首都直下地震や東海・東南海・南海の3連動地震の発生が懸念されている中、地方自治体や自衛隊などとの横断的な調整を担うポストとして2012年度に新設された関東地方整備局の総括防災調整官。就任から2カ月となる大沼克弘氏に、防災対策の取り組み状況などを聞いた。
―総括防災調整官の役割について。
大沼 地方自治体や自衛隊、警察といった防災関係機関と連絡調整を行いながら、災害対応全般を担当する。例えば関係機関との情報共有の促進や、施策の連携調整。ほかの地方整備局との調整のほか、関東整備局内の組織横断的な調整も行う。例えばほかの整備局に対するTEC―FORCE(テックフォース)の派遣、要請、受け入れに関する調整や、リエゾン(情報連絡員)の活動状況把握、災害時における緊急復旧の優先度に応じた要員配置の調整も行う。東日本大震災の被害は道路、河川、港湾など多岐にわたり、広域的な災害だった。非常時においては、幅広く情報収集して状況を把握し、全体を俯瞰して対策の優先順位を検討し、要員配置を横断的に調整することが必要。また東日本大震災では被災した自治体の機能が大幅に低下してしまう状況もあった。こうした状況で初動に大きな支障が出た。大規模な災害が起きた時に国の機関が果たす役割の重要性が浮き彫りになったのではないか。
―現在までの取り組みについて。
大沼 一つは関東防災連絡会。首都直下地震をはじめとする広域かつ大規模な災害が発生した時には、防災関係機関による連携した災害対応が効率的に推進できるように、行政機関、公共機関の災害対策に関する情報共有、施策の連携調整を行うことなどを目的として、昨年10月に発足している。その後、災害情報交換のマニュアルを作成した。3月には各機関の担当者による情報共有、連絡体制構築のための訓練を行った。現在は訓練結果を踏まえたマニュアル改訂作業を行っている。またこのほか、首都直下地震を想定したテックフォース、リエゾンの活動計画策定に取り組んでいる。首都直下地震が発生した時は広域的な応援体制の構築が必要なので、テックフォース、リエゾンが応急対策活動を迅速かつ的確に実施できるよう、各地方整備局から派遣の人員、資機材の量、活動拠点をどうするかといった具体的な内容を定める活動計画を、本省やほかの整備局と調整しながら作成中。
―今後の展望について。 大沼 防災については国交省だけでなく、色々な機関が携わっている。特に中央防災会議に設置された首都直下地震対策のワーキンググループが4月25日に第1回会合を開いており、当面実施すべき対策のとりまとめが夏ごろに、対策の全体像のとりまとめが来春ごろに予定されている。こうしたほかの機関の動きと連動させて取り組みを進めていく必要がある。例えばテックフォースやリエゾンの活動計画策定も、今後、新たな地震被害の想定が出てきたら適宜、見直していく必要がある。関東防災連絡会については、災害情報の共有化や復旧活動支援の連携も進めていく。直近では、情報共有連絡体制構築の訓練をマニュアル改訂も踏まえて、またやりたい。このほか本年度は、各機関の防災訓練への相互参加もできれば良いと考えている。
―建設会社などとの災害協定重複問題について。
大沼 どの企業がどうバッティングしているのか、まずは実態を把握しなければならないと考えている。東京都との重複から調べ始めたところ。それを踏まえてどういう形で重複をなくしていくか、優先度も踏まえて考えていかなければならない。
【略歴】
おおぬま・かつひろ
1966年山形市生まれ、46歳。東京大学大学院工学系研究科修了。92年建設省採用(Ⅰ種・土木)。本省河川局砂防部保全課海岸室課長補佐、国土技術政策総合研究所環境研究部河川環境研究室主任研究官などを経て、4月から現職。
【写真=大規模災害発生時の横断的な調整の重要性について話す大沼克弘 総括防災調整官】