県土木部河川課は24日、茨城沿岸津波対策検討委員会(委員長・三村信男茨城大学教授)の最終会合(第4回)での検討結果を踏まえ、護岸・堤防などの堤防整備検討の目安となる「目指すべき堤防高」を公表した。16の地域海岸に区分して示した堤防高は、最も高いところ(鹿嶋市平井~神栖市日川)で8mを設定。今後は、各管理者(河川、海岸、港湾、漁港、保安林など)が、目指すべき堤防高を踏まえ整備計画を策定し順次整備を行っていく。また、ソフト対策の基礎資料となる「津波浸水想定図」も公表した。公表資料は河川課のホームページにアップされている。
同委員会は、昨年3月の大震災を踏まえ、津波対策を行うため昨年12月に専門委員6人で発足。比較的頻度の高い津波(L1津波)に対応するため、堤防整備などの目安となる「目指すべき堤防高」を検討。また、最大クラスの津波(L2津波)に対しソフト対策を講じるための基礎資料となる「津波浸水想定図」を検討し、合計4回の会合で結論を出した。
会合後の会見で澤畠守夫県土木部河川課長は、これまでの経緯を説明しながら、「きょうの結論でリスクを明らかにした。今後は県と市町村が連携して住民の理解を得ながら、堤防の整備など防災施設の整備を進めていきたい」とあいさつ。続いて、三村委員長が詳しい検討結果の内容を語った。
堤防整備検討の目安となる「目指すべき堤防高」は、1703年に発生した元禄地震津波や1960年チリ地震津波をL1津波と設定し、茨城沿岸全域で津波浸水シミュレーションを実施。地域海岸ごとに最大となる津波のせり上がり高と、高潮波浪による波のうちあげ高を整理し、いずれかの高い方に余裕高を加え、目指すべき堤防高とした。
これを16の地域海岸ごとに提示。地域海岸15(鹿嶋市平井~神栖市日川)が最も高い堤防高で8m。続いて北茨城市や高萩市を中心に7m。そのほか6・5m、6m、5mと設定している。
今後は、河川や海岸、港湾、漁港、保安林などの各管理者が、目指すべき堤防高を踏まえ、地域の特性や景観、利便性などを総合的に勘案し、地元市町村などと協議のうえ整備計画を策定する。そして、防護ラインの位置と堤防高を設定して順次整備を行っていく方針だ。
また、整備に至る細かな判断基準としては、環境保全、周辺景観との調査、地域の特性、既設防護施設、住民の意向、経済性、維持管理の容易性、施工性、公衆の利用などを挙げている。
一方、ソフト対策の基準となる「津波浸水想定図」は、最大クラスの津波が悪条件下で発生した場合を想定。水戸市を含む沿岸10市町村の浸水面積を割り出し、多いところで神栖市が20・4k㎡、鹿嶋市が9・1k㎡、日立市が7・9k㎡、北茨城市が6・1k㎡などと示した。
また地域沿岸を16に区分し、地域沿岸ごとの津波水位や最大遡上高、影響開始時間を想定。そのうち地域海岸2(北茨城市大津町~同市関南町神岡上)では高い数値を示し、津波水位が5・4~14・8m、最大遡上高が16m、影響開始時間が25分とした。
そして全体図では、浸水域と浸水深を現在の科学的見地をもとに設定して割り出し、浸水深を青で着色して分かりやすく示している。
この「津波浸水想定図」で、市町村が津波ハザードマップを作成するにあたっての技術支援や、市町村の地域防災計画の改定に対する助言などを行っていく。
【図=目指すべき堤防高】