フレーム製作工場、厚生・事務所棟を建設予定。
また、同市の鉱山機械用コンポーネント(減速機などの基幹部品)を製造する常陸那珂工場のひたちなか市新光町552-48でも、同様に工場を2万9900㎡で増築する。増築する工場は、大型・超大型油圧ショベルとマイニングダンプ用部品の機械加工を行う予定。
さらに隣接する国有地(22万4335㎡)を取得し、今までにない新しい考えを取り入れた新工場を建屋面積3万7155㎡(下屋、事務所棟を含む)で建設するという。新工場は、大型・超大型油圧ショベルやマイニングダンプ用部品の組立・塗装工場とするほか、海外生産工場(インドネシア、カナダ)への部品供給物流機能を持たせる。
この新工場では、常陸那珂工場で生産した部品を搬入し、本体組立に適した一定のモジュール(ひとまとまりの機能を持つ構成部品)に組み付けする。部品をモジュール化して本体生産工場である常陸那珂臨港工場へ運ぶことで、同工場ではさらに効率の良い組立作業が可能になる。
また、このモジュールは海外生産工場へも輸出することを想定しており、新工場は新たな物流基地としての役割も担うことになる。
さらに、海外生産工場である日立建機インドネシアと、日立建機トラック(カナダ)においても増産投資を実施し、グローバルな生産合理化と生産能力増強を図っていく方針だ。
日立建機インドネシアでは、インドネシア・ブカシ県の既存工場であるチビトン工場を1万1118㎡で増築するほか、ブカシ県西チカラン地区に新工場(チビトン第2工場)を2万280㎡で建設する。この工場は、大型・超大型油圧ショベル用下部走行体部品製造工場(組立・塗装まで)と、大型・超大型油圧ショベル用フレーム・フロントアタッチメント部品製造工場(日本へ輸出)。
また、日立建機トラックでは、カナダ・オンタリオ州ゲルフ市の既存工場11万㎡に1万3294㎡を増築する。この工場では、積載質量190~300tクラスの鉱山用ダンプトラックを、北中南米向けに本体生産する。
生産規模は2013年度時を想定し、生産委託分も含め、大型油圧ショベル(本体質量120tクラス)が年間170台、超大型油圧ショベル(本体質量190~800tクラス)が年間240台、マイニングダンプ(積載質量190~300tクラス)が年間260台。
投資額は日本国内が400億円、海外が70億円で合計約470億円におよぶ。また、これらの計画で、2015年度までに約560人、18年度までにはさらに約100人の増員を計画している。
国内では、ことし1月から常陸那珂工場の増築工事を鹿島建設などのJVで着工しているほか、2月からは常陸那珂臨港工場の増築工事3棟を大成建設、大林組、清水建設でそれぞれ着工。3月には常陸那珂臨港工場の隣接地と常陸那珂工場の隣接国有地をそれぞれ取得予定。
その後、5月から常陸那珂臨港工場の隣接地で新工場の建設に着工し、8月からは常陸那珂工場の隣接国有地で新工場の建設に着工予定だ。
10月には常陸那珂臨港工場の増築が竣工し、続く11月にも常陸那珂工場の増築が竣工予定。来年3月には常陸那珂臨港工場の隣接地で新工場が工事完了し、部分稼働の予定。同6月には常陸那珂工場の隣接国有地で新工場が工事完了し、部分稼働する。その後10月には、常陸那珂工場、常陸那珂臨港工場の両工場で本格稼働を予定している。
一方、海外工場では日立建機インドネシアのチビトン第2工場が昨年12月から着工しており、ことし4月から日立建機トラック(カナダ)が増築工事に着工予定。9月には日立建機インドネシアのチビトン第2工場が工事完了し部分稼働、12月には日立建機トラックの増築が竣工予定。その後、来年4月には両工場が本格稼働する見通し。