国土交通省は、平成16年度以降のISO9001適用方針を決めた。一般競争では、認証を取得し、かつ優れた施工能力を有する場合、希望すれば試行と同様の品質管理の省力化を行うとしている。
同省では16年度以降、ISO9001適用方針を以下の要領で実施することを決めた。
【適用対象工事】
<1>全ての一般競争の工事<2>公募型・工事希望型の一部の工事(当面、公募型・工事希望型による発注総件数の1割以上)
【適用範囲】
次の全ての条件を満たす場合に適用される。
<1>当該工事を受注した企業がISO9001の認証を取得している=昨年度までと同様
<2>優れた施工能力を有している(例えば、過去2年間の工事成績評定の平均点が70点以上かつ過去5年間において品質不良等により、65点以下の工事成績評定を受けたことがないこと)=16年度から
<3>当該工事を受注した企業がISO適用工事を希望している=16年度から
【適用が認められた場合の措置】
<1>受発注者双方の負担が軽減できると考えられる「指定材料の確認」、「工事施工状況の確認(段階確)」、「工事施工の立会い」を請負者の自主的な品質管理活動を活用して実施する=昨年度までと同様
<2>ISOで要求する「品質計画書」と発注者が要求する「施工計画書」の中で、重複する箇所について相互に参照、引用する構成で作成可能である=昨年度までと同様
<3>検査時に提出する「品質管理」、「出来形管理」に関する書類について、必要項目が網羅されている場合に限り、発注者の承諾のうえ、指定様式によらず当該企業のISOの様式等を使用できる=昨年度までと同様
【内部監査の実施】
<1>請負者の内部監査の実施頻度(6か月以内に1度実施)=昨年度までと同様
<2>「発注者による品質システムの確認」は、内部監査について発注者が不適合の有無、是正処置の実施状況を確認し、個別工事における品質システムの健全性を確認することが必要=昨年度までと同様
【重点監督対象工事(工種)の取り扱い】
工事の適切・確実な履行を確保する観点から、原則として監督業務の省力化を行わず従来どおりの監督体制とする。
なお、重点対象工事とは<1>主な工種に新工法・新材料を採用した工事<2>施工条件が厳しい工事<3>第三者に影響のある工事<4>低入札価格調査制度等調査工事等を指している。
【次年度以降の運用方針】
ISO9001の適用により、監督業務の省力化を図った工事については、その工事成績について毎年度モニタリングし、その分析結果を踏まえ次年度の運用方針を決定していく。
【W評点の加速で議論、認証取得に加速も】
日本適合性認定協会(JAB)によると、ISO9001認証取得者数は16年5月1日現在で3万6734組織あり、うち3割が建設企業であるといわれる。既に東日本23都県のうち16都県において、入札参加資格審査の主観点数で加点しているうえ、国交省も経審W評点に加点することを業界団体と議論しており、引き続き多くの中堅中小建設企業が、ISO9001及び14001の認証取得に乗り出すものと考えられる。
また、JAB認定の審査登録機関も12年度36機関から50機関へと大幅に増加している。こうした中で、ISO本来の目的である企業の意識改革ではなく、取得が目的化してしまい、短期間で安易に取得させるコンサルタントを選択する動きもみられる。
今後、意識改革の達成や、企業経営に役立てる姿勢を建設企業・コンサルタント両者が持ち、ISOを活用していくことが望ましいと考えられる。
【品質面に負の影響なし・試行工事308件を検証】
平成6年9月に「ISO9001による公共工事の品質保証に関する調査委員会」を設置し、続いて設置した「公共工事の品質に関する委員会」の最終報告(8年1月)において、「公共工事の分野においても、品質管理・品質保証の国際規格であるISO9000sの重要性が高まっている」と標記されて以降、公共工事等にISO9000sを適用する場合の効果、課題等を検討するため、8年度からパイロット事業を、12年度からは一歩進めて一定の範囲の建設工事等において、ISO9000s認証取得を参加資格とするISO適用工事等を試行してきた。8年度からのパイロット事業では約50件、12年度から14年度までの試行工事については、一般競争では工事発注の約23%にあたる132件、公募型で148件、工事希望型で28件が実施された。
試行結果を検証したところ、<1>監督業務を効率化しても品質面での負の影響が認められない<2>監督業務の効率化に効果がある(立会いによる段階確認の監督業務を受注者の検査記録の確認に置き換えたことで、監督業務が効率化)ことが確認された。