環境省は、各県へ設置を検討している指定廃棄物の最終処分場のうち、県内の候補地を高萩市の上君田字堅石国有林野に決めた。27日、横光克彦環境副大臣が橋本昌知事のもとを訪れ候補地の提示と協力を依頼したほか、高萩市で草間吉夫市長へ説明。橋本知事は地元への懇切丁寧な対応を求め、草間市長は断固反対の姿勢を示した。環境省では今後、高萩市に対して詳細を説明し、その上で住民へ説明する場を設けたいとしている。地元同意が大前提だが、早ければ10月ごろから設計、環境影響調査、測量などに着手し、来年度8月ごろ造成、2014年1月ごろ本体着工を見込む。
本県では現在、放射性セシウム濃度が1㎏当たり8000ベクレルを超える指定廃棄物を11市町村が保管。環境省では今後3年程度をめどに最終処分場を確保する方針を示しており、県からの資料をもとに県内全域を対象に選定作業を進めていた。
県庁を訪れた横光副大臣は、最終処分場が決まるまでの経緯、必要性、安全性をあらためて橋本知事に報告。知事は「選定された以上、高萩市と周辺住民に本当に安全だということを丁寧に説明してほしい」と求めた。
候補地の選定に際しては、まず施設を置くのに好ましくない場所を外す消去法を用いて、国有林や必要な面積の確保、地形や地質、社会条件、自然条件を確認して点数付け。北茨城市や高萩市、日立市、常陸太田市、笠間市の5エリア13カ所の候補地を選んだ。そこから現地確認を行って北茨城市と高萩市の2カ所に絞り込んだ。
そのうち北茨城市の候補地は、県立公園や湿地性動植物が多く生息する亀谷地湿原が立地していたことから好ましくないと判断。一方で高萩市は、場所も広さも確保できる地形で、地質、地下水系も良好で、人家からも離れていることなどを勘案。最終的に高萩市が適地だと判断した。
知事への説明後、横光副大臣は「高萩市には精神的に負担をかける施設。そのため、市と地域住民の理解が必要。これからそういう場をいただきながら、必要性、安全性をしっかりと説明させていただきたい」と語った。
また環境省が工程表で示した施設の設置期限について、副大臣は「努力を続けながら14年度末に向けて進めてまいりたい」との考えを示した。
そのほか、原発立地交付金と同じような枠組みの創設について「現在は考えてないが、それぞれの地域で話が進む中で課題、要求が出てくれば協議したい」と述べた。
続いて横光副大臣は高萩市を訪れ、草間市長と面談した。副大臣の説明を聞き終えると、草間市長は「寝耳に水。断固反対する」と強い口調で反対の意志を告げ、国の選定方法、伝達方法に触れ「あまりにも突然で、プロセスに憤り、不信感を感じる」とした。
これに対し、副大臣は「県内各所に指定廃棄物があっていいのかとの考えから、国としては場所を決め、すべてを集約することが必要であると考え、今回の選定に至った。周辺地域の皆さまへの説明の場所を与えていただきたい」と話した。
環境省では今後、高萩市に対して詳細を説明したい意向で、その上で住民へ説明する場を設けたいとしている。
また候補地が常陸太田市に隣接することから、環境省では必要があれば説明する考え。
最終処分場は、1㎏当たり8000~10万ベクレル以下の指定廃棄物のみならず、それ以上のものを処分する可能性があるため、両方の指定廃棄物が処分できる遮断型構造とする。この構造は、青森県六ヶ所村の低レベル放射性廃棄物処分場のピット式処分場などを参考とする。
設備配置に必要な面積は、当初計画より若干拡大する約1・1ha~1・5ha。埋立地には移動式屋根を設置し、その下で容器に入れた廃棄物を埋め立てた後、土やコンクリートで幾度も覆い、屋根を別の埋立区画に移動する。その後、空間線量などのモニタリングを継続する。
地元の同意が大前提だが、工程表によれば、設計、環境影響調査、住民への説明、測量などを10月ごろから進めたい考え。
その上で来年度早々にも用地を取得し、来年8月ごろから造成、その翌年である14年1月ごろから本体着工の予定。
候補地の選定は栃木県矢板市に次いで2カ所目。群馬では県が市町村と話を進めていたがまとまらないため国の責任で選定調査を開始。宮城では国交省が深層崩壊調査を進めているほか、千葉では県の考えもあることから9月中の提示は難しい状況だ。
そのほか福島県では、「双葉地方町村、福島県と国との協議会」が、1㎏当たり10万ベクレル以下を富岡町の民間管理型処分場(㈱フクシマエコテック社)で処分する案を提示している。
【写真=高萩市で説明する横光副大臣(手前側)。草間市長(奥川左から2人目)は断固反対の考えを示した】